二宮: いよいよ「FIFA女子ワールドカップカナダ2015」が間近に迫ってきました。今回は前回に続く連覇への期待が高まっています。
佐々木: でも、今は3月のアルガルベ杯が9位で、「大丈夫か」「連覇できるのか」という不安の声の方が多いのではないでしょうか。そこをいい意味で裏切るのが、なでしこジャパンです。

二宮: 前回も決して最初から優勝への期待値が高かったわけではありません。
佐々木: 行けるかもしれないという雰囲気になったのは、準々決勝でドイツに勝ってからですよ。大会直前は米国に連敗し、韓国と引き分けてドイツに乗り込みました。でも、大会で試合を重ねる中で、ぐんぐん成長していった。今回も我々は未知数の部分がある。3:7くらいで押されていても勝つのがなでしこの良さです。苦しい展開でも、どっちに転がるかわからない部分をモノにしていけば、連覇の可能性はあると信じています。

 「こころ、ひとつに」戦う

二宮: 今回はグループリーグの相手がスイス、カメルーン、エクアドルとすべて初出場の国です。ランキング上はなでしこが上ですが、相手は失うものがないだけに不気味な面もあります。
佐々木: 相手はどんどんチャレンジしてくるでしょうね。それをチャンピオンとして受けて立っては足元をすくわれる。楽に勝てる相手は絶対にいません。1戦1戦、必死に戦うことで次がある。その意識を全体で徹底させたいと思っています。

二宮: 2年前の男子のワールドカップでは前回優勝のスペインがグループリーグ敗退という番狂わせがありました。
佐々木: なでしこだって同じことがないとは限りません。だから、大会に臨むにあたっては1位通過とか、優勝とか、そういった余計な思いを捨てて、まずは目の前の試合でしっかり結果を出す。その延長線上に目標達成が見えてくると考えています。

二宮: 連覇という偉業を目指す上では、チームがひとつになることが何より重要です。今回、サッカー協会では「なでしこハッピープロジェクト」を立ち上げ、ファンやサポーターと心をひとつにする活動を行っています。「こころ、ひとつに」とのロゴが入ったadidas製の応援Tシャツも完成しました。
佐々木: Tシャツという形で皆さんが着て応援していただければ、一目で我々とのつながりを感じますから、すごくうれしいですね。

二宮: Tシャツにはダルマの絵が描かれていますが、目がひとつ空いています。連覇を達成したら、ここに目を入れるとか。
佐々木: これは励みになりますね。ダルマにはなでしこの花と、カナダのカエデの葉が取り入れられていたり、細かいところまでこだわるのが日本らしい(笑)。

二宮: ユニホームも番号やネームがなでしこ色に染められています。左胸には優勝回数を表す星がひとつ。右胸にも前回優勝のエンブレムが輝いています。
佐々木: 今回、このエンブレムをつけて出られるのは我々だけです。こういった称号をつけて大舞台に立てるのは、今までに経験がないこと。その中で連覇にチャレンジできるというのは楽しみですね。それに、このエンブレムには「2011」という年号が入っています。前回は東日本大震災直後のワールドカップでした。あの時も今も被災地の方は大変な思いをしています。このことを全員で思い起こして戦う意味でも、大きなエンブレムになるでしょうね。エンブレムに恥じることのないゲームをしようと改めて思えるはずです。

 スリッピーな人工芝も味方に 

二宮: カナダでは人工芝のピッチで試合をすることになります。その対策は?
佐々木: 昨秋にカナダ遠征を行って、人工芝のピッチは体験済みです。その時は古い人工芝でスライディングをすると擦過傷ができる状況でした。ただ、この大会に合わせて芝は張り替えていると聞いています。選手たちも人工芝でも使えるスパイクを用意するなどして、準備は怠りなく進めています。現地に行ってからも人工芝のピッチでトレーニングして慣れる時間を設ける予定です。

二宮: 人工芝は雨が降ったりするとスリッピーになってやりにくさはありませんか。
佐々木: スリッピーな環境は、むしろなでしこにはプラスに働くとみています。ボールが速く回りますから、ヨーロッパのパススピードにも負けなくなる。横パスをさらわれたりする不安も少なくなるので、なでしこのスタイルを考えると、人工芝は決して悪くない。天然芝で重いピッチよりはいいと考えています。

