第21回 二宮清純が迫る「ジャージの新スタイル」〜デニム風ジャージ「adidas24/7」登場〜


(写真:デニム風ジャージ「adidas24/7」メンズのフーディジャケット 写真提供:adidas)
[size=medium] 固定観念を覆した新発想[/size]
「ジャージ」と言えば、スポーツウェアのほかに「部屋でゆったりと過ごす」あるいは「ちょっとそこまで出かける」際に着用するというイメージをもつ人が少なくあるまい。これに新たなスタイルを提案しようと、adidasが開発したのがデニム風ジャージだ。その名も「adidas24/7」。「24時間、週7日間、スポーツのオン、オフ問わずにさまざまなシーンで着用できる」という意味が込められている。
「もちろんスポーツの現場でも着れるし、公園に散歩に行ったり、街に買い物に出かける時も着ることができる。そんな汎用性の高いジャージを目指しました」とアディダスマーケティング事業本部Men’s/Techfitビジネスユニットカテゴリーマーケティングマネージャー高嶋佑輔氏は今回のコンセプトを語る。

「例えば、スリーストライプにメッシュの生地をつけて、腕を動かした時に通気性が良くなるようにしたり、ストライプ自体をラメテープにして目立たせるようにしたり……。それから高級感のある素材を採用するなど、これまではスリーストライプと素材感にこだわってきました」
しかし、今回はこれまでのマイナーチェンジではなく、“革新”とも言うべき新スタイルを模索してきた。その理由を高嶋氏はこう語る。
「時代の流れとともに、お客様の嗜好が非常に多様化してきているんです。ひとつのものにこだわるというよりも、いろいろなアイテムを楽しむお客様が増えているんですね。そこでジャージもそんなお客様のニーズに応えていきたいなと。だったら、思い切ってこれまでのジャージに対する固定観念を覆して、“えっ!? これって本当にジャージなの?”と思われるような新しいものをつくろうということからスタートしたんです」」
そこで浮上したのが“デニム”である。Women’s/Stella McCartneyビジネスユニットカテゴリーマーケティングマネージャー宮本雄司氏によれば、日本人のデニムの所持率は、今や90%以上にものぼるという。しかも平均3〜6本と、日本人にとっては老若男女問わず身近なアイテムとなっている。
「デニムはカジュアルにも着られるし、ジャケットを羽織るシーンでも着用できる。そういう汎用性の高さが人気の理由になっているんだと思います。だったら、ジャージの動きやすさや着心地の良さに、デニムのファッション性を融合したら、これまでにはないアパレルが作れるのではないかと考えたんです」
“ジャージ”だけど、“ジャージ”ではない――これまでにはなかった画期的な発想による新スタイルのジャージ。それがデニム風ジャージ「adidas24/7」なのだ。
[size=medium] 着こなし自由の汎用性[/size]

まずひとつは、新たな「デザイン性」をもたせることで、高い「コーディネート性」の実現を可能にしている点だ。素材は、adidasが得意とする編み込み製法のポリエステルニットを使用している。ふつう、生地は縦と横で編まれている。しかし、これを斜めにすることで、ニットでデニム地を再現したのだ。
(写真:デニム風ジャージ「adidas24/7」ウィメンズのリブブルゾンは着こなし自由 写真提供:adidas)
ジャケットのタイプはメンズ、ウィメンズともに2種類。メンズは襟元がスタンドタイプとフード付きのものがある。「特にフード付きのタイプは、従来通りのセットアップではなく、下がジーンズでも短パンでも合います。スポーツウェアとしてだけでなく、さまざまなシーンに合わせて、コーディネートできるんです」と高嶋氏。カラーはそれぞれカレッジネイビーとブラックがある。
一方、ウィメンズはスタンドタイプとブルゾンタイプ。さらにパンツもストレートタイプとスソリブタイプの2種類がある。それぞれの特徴を、宮本氏は次のように述べる。
「ウィメンズも汎用性という点に着眼を置いて開発しました。スタンドタイプはダンガリーシャツ風にカッティングしてファッション性を高めています。それと、今トレンドであるブルゾンタイプは、下がスウェットやランニングタイツ、ジーンズとあらゆるアイテムと合わせることができ、コーディネートを楽しむことができます。
パンツは従来のストレートラインのものに加え、足首が絞られているスソリブタイプをご用意しました。ストレートタイプは、ヒザの位置を高くすることで、脚長に見える効果があります。またスソリブタイプは動きやすくて、足首がスマートに見える効果があります。どちらも従来よりも高い位置にバックポケットを配置することで、ヒップアップしたシルエットを実現しています」
カラーはスタンドタイプがカレッジネイビー、ラッキーブルー、ブラックの3種類。ブルゾンタイプはカレッジネイビーとラッキーブルーの2種類だ。
[size=medium] 伝統の“4センチ8ミリ”が復活[/size]

もうひとつのポイントは「機能性」だ。素材にはadidasが開発した「climalite(クライマライト)」が搭載されており、スポーツジャケットとして必須の吸汗性、速乾性にも優れている。また、“デニム風”とはいえ、デニムにはないストレッチ性も従来通りあり、着心地の良さは抜群だ。
ポケットにもこだわった。これまでadidasをはじめ、ジャージのポケットは真横から入れるタイプがほとんどだった。実生活での使用が想定されていないデザインとなっていたのだ。しかし、現在はスマートフォンやiPodなどを持ち歩くことが日常シーンとなっている。そこで、より使いやすさを追求し、手を入れやすい角度に仕上げている。
さらに、ウィメンズには手触り感にもこだわりを持たせていると、宮本氏は語る。
「女性がウエアに求めるもので、必ずトップ3に入るのが“着心地”なんです。そこで、今回はウィメンズのジャケットやパンツでは手触り感も重視しました。その名も“マシュマロ・タッチ”。生地を触ると、マシュマロのようにやわらかくて軽いんです。さらにストレッチ性も兼ね備えています」
こうした新たなスタイルを展開する一方で、「伝統」も重んじられている。adidasのジャージの歴史を語るうえで欠かすことのできないのが、スリーストライプだ。以前、スリーストライプは幅が“4センチ8ミリ”と決まっていた。しかし、機能性を重視する中で、1本ずつセパレートされたスリーストライプになったりと“4センチ8ミリ”のスリーストライプが減少傾向の一途をたどってきたという。高嶋氏はその理由をこう語る。
「以前スリーストライプは、ラインテープを生地の上から貼っていたんです。そうすると、そこだけ厚みが出てしまって伸縮性や通気性が損なわれるというデメリットがありました。そこで、1本ずつセパレートされたスリーストライプにしたりして、なるべく面積を減らす工夫をしてきたんです。そのために、“4センチ8ミリ”のスリーストライプはどんどん消えていきました」

これまでセットアップで着用し、スポーツシーンで用いられることの多かったジャージだが、“デニム”という要素を組み込むことで、adidasは新たな道を切り開いた。高嶋マネージャーは言う。「お客様に“違和感”を楽しんでもらいたいんです」。
adidasが提案する新スタイルが、ジャージの新定番となる日は遠くなさそうだ。