今年で9年目を迎えるルートインBCリーグは、新たな一歩を踏み出します。創設時から目指してきた8球団でのリーグ戦がようやく実現することになったのです。新たに加わったのは、「福島ホープス」と「武蔵ヒートベアーズ」。既存の球団とあわせて4球団ずつの2地区にわかれ、NPB(ファーム)との交流戦を含めた公式戦を4月11日から行ないます。
 8球団でもたらされる新たな息吹

 2007年に4球団(新潟アルビレックスBC、信濃グランセローズ、富山サンダーバーズ、石川ミリオンスターズ)でスタートしたBCリーグは、翌08年に群馬ダイヤモンドペガサスと福井ミラクルエレファンツが加わり、昨年まで6球団でリーグ戦を行なってきました。その間、ずっと8球団の必要性を感じ、実現に向かうべく奔走してきました。そして今年、それがようやく現実のものとなったことは、感慨深いものがあります。

 なぜ6球団ではなく、8球団なのか。リーグとしてまず一番に考えることは、現場と観客の両面において、マンネリ化を避けるということです。そのためには、やはり1リーグ制ではなく、両リーグの優勝チームがリーグチャンピオンの座を争うという構図のできる2リーグ制が適しています。これまでは他地区との交流戦で調整してきましたが、常に交流戦が行なわれているという、2リーグ制が正しく機能しているとは言い難い状況が生まれていたのです。2リーグ制として正常なかたちをとるには、やはり偶数チームで行なうのがベストであり、マンネリ化を避けるためには最低でも各リーグ4球団ずつの計8球団で行なう必要があるわけです。

 また、8球団にすることによって、現場における最大のメリットといえば、やはり選手の受け皿が拡大することでしょう。単純に2球団分の選手枠が広がるだけでなく、ルートインBCリーグの存在価値が拡充することにもつながります。それは既に数字として表れています。今月15日には千葉ロッテ様から浦和球場をお借りして合同トライアウトを行ないました。受験者は、前年2月に行なったトライアウトの倍の数にものぼったのです。こうした現象は、エクスパンション化をはかるBCリーグへの期待の高まりを表しているのではないかと感じています。

 さらに、現場の監督やコーチ、そして何より選手たちにも大きな効果があると期待しています。2球団が加入し、4球団ずつのリーグ戦を行なう体制が整ったことによって、同地区に3球団もライバルが存在するわけです。そうなると、毎試合新鮮さと、いい緊張感をもって試合に臨めるのではないかと思うのです。08年から7年間、各地区3球団ずつの6球団で行なってきたわけですが、やはりマンネリ化が生じてきていたことは否定できません。それが解消され、リーグに新たな戦いの息吹がもたらされるのではと期待しています。

 しかし、本来であれば、もっと早い段階で8球団構想を実現したかったのですが、9年かかってしまったという反省の念も抱いています。当初の計画通りにいかなかった要因は、エクスパンションによるメリットとリスクを考えたこと、そして独立リーグという新しい日本のプロ野球文化というものを世間一般に認知してもらい、存在価値を認めてもらうのに、予想以上に時間を要したということが挙げられます。これはリーグの代表として反省しなければならないと強く感じています。

 今回新加入した福島と武蔵の2球団ですが、両地域に足を運ぶと、予想以上に“おらが町”の球団の誕生を喜んでくれているように感じています。福島の球団創設の構想は08年あたりから浮上していました。実現に向けて少しずつ歩んでいたその折に、11年の東日本大震災が起き、球団構想は一度頓挫した状態となったのです。それから4年、ようやくルートインBCリーグに福島の球団が誕生しました。これは福島県ならびに東北の復興という観点から見ても、非常に大きな意味を持っていると感じています。「地域と地域の子どもたちのために」を理念に掲げたルートインBCリーグの存在意義が、まさに問われる、そんな思いを強くしています。東北復興において、ルートインBCリーグの役割をリーグ全体で考え、実行に移していきたいと思っています。

 一方、埼玉県熊谷市を拠点とする武蔵が加わることも、ルートインBCリーグにとっては大きな意味を持っています。それはリーグ初の首都圏エリアの球団だということです。首都圏エリアに球団をもつことで、国内市場の中心に、ルートインBCリーグの情報が発信しやすくなったというメリットがあるからです。先日も、武蔵の所属選手について首都圏版のテレビ番組で報道されていました。これまでにはなかった中央へのメッセージ性の高さをひしひしと感じています。1月には本拠地の熊谷市内をパレードをするなど、球団も地元の人たちへのアピールを積極的に行なっています。福島同様、地域密着がうまく図られているという印象を受けています。