二宮: スパイクに関しては今回、adidasは「X」と「ACE」という2種類の新作を開発しました。なでしこのメンバーでも、このいずれかを履いて試合に出る選手もいるようです。監督としても選手の履くスパイクは気になりますか。
佐々木: サッカーで使う用具には、ボールやユニホーム、ヒザあてなどがありますが、やはり選手が一番敏感なのはスパイクです。昨年、カナダの人工芝で試合をした際にも選手たちはスパイクとのフィット具合をかなり気にしていました。今回、adidasが天然芝、人工芝両方で使用できる質の高いスパイクを開発したことに対して、ありがたく思っています。

二宮: 監督の現役時代とは全く違うでしょう?
佐々木: 違いますね。僕なんか高くていいのはショップに行って眺めているだけでしたから(笑)。実際に買っていたのは安いスパイク。使っていると1カ月くらいでダメになっちゃう……。

二宮: 今回のスパイクは、「X」は「ピッチを魅了するゲームチェンジャー」用、「ACE」が「ゲームを支配するプレーメーカー」用というコンセプトで開発されています。adidasでは、「X」を履くゲームチェンジャーや「ACE」を使用するプレーメーカーを“フットボールクリエイター”と位置づけ、個のパフォーマンスを最大限引き出せるテクノロジーを追求しています。佐々木監督は“フットボールクリエイター”という表現にどんなイメージを抱きますか。
佐々木: 勝負において相手のゴールを阻止し、しっかりと得点に関わる。ゲームメーカーであり、ポイントゲッターである存在ですかね。そういう選手はなでしこにも増えてきましたよ。今回、若手が多く代表に入らなかったのは残念ですが、その分、前回大会を経験した選手が、さらにレベルアップしてきている。そういった選手たちをうまく融合するのが僕の仕事です。その点では、僕自身も“フットボールクリエイター”にならなくてはいけませんね。

二宮: 個々の才能がチームの中で化学反応を起こし、その中から新しい戦力も台頭してくる。大会中にチームが生き物のように進化していくのが理想でしょうね。
佐々木: 前回がそうだったように、ラッキーガールが出てこないと大舞台では勝ちきれない。それも僕のマネジメントや采配が問われる部分だととらえています。今回も皆さんをドキドキハラハラさせるかもしれませんが(笑)、その中で勝利を引き寄せるのがなでしこのサッカーです。カナダで「こころ、ひとつに」頑張ってきますので、応援よろしくお願いします!

 ピッチを魅了する「X」、ゲームを支配する「ACE」

 今回、FIFA女子ワールドカップに臨むなでしこジャパンは胸・背番号、選手ネームがピンクにプリントされたユニホームを着用する。これまで背番号やネーム部分には白が使われてきたが、なでしこの花言葉でもある“可憐”かつ“大胆”に戦うという強い決意を、新しい色に込めた。
(写真提供:adidas)

 決戦に挑むなでしこたちを日本から応援するアイテムが、ユニホームデザインをベースになでしこカラーで染め抜かれた応援Tシャツだ。左胸に配置された必勝祈願のダルマは、なでしこの花とカナダ国旗に使用されているカエデがモチーフになっている。

 選手たちの正確で力強いキックを引き出すスパイクには、従来のスタイルを大幅に見直したモデルを投入する。ピッチを魅了するゲームチェンジャータイプの「X」と、ゲームを支配するプレーメーカータイプの「ACE」だ。なでしこジャパンではFW大野忍選手が「X」を着用。キャプテンのMF宮間あや選手、サイドバックの鮫島彩選手、6大会連続のメンバー入りとなったMF澤穂希選手が「ACE」を履いてプレーする。

「X」ではスタッドが内外に2面のエッジを備えた鋭角のL字型になっており、あらゆる方向へのグリップ力と加速力を増してくれる。アッパーは薄くて軽く、やわらかい上にグリップ性も優れたハイブリッドシンセティックレザーを使用。中足部の両サイドに取り付けられた樹脂素材の補強パーツが、横方向のホールド性とクッション性を高める。さらにはシューズ内蔵型のテックフィットソックスも搭載。速く激しい爆発的なプレーにおいても足のブレを緩和し、高い安定性をもたらせている。

「ACE」では14本のメインスタッドと、29本のサブスタッドで構成された43本の丸型スタッドが特徴的だ。これにより、ボールの接触とグラウンドへの接地面積がアップ。ボール、グラウンドへの吸い付きやすさが向上し、優れたボールコントロールと360度へのスムーズな動きをサポートする。アッパーは3層からなる素材でボールへのグリップ力、クッション性、足の安定感などを高めた。トラップ時の衝撃を吸収しつつ