選手たちが気持ちを一つにするための儀式である「円陣」をコンセプトに開発されたのが、サッカー日本代表が2014FIFAワールドカップブラジル大会で着用するユニフォームである。キャッチコピーは<すべてをかける時が来た。円陣を組め、すべてをかけろ。>。adidasが「円陣」に込めたメッセージとは――。

(写真提供:adidas)
 結束の一本線で“ひとつ”に

 ホーム、アウェイ用のユニフォームに共通して、ひと際目を引くのが、背面に施された蛍光レッドの“結束の一本線”だ。これは、選手、サポーター、日本全体がひとつに「結束」することを表現している。前ユニフォームでは前面中央にあったが、新ユニフォームでは背面上部にデザインされた。選手が「円陣」を組んだ時に、上からはひとつの大きな輪のように見える。開発者である石津大介(アディダスジャパン ビジネスユニット カテゴリーマーケティングシニアマネージャー)さんの説明に耳を傾けよう。

 ホーム、アウェイ用のユニフォームに共通して、ひと際目を引くのが、背面に施された蛍光レッドの“結束の一本線”だ。これは、選手、サポーター、日本全体がひとつに「結束」することを表現している。前ユニフォームでは前面中央にあったが、新ユニフォームでは背面上部にデザインされた。選手が「円陣」を組んだ時に、上からはひとつの大きな輪のように見える。開発者である石津大介(アディダスジャパン フットボールビジネスユニット カテゴリーマーケティングシニアマネージャー)さんの説明に耳を傾けよう。
「今、サッカー日本代表のファン・サポーターは、増加傾向にあります。中には、実際にサッカーをやったことがない人もいるでしょう。ですから、サッカー経験者だけにとどまらず、日本人全体に響くようなコンセプトにしようと、日本サッカー協会と一緒に考えました。その意味で、『円陣』はサッカーのみならず、様々な状況・場所で行われており、結束することを意味していることは誰でもわかります。そこで、サッカー日本代表が『円陣』を組んだ時に、結束の一本線がひとつの輪になるデザインにしようと。これを見た多くの人々にも肩を組んでサッカー日本代表を応援してもらいたい、というのが我々の願いです」
(写真提供:adidas)

 選手にとって、「円陣」は試合に臨む上で重要なルーティーンでもある。サッカー日本代表の内田篤人は語っている。「『円陣』を組みながら、チームメイトの顔を見て、自分のモチベーションを上げ、自分の力を高めていく。大事な試合になるほど『円陣』を組んで試合に挑むことが大事になる」。清武弘嗣の場合はこうだ。「僕にとって『円陣』は、試合前にいちばん大切なことを伝え、お互いのモチベーションを最高潮にもっていくための大切な儀式」

 新ユニフォームには、ディティールの部分にもadidasのこだわりが詰まっている。結束の一本線は毛筆で描かれ、世界の舞台で日本文化を発信するという狙いがある。左胸のエンブレムを中心にして広がる 11本のラインは、円陣を組んだ後に選手が各ポジションに広がる様子を表現。ストッキングには円陣を表した 11本のラインが描かれている。また、 2010年モデルから引き続き左胸に施された日の丸には、選手が実際に着用した歴代ユニフォームの生地を細かく砕いて新たに紡いだ糸が使用されている。

  続いてアウェイ用のユニフォーム。これまでのワールドカップで、サッカー日本代表が着用したアウェイ用は白を基調としていた。ところが今回、サッカー日本代表では史上初めてボディカラーに蛍光イエローが採用されたのだ。石津シニアマネージャーにその理由を聞いた。
「ひとつは、ブラジルの現地の方々に少しでも日本を応援してもらいたいということ。また、これまでのユニフォーム製作で選手からは『スタジアムで目立つようなものがいい』というリクエストが多かったんです。それを受けて、ホーム用のラインで使用されている蛍光レッドと同様に、アウェイ用では全体的に蛍光イエローを採用しました。とにかくシンプルに考えていきました」
(写真提供:adidas)

 adidasの経験と技術を凝縮

 進化しているのはデザイン面だけでない。機能面もブラッシュアップした。石津シニアマネージャーによると、多くの選手がユニフォームでこだわるのは軽さと吸汗速乾性だという。今回の新ユニフォームは、こうした選手の要望に最大限応える仕上がりとなった。

 まず軽さにおいて新ユニフォームでは adidasの新テクノロジー「adizero la・ito」が採用されたポリエステル素材を使用。これは軽量化された糸で生成されている。エンブレムもワッペンではなく、プリント加工にするなどして、重量はadidas史上最軽量の90グラムに抑えた(サイズLの場合、これまでの最軽量は 2010年モデルの96グラム)。
「現代はスピードサッカー全盛ですから、我々はユニフォームを開発する上で、シンプルにとにかく軽いものをつくろうと考えたんです」と石津シニアマネージャーは語っていた。

 実際、新ユニフォームを着用した香川真司からは「着用した感じが体にフィットするので、よりシャープなプレーができる」と高い評価を得た。内田に至っては「これまでのユニフォームも軽かったけれど、新しいユニフォームは一層軽くなっていて、着ている感じがしないくらい」と驚いた表情をのぞかせたという。

 吸汗速乾性では「climacool」(クライマクール)というテクノロジーが、選手たちをサポートする。脇・背面・袖口など、発汗量の多い部分にメッシュ素材を使うことで、優れた吸汗速乾性を実現した。クライマクールで衣服内環境をコントロールし、快適さを維持するのだ。サッカー日本代表がグループリーグを戦う会場(レシフェ、ナタール、クイアバ)は、いずれも暑さが懸念されている。6月の平均最高気温はレシフェとナタールが 30℃、クイアバは31℃。またレシフェとナタールは6月が最も降水量が多い。過酷な環境でプレーを余儀なくされる選手にとってクライマクールは強い見方となるだろう。

 また、ユニフォームのかたちも選手の体に沿うようタイトフィット化させた。世界のサッカーシーンにおいて、反則覚悟でユニフォームを引っ張りあう攻防は日常茶飯事だ。スピードを生かそうとする日本の選手たちにとって、ユニフォームのタイトフィット化は歓迎すべきものだろう。

 こうしたさまざまな工夫が凝らされた新ユニフォームにはadidasの経験と技術が凝縮している。石津シニアマネージャーは「何百回ものテストを繰り返し、選手のパフォーマンスを最大限まで引き出せるユニフォームを用意できた」と胸を張る。
「ユニフォームには日本サッカー協会、アディダスドイツ本社、アディダスジャパンとたくさんの人間が関わっています。我々の思いは選手のパフォーマンスを極限まで高めていくためのサポートをしていくことでもあります」

 新ユニフォーム発表にあたり、アルベルト・ザッケローニ監督はこんなメッセージを寄せた。
「日本のみなさん、ぜひ大きな『円陣』を組んでください。サポーターの皆さんにも『円陣』に加わっていただき、私たちが掲げる目標を共有していただければと思います」
 日本が一つになる「円陣」。ブラジルで上位進出を狙う日本代表にとって、それは最大のエンジンでもある。

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(写真・鈴木友多)
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