本当にうれしく、自信になる優勝です。
 昨季の後期、今季の前期に続き、徳島は3期連続優勝を達成することができました。昨季、年間王者になった時と比較して、開幕前は投手陣が非常に心配があっただけに、この結果は予想以上。選手たちの頑張りを素直に称えたいと思います。
 とはいえ、前期を制した時点では、まだまだ投手力に不安がありました。そこで後期のテーマとしたのが、チーム力の底上げ。前期はあまり出番のなかった選手を起用しながら、競争意識をあおり、切磋琢磨させようと試みました。その過程で、先発だった入野貴大はリリーフに再び回ってもらったり、新人の山本雅士が抑えを務めたりと、ピッチャーの役割分担は流動的になりました。

 入野や山本には調整が難しく、酷なことをさせてしまいましたが、崩れることなく仕事をしてくれて本当に感謝しています。上のレベルに行けば、先発だろうと中継ぎだろうと与えられた持ち場で結果を出さなくては生き残れません。その意味では、今後への足がかりとなる経験が積めたのではないでしょうか。

 こうして夏場にいろんなピッチャーを試したことが、最終的にはラストの8日間で9試合をこなすハードスケジュールを勝ち切る原動力になったと感じています。連戦でやりくりは大変でしたが、優勝を争う愛媛との最終2連戦(12日、13日)に連勝。マジック1が点灯し、前後期制覇へ大きく前進しました。

 特に13日の試合では、河本ロバートが5回に危険球で退場するアクシデントがありながら、緊急登板の山藤桂が8回まで無失点。相手の反撃を許しませんでした。初戦(12日)では入野が中1日ながら7回2失点とゲームをつくり、チームに流れを呼び込んだことも大きかったですね。

 経験の浅い投手陣を引っ張る上で、小野知久の成長も3期連続優勝には欠かせませんでした。「強いチームにはいいキャッチャーがいる」と言われるように、この1年で小野は文字どおり、チームの扇の要となりつつあります。まだまだリード面では課題はありますが、特に後期はインコースの効果的な使い方が分かってきたように思います。

 僕は現役時代、ストレートとスライダーが軸のスタイルでしたから、インコースをいかにうまく使うかが生命線でした。カウントや点差、バッターの特徴を踏まえ、いかにインサイドを意識させるか。それによってスライダーを振らせたり、ストレートを詰まらせたりして、プロの世界で成績を収めてきました。

 それだけに前期の小野はアウトコース中心の配球が目立ち、バッターに嫌がられるリードではありませんでした。
「もっと状況に応じてインコースを使え!」
 本人に強く注意したこともあります。その指摘を踏まえて、彼も自分なりに考えたのでしょう。

 キャッチャーは守りにおける監督と言われるように、まず重要なのは守備です。小野にも「バッティングは二の次でいい」と常々、話をしてきました。本人はバッティングが好きで、打撃とリードの好不調が一致してしまうところがあります。その波がなくなり、安定したリードができるようになれば、NPBスカウトの評価もより高まるはずです。

 他の野手陣も9月からは中軸を担った打率トップ(.340)の大谷真徳、同4位の吉村旬平はもちろん、鷲谷綾平三ヶ島圭祐といった1、2年目の選手が脇を固め、自分のできることを確実に実践してくれました。とりわけ前期は12試合しか出場機会がなかった宮下直季がサードのポジションでチャンスをつかみ、チームに刺激を与えましたね。彼はムードメーカーで、出塁するとベンチの雰囲気を変えてくれる貴重な存在です。

 このように半年間、80試合の公式戦を戦う中で、投打のバランスがかみあい、いいチームができあがったことは、とてもうれしいです。ただし、ホンモノの勝負はここから。我々の目標は、あくまでも独立リーグ日本一です。前後期制覇をしたからこそ、20日からのリーグチャンピオンシップで負けるわけにはいきません。

 相手の愛媛は後期、対戦成績では8勝3敗1分と大きく勝ち越しましたが、シーズン途中で元NPB左腕の正田樹、抑えのホセ・バレンティンが加わり、投手力は徳島より上でしょう。短期決戦は投手力がレギュラーシーズン以上にモノをいいますから、全く油断はできません。初戦から正田を軸に力のあるピッチャーをつぎこんでくるはずです。

 徳島にとっての好材料は、前後期制覇で1勝のアドバンテージがあること。そして、ホームで第1戦、第2戦を迎えられることです。相手がどう出てきても、こちらが落ち着いて自分たちの野球をすれば、そうは負けない自信をチーム全員が持っています。

 長いシーズンとは異なり、5戦制のシリーズではメンタル面のタフさも問われます。気持ちで引いてしまっては、一気に流れは相手に傾きます。つまらないミスをしないことは当然として、たとえ失敗をしても、それ以上、傷口を広げないような気持ちの切り替えも大切です。そして、できれば、こちらが常に先手を取り、相手の焦りを誘うような展開に持ち込めればと考えています。

 シーズン終了から、リーグチャンピオンシップまでの中4日というインターバルも、疲労をとり、コンディションを万全に整えるにはちょうどいい時間だと前向きにとらえています。2年連続の年間チャンピオン、そしてBCリーグ王者を3度目の正直で破っての日本一へ――。熱い戦いを1試合でも多く皆さんにはお届けするつもりです。20日からのチャンピオンシップではたくさんの応援をよろしくお願いします。


島田直也(しまだ・なおや)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
1970年3月17日、千葉県出身。常総学院時代には甲子園に春夏連続出場を果たし、夏は準優勝に輝いた。1988年、ドラフト外で日本ハムに入団。92年に大洋に移籍し、プロ初勝利を挙げる。94年には50試合に登板してチーム最多の9勝をあげると、翌年には初の2ケタ勝利をマーク。97年には最優秀中継ぎ投手を受賞し、98年は横浜の38年ぶりの日本一に貢献した。01年にはヤクルトに移籍し、2度目の日本一を経験。03年に近鉄に移籍し、その年限りで現役を引退した。日本ハムの打撃投手を経て、07年よりBCリーグ・信濃の投手コーチに。11年から徳島の投手コーチを経て、12年より監督に就任。
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