第277回 “運命のチーム”はどこか 〜2014年MLBプレーオフ大予想〜

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 2014年のMLBも大詰めに差しかかり、今週から全米各地でプレーオフが始まっている。ヤンキース、レッドソックス、ブレーブスという伝統チームが揃って出場しないポストシーズンは1989年以来。本命不在の大混戦模様だ。
 9月30日に行なわれたアメリカン・リーグのワイルドカードゲームではロイヤルズとアスレチックスが延長12回にもつれ込む死闘を演じ(ロイヤルズがサヨナラ勝ち)、いきなり全米のベースボールファンを堪能させた。今後もこのような大接戦が続きそうな中、覇権に最も近い位置にいるのはどのチームか。今回は世界一の本命、対抗馬、穴を選び、その行方を占ってみた。
(写真:2年目の今季はパワーダウンしたドジャースのプイグだが、依然として怖い打者であることに変わりない)
本命 ワシントン・ナショナルズ(ナ・リーグ東地区優勝、96勝66敗)

 現時点で勝ち残った8強の中で、最もバランスの良いロースターを誇っているのはナショナルズだろう。
 今季のチーム防御率、先発投手の防御率ではメジャー1位、ブルペンの防御率ではメジャー2位。オフェンス面でも得点、本塁打数、出塁率、盗塁成功率はすべてリーグ4位以内と、攻守ともにスキは見られない。シーズン後半の90戦ではナ・リーグ最高の59勝31敗と、秋に向けて測ったように調子を上げてきた。

 ロースターをより詳細に見ても、投手陣ではエースのスティーブン・ストラスバーグ(14勝11敗、防御率3.14)が今季最後の3先発機会で20イニング無失点、2番手のジョーダン・ジマーマン(14勝5敗、2.66)はシーズン最終戦でノーヒッターを達成と、ここに来て2枚看板が絶好調。3番手以降もダグ・フィスター(16勝6敗、2.41)、ジオ・ゴンザレス(10勝10敗、3.57)と実績ある投手が続き、15勝(10敗、2.85)を挙げたタナー・ロアークでさえも先発機会がないほどにローテーションの層は厚い。
(写真:2012年最多勝のジオ・ゴンザレスが4番手になるほど先発投手陣は充実している)

 打線では24歳のアンソニー・レンドン(打率.287、21本塁打、17盗塁)がチーム内MVP。さらにジェイソン・ワース(.292、16本塁打)、アダム・ラローシェ(26本塁打、92打点)、イアン・デズモンド(24本塁打、91打点、24盗塁)、ブライス・ハーパー(.273、13本塁打)、デナード・スパン(打率.302、31盗塁)といったタイプの違う好打者がずらりと揃う。

 ほぼ同様の主力メンバーでここ数年戦い続けているがゆえ、すでに完成されたチームであり、多彩な形で勝利を掴むことができる。このナショナルズと5〜7度も続けて対戦し、勝ち越すのはどのチームにとっても並大抵ではない。

 唯一不安があるとすれば、不調のラファエル・ソリアーノ(32セーブ、セーブ機会失敗7度)に代わり、ドリュー・ストーレンがクローザー役を引き継いだことだろう。ストーレンは防御率1.12、シーズン終盤は23試合連続で自責点ゼロと、昨季の上原浩治(レッドソックス)を彷彿とさせる快進撃を続けてきた。

 しかし、2012年の地区シリーズ第5戦の9回表、カージナルスに4点を奪われて大逆転負けを喫した痛恨の思い出はまだ鮮明。首都の球団が90年ぶりの栄冠に辿り着くために、27歳のクローザーが悪夢の記憶を振り払い、終盤の切り札として確立できるかがポイントのひとつとなるはずだ。

対抗 ロスアンジェルス・ドジャース(ナ・リーグ西地区優勝、94勝68敗)

 クレイトン・カーショー(21勝3敗、1.77)、ザック・グレインキー(17勝8敗、2.71)の2人が先発したゲームでは、勝率7割以上(42勝11敗)。この2枚看板が健在な限り、どんなチームが相手でも勝利のチャンスがある。特に26歳にして過去の名投手たちと比較されるようになった現役最強左腕、カーショーの存在は脅威で、プレーオフでも歴史的なパフォーマンスを見せても誰も驚きはしないだろう。

