10周年記念式典の席で、独立リーグの四国アイランドリーグplusが新構想を披露した。来年6月から7月にかけて、リーグ選抜チームを結成して北米をテリトリーとする独立リーグ「キャンナムリーグ」と、米国の「アトランティックリーグ」に参戦するというのだ。
 リーグの鍵山誠CEOの狙いはこうだ。「世界のベースボールマーケットでの地位向上と、四国をベースとするグローカルビジネスの確立」。グローカルとはグローバルとローカルを掛け合わせた造語で、近年、方々で目にする。グローカル企業などという言葉もあるくらいだ。

 海外進出の背景には「四国にとどまっていたのでは先はない」との危機感がある。総務省の調べによるとリーグがスタートした05年、四国の人口は約409万人。それが13年には約391万人にまで減少した。

 言うまでもなく総人口の減少と少子高齢化は、この国が直面する最大の課題である。市場は縮む一方なのに社会保障費の増大はとめどない。とりわけ地方において、その傾向は顕著で、もちろん四国も例外ではない。座して死を待つわけにはいかない、との鍵山の覚悟がにじむ。

 海外遠征には、ざっと考えただけでも以下のメリットがある。第一に選手の強化があげられよう。過酷な環境で連戦をこなすにはハングリー精神と基礎体力が要る。今季、アトランティックリーグでプレーした元北海道日本ハムの坪井智哉は「バス移動は長い時で10時間。同僚の家のソファーで寝たこともある」と語っていた。

 海外に「SHIKOKU」を売りこむ意味も大きい。円安を背景に、今年、外国人旅客は過去最多の1300万人に達しそうな見通し。旅客ひとりあたりの支出額は平均で約16万円(今年7−9月期)にもなる。

 残念ながら、その恩恵に四国はあまり浴していない。移動手段の乏しさが最大の理由だ。来春に北陸新幹線が開業し、16年に新幹線が函館まで延伸されれば、いよいよ新幹線が通っていない地域は四国だけとなる。四国4県のGDPは全国の3%にも満たない。

 選抜チームの愛称は、ぜひ四国をイメージするものにしてほしい。ユニホームに四国の位置を示す地図を入れるのはどうか。好むと好まざるとにかかわらず、選手たちは「観光大使」の任務も背負うことになる。

<この原稿は14年12月17日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
◎バックナンバーはこちらから