放言癖で知られる麻生太郎財務大臣だが、これは珍しく正論である。「オリンピックの種目になるのに税金がかかるのはいかがか」。政府・与党内で検討していたゴルフ場利用税の廃止が、またもや見送られた。
 ゴルフ議員連盟の会長でもある麻生氏は「(廃止は)消費税が来年10月から上がるのであれば、それがいいタイミングかなと思っていた」とも語ったが、「地域の重要な財源」とする総務省と自民党税制調査会の壁は厚かった。

 周知のようにゴルフ場の利用税は、かつての娯楽施設利用税が姿を変えたものである。これはビリヤードなどにも適用されていたが、1989年の消費税導入を機に廃止された。

 ゴルフだけが名称を変えて別の税として存続したのは、廃止した場合、地方自治体の財政面への影響が余りにも大きいからである。12年度は507億円の税収のうち、約7割がゴルフ場が所在する市町村に交付された。

 消費税にプラスしてゴルフ場利用税もとなると、これは二重課税の疑いが濃い。下村博文文科大臣も「消費税との二重の課税がある」と国会で明言している。
 問題は廃止した場合、500億円前後の税収を、どう補填するかだ。代替財源の目処が立たないことに加え、地方の財政状況はより厳しさを増している。

 問われるのはゴルフに対する国民の意識である。先日もある朝刊紙のオピニオン面に安倍晋三首相が4カ月ぶりにゴルフを楽しんだことに対する批判の声が紹介されていた。

 投稿者は福島市の在住者で、福島県民は今もって原子力災害に泣いている。ゴルフは除染が進み、県民の生活再建が果たされた後にしてほしい、という内容だった。自分たちは苦しい生活を余儀なくされているのに、首相はゴルフか、呑気なものだ、との思いがあるのだろう。

 しかし、とも思う。もし首相がゴルフではなく、サイクリングやジョギングで汗を流していたら、きっと違った反応を示していたのではないか。

 要するにこの国において、ゴルフはまだ残念ながらスポーツとしての市民権を勝ち得ていない。関係者は二重課税の矛盾を突く前に、国民のゴルフに対する認識を改めることにもっとエネルギーを割くべきだろう。ゴルフを悪者にしてはならない。

<この原稿は14年12月31日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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