第20回 二宮清純が迫る「最高のシューズ×最高のプレーヤー」〜D ROSE 5 BOOST〜


(写真:アウェーカラーの「D ROSE 5 BOOST」。同色を含めてカラー展開は全7色 写真提供:adidas)
[size=medium] 高次元のエナジーリターン[/size]
boostについては、前回「energy boost」を紹介した際、その革新的技術に驚いた。2010年、adidasのテクノロジーパートナーである科学会社・BASFが軽量で、かつ強度が高く、温度変化にも強いTPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)を一度発泡させ、米粒大の粒子に加工。2013年には、米粒大の粒子を特殊製法によって圧着することで、従来の素材では実現不可能とされていた反発力と衝撃吸収性に優れたソールを誕生させた。この新素材がboostである。

アウトソールに目を向けると、細かな溝がつくられている。その効果について、PRを担当する中村正浩(カテゴリーマーケティング)が説明してくれた。
「シューズと地面との摩擦ポイントを少なくすることでより地面をとらえ、グリップが強くなります。また、細かい凹凸した部分があることで、ホコリの付着を抑えられます。ホコリや小さなゴミがソールに付着すると滑りやすくなるので、それを少しでも軽減する構造になっています」
抜群のグリップ力を得た今シーズン、ローズの武器でもあるクロスオーバー(左右の動きでディフェンスを揺さぶるプレー)はさらに切れ味を増すだろう。
軽さ、クイックネス、耐久性、耐寒・耐熱性……機能性を高めることにフォーカスし続けてきたadidasの技術が凝縮されたシューズが、「D ROSE 5 BOOST 」なのだ。
「普通のモノをつくってもおもしろくありません。やはり、人々に“なんだこれは!?”と衝撃を与える商品を提供していきたいと考えています。その意味で、『 D ROSE 5 BOOST』は履いたら、“なんだこれは!?”と思ってもらえると確信しています」
中村はこう言って、同シューズの完成度の高さに胸を張った。
[size=medium] 家族思いのヒーロー[/size]

「グローバルの契約担当者が複数の選手に『どのような目標を持っているか?』と聞いたそうです。『MVPを獲れるような選手になりたい』や『チームを優勝に導きたい』と答える選手がいる中で、ローズだけは違っていた。彼は『家族、特に母の生活環境を変えたい』と言ったそうです」
(写真:昨年に来日した際、ローズは家族全員と日本へやってきた 写真提供:adidas)
ローズはシカゴの豊かではない地域の出身で、4人兄弟の末っ子として生まれた。母親と3人の兄に見守られ、ローズは育った。母子家庭であり、生活は楽ではなかったと聞く。だからこそ、ローズは家族を救うことを最大の目標に掲げたのだろう。
「D ROSE」シリーズには、バラのロゴ(右写真)が取り入れられている。ローズ専用のロゴであり、由来は彼の名前をもじったもの。ただ、さらに大きな意味がこのロゴには込められている。中央の「1」を3枚の花びらが取り囲んでいる。中央の「1」はローズの母親、3枚の花びらは彼の兄たち。“家族がみんなでまとまっている状況がデリック・ローズ”との意味を内包しているのだそうだ。家族思いのヒーロー。それがローズである。
ローズは身長が191センチとNBAでは大柄ではない。だが、キレのあるドリブルテクニック、細かいステップワークで大男たちを抜き去り、次々にシュートを決める。NBA1年目の2008−2009シーズン、エースとして81試合に出場し、チームをプレーオフに導いた。シーズンMVPを獲得した2010−2011シーズンには、史上3人目の1シーズン通算2000得点、600アシストを記録。名実ともにNBAを代表するスター選手となった。ローズとboostが融合する今シーズン、さらなる爆発を期待せずにはいられない。
