♪なんでだろう〜、なんでだろう〜。日常生活の何気ない疑問を独特のギターのリズムに乗せて踊りながら問いかける「テツandトモ」を久しぶりにテレビで見かけた。赤いジャージの中本哲也と青いジャージの石澤智幸。出で立ちも芸風も昔のままだった。
 聞けば、デビューから17年たった今も彼らの人気は絶大で、業界用語でいう営業、すなわち地方各所でのイベントには引っ張りダコなのだという。

 そんな「テツandトモ」に訊ねてみたい。「得失点差はリーグトップ。だけど成績は最下位なの、なんでだろう?」カープのことである。交流戦前日までの得失点差はセ・リーグのトップ。にもかかわらず成績は19勝26敗で最下位。野球が上手でない証拠である。

 そこで調べてみると、1点差試合の戦績は9勝18敗。その中には0対1の完封負けが5試合も含まれている。
 勝つ時は11点も13点もとるが、負ける時は1点差。ベンチはもちろん、見る側もストレスが溜まる。

 そもそもWBCのような国際大会を除き、得失点差はプロ野球において意味をなさない。1点差でも勝ちは勝ち、10点差でも負けは負けだ。

 しかし、野球の巧拙を判断する上での材料にはなる。以前、メジャーリーグのフロント幹部から「1点差の負けは監督の手腕、3点差以上は選手の働き、5点差以上はフロントの力」という話を聞いたことがある。フロントにすれば、クロスゲームを高い確率でモノにしてこそ“使える指揮官”ということだ。

 セ・リーグで首位に立つ横浜DeNAは1点差ゲームで13勝7敗と抜群の成績を残している。17セーブをあげているクローザー山崎康晃の活躍に依るところが大きい。
「長いイニングだと大したことないが、短いイニングだと素晴しいピッチングをする」。その適性を見抜いて締めくくり役に起用した中畑清監督の慧眼には恐れ入る。

 黒田博樹の8年ぶりの復帰もあり、開幕前には優勝候補にもあげられていたカープだが、これだけ競ったゲームに弱いと、なかなか上には行けない。

 地方球場では10連敗という“デスデータ”もある。地方で稼ぐ「テツandトモ」の“営業上手”にあやかりたい。

<この原稿は15年5月27日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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