第212回「空間」 〜NACK5スタジアム大宮の環境〜
9月10日(水)、天皇杯4回戦を戦う愛媛FCの応援のため、埼玉県さいたま市にあるNACK5スタジアム大宮を訪れた。JR大宮駅から徒歩で約20分、東武野田線・大宮公園駅から徒歩で約10分と、好立地に恵まれる大宮アルディージャ(J1)の本拠地である。
(写真:素晴らしい空間を創り出すNACK5スタジアム大宮)
JR大宮駅(東口)を出てスタジアムを目指すのならば、アルディージャのペナントやフラッグが両サイドに飾り付けられた一の宮通り商店街(通称オレンジロード)を抜けて、氷川神社の参道へと向かうのがベストだ。途中、アルディージャのクラブショップ(オレンジスクウェア)を横手に見ながら長い参道を通り、10分ほど歩けば、スタジアムのある大宮公園へと到着する。
試合当日は、都心や近県での大雨被害が報じられ、大宮でも荒天が心配された。だが、幸いにも会場上空は雨雲が低くかすめるだけで、降雨はほとんど感じられない程度だった。
キックオフ3時間前になり、横断幕設置の準備に取り掛かる。横断幕を抱え、入場ゲートをくぐり、階段を昇りきると、極めてピッチに近いスタンドが目の前に現れた。ゴール裏スタンド最前列まで歩を進め、手を伸ばせばゴールネットに届きそうだ。
整備の行き届いた芝生は、葉の向きが目視できるほど近くに感じられる。程良い傾斜のスタンドは、最上段からの見晴らしも最高。初めてスタジアムを訪れた者にとっては、まさに感動的な光景だった。
これを目にした愛媛サポーターは口々に「素晴らしいスタジアムだ!」「選手たちに触れそう!」「羨ましいなぁ。このまま、(スタジアムを)松山に持って帰りたい!」などなど感嘆の言葉を発していた。サッカー専用スタジアムへの憧れが強い私たちにとって、本当に羨ましく理想的な環境に感じられたのだ。
約10,000人分の固定席に、プラス5000人分の立ち見席を備えるNACK5スタジアム大宮。巨大スタジアムではなく、豪華な設備が整っている訳ではないが、コンパクトにうまくまとまっていて、全ての観客がライブ感を存分に味わえる空間のように思える。中心街に近く(かつ立地が良く)、施設としての環境も素晴らしいサッカー専用スタジアム。多くの愛媛サポーターが望んでいたものが、ここにはある。
実際に試合が始まると、さらに驚きと感動は増していった。ゴールキーパーの指示やフィールドプレイヤーの息遣い、身体がぶつかり合う音までもが、スタンドに陣取る我々へとリアルに伝わってくるのだ。コールリーダーとして応援へと集中するうち、いつしかサポーター同士だけでなく、ピッチ上の選手たちとの一体感までも強く感じられるようになっていた。
それは、選手たちの闘いをコアとして、皆が心底、熱中できるような非日常的な空間を、このスタジアムの構造がうまく作用し、創り出しているからではないかと思われるのだ。この感覚を一度味わうと、病みつきになる人も少なくはないだろう。
愛媛FCが目指す、ホームゲームでのリピーター率向上のためのヒントが、このスタジアムには隠されているようにも感じる。近年、サッカーへの世間的な理解度が高まり、またクラブライセンス制度も引き金となって京都スタジアムや吹田市立スタジアムの建設、広島のサッカースタジアム構想や北九州の球技専用スタジアム計画が進んでいる。その他にも清水や山形、富山や徳島でもサッカー・球技専用スタジアム建設に向けて、各地域が動き始めている。
私たちの愛媛は、将来におけるサッカー環境整備の主軸となる「スタジアム建設」を考えなくても良いのだろうか?
2017年の愛媛国体開催に向けた県運動公園内の改修工事が進む中、ニンジニアスタジアムでも電光掲示板や巨大なバックスタンドなどが整備されており、一時的な環境面の向上に対し、ありがたがる方もいるだろう。
しかし、立地を含め、クラブやサポーターが求める根本的な改善には至っていないことを思い出してほしい。今の状況に満足していて本当に良いものか、もう一度、考え直していただきたいのである。
<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>1967年5月14日、愛媛県松山市出身。
愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。