 ペイロールに2億3000万ドルが費やされて構成されたロースターなのだから、もちろん2大エースだけが目立つというわけでもない。先発3番手のリュ・ヒュンジン(14勝7敗、3.38)も好投手で、ブルペンにはメジャー有数のクローザーとなったケンリー・ジャンセン(44セーブ2.76)が控える。

 ヤシエル・プイグ(.296、16本塁打)、マット・ケンプ(.287、25本塁打)、エイドリアン・ゴンザレス(.276、27本塁打、116打点)、ハンリー・ラミレス(.283、13本塁打)、ディー・ゴードン(.289、64盗塁)といったビッグネーム揃いの打線も、9月はメジャートップの156得点を稼いだ。
(写真:ケガも多いハンリー・ラミレスだが、その才能は本物)

 ハリウッドのスター軍団は、こうしてほぼ万全の状態で秋の戦いに臨んでくる。例年、この時期の勝負弱さが気になるだけに、対抗馬止まりにしたが、多くのタレントたちが力を発揮し、頂点まで突っ走る可能性は十分にある。

 順当ならばナ・リーグ優勝決定シリーズで実現するナショナルズとのパワーハウス対決は楽しみである。東西決戦であり、“アメリカの首都”と“ハリウッド”の激突。多くのスターが散りばめられた横綱対決はベースボールファン垂涎のカードであり、“事実上のワールドシリーズ”と呼びたくなるほどにハイレベルな戦いになるに違いない。

穴  ボルチモア・オリオールズ(ア・リーグ東地区優勝、96勝66敗)

 あくまで個人的な意見だが、今年はナ・リーグのチームが頂点に立つと考えている。守備、ブルペン(防御率4.29はメジャー27位)に難があるタイガース、本塁打数(95本)でメジャー最下位と圧倒的にパワーに乏しいロイヤルズ、肝心の先発ローテーションが上質とは言えないエンジェルスといったア・リーグのチームは、ナ・リーグの2強と比べて一段劣るように思えるからだ。

 ただ、ア・リーグの中で最も勢いを感じさせるのが、7月以降は4点以上を挙げたゲームで43勝3敗と勝ち続けてきたオリオールズである。 
 クリス・ティルマン(13勝6敗、3.34)、チェン・ウェイン(16勝6敗、3.54)、バド・ノリス(15勝8敗、3.65)、ミゲル・ゴンザレス(10勝9敗、3.23)の先発陣は粒ぞろいだが、絶対のエース不在。しかし、ザック・ブリットン、ダレン・オデイ、アンドリュー・ミラー(3人合わせて207イニング3分の1で238奪三振、防御率1.78)と続くブルペンは層が厚い。
(写真:今季、チームの勝ち頭となった元中日のチェンは大舞台でどんな投球を見せるか)

 そして、このリリーフ投手たちを知将バック・ショーウォルター監督が実に巧妙に使いこなしてきた。1点差ゲームで32勝23敗とメジャートップタイの成績を残してこられたのは、ブルペンとショーウォルターの存在ゆえに違いない。

 打線は故障離脱したマニー・マチャド、マット・ウィータース抜きでもメジャー1位の211本塁打。出塁率はリーグ11位ともうひとつながら、ホームランの出易い本拠地に適したチームづくりを進め、狙い通りの効果を発揮している。10月2日の地区シリーズ第1戦でも、2本のホームランが大きく響いてタイガースに12−3で勝利を飾った。

 さまざまなアクシデントをチーム一丸となって乗り越えているという意味で、最も“運命のチーム”らしく見えるのが今季のオリオールズ。地区シリーズでマックス・シャーザー(18勝5敗、3.15)、ジャスティン・バーランダー(15勝12敗、4.54)、デビッド・プライス(15勝12敗、3.26)といった屈指の好投手たちを擁するタイガースの壁を乗り越えれば、さらに勢いを増すに違いない。そして、ワールドシリーズの舞台でナショナルズとの“ベルトウェイシリーズ”が実現すれば、より運命的な趣を帯びることにもなるだろう。
(注:ワシントンD.C.とボルチモアはわずか63キロの距離にある。首都ワシントンを中心に取り巻く環状道路「ベルトウェイ」にちなみ、両チームのライバル対決は「ベルトウェイシリーズ」と呼ばれる)


杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール
東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。この3月に最新刊『MLBに挑んだ7人のサムライ』(サンクチュアリ出版)を上梓。

※杉浦大介オフィシャルサイト>>スポーツ見聞録 in NY

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