 必見! NPB11球団との真剣勝負

 さて、13、14年シーズンは、日本人元メジャーリーガーやアレックス・ラミレス(現・群馬シニアディレクター)が在籍するなど、大物のスター選手が人気を博しました。各球団が彼らをうまく活用し、パフォーマンスの向上はもちろん、プロモーションにおいても工夫が凝らされていました。その結果、11年の震災以来伸び悩んでいた観客動員数は2年連続で増え、1試合平均が前年を上回る球団も半数を超えました。14年に限って見てみると、全体の観客動員数は前年比22%アップ、信濃を除く5球団の1試合平均が前年を上回る結果となりました。

 その日本人元メジャーリーガーやラミレスが昨季限りで現役を引退し、スター選手はのきなみチームを去りました。しかし、今年は福島と武蔵の2球団が加わることによって、観客動員数は必ず増加するものと予想しています。それだけ周囲からの2球団への期待の大きさが感じられるからです。とはいえ、本当の勝負は5月の連休以降です。はじめは“おらが町”の、あるいは新しいライバル球団の誕生を喜んで見に来てくれると思いますが、その観客をいかにリピーターにするかが重要なのです。

 そこで、継続して球場に足を運んでくれる観客を増やすためのコンテンツとして、今年はNPB球団(ファーム)との交流戦の拡充を図ります。昨年、NPBとの交流戦は12試合行なわれ、その平均観客数は約1300人にものぼりました。やはりファームとはいえ、NPB選手のプレーを観たいと思っている人は多く、需要が高いことを示しています。さらに、交流戦は選手にとっても大きなメリットがあります。自分たちの実力が今、どの位置にあるのかということがわかるからです。だからこそ、交流戦を公式戦に組み入れているのです。観客には本物の試合を観て欲しいということ、そして選手には真剣勝負の中で自分たちの実力を測ることでレベルアップにつなげて欲しいからです。

 昨年は巨人、オリックス、広島の3球団でしたが、今年はイースタンリーグ7球団(北海道日本ハム、東北楽天、巨人、東京ヤクルト、千葉ロッテ、横浜DeNA、埼玉西武)と、ウエスタンリーグの球団とも交流戦を行なう予定で、少なくともルートインBCリーグ各球団2試合ずつの計16試合を実施します。それこそ、福島vs.楽天の“東北ダービー”、武蔵vs.西武の“埼玉ダービー”は盛り上がること間違いありません。

 実は、開幕から楽しみなカードが組まれています。開幕日の4月11日には富山v.阪神および信濃vs.日本ハムの2試合、翌12日には福井vs.阪神が行なわれます。特に福井の新指揮官は元阪神の吉竹春樹監督ですから、開幕戦での古巣との対決に燃えることでしょう。各試合とも、どんな熱戦が繰り広げられるのか、今から非常に楽しみです。

 もちろん、NPBの球団も負けられないという気持ちで向かってくるでしょう。しかし、BCリーグの選手もまた、NPBを目指しているわけですから、そのNPBの選手に勝たなければ、その目標は達成されないわけです。私が選手にいつも言うのは、「NPBに行きたければ、向こうのユニフォームを奪い取って、自分が着てやるくらいの気持ちで向かっていけ」ということ。つまりはNPB相手に抑えて、打って、結果を残すしか道はないということです。ちなみに、昨年は3勝8敗1分けと、ルートインBCリーグは大きく負け越しました。今年こそは勝ち越す勢いでいきたいと思っていますので、ぜひ球場に足を運んで、本気と本気のぶつかり合いを楽しんでください。

村山哲二(むらやま・てつじ)プロフィール>:BCリーグ代表
新潟県出身。柏崎高校では野球部に所属。同校卒業後、駒澤大学北海道教養部に進学し、準硬式野球部主将としてチームを全国大会に導いた。2006年3月まで新潟の広告代理店に勤め、アルビレックス新潟(Jリーグ)の発足時から運営プロモーションに携わる。同年7月に株式会社ジャパン・ベースボール・マーケティングを設立し、代表取締役に就任した。著書に『もしあなたがプロ野球を創れと言われたら――「昇進」より「夢」を選んだサラリーマン』(ベースボールマガジン社)がある。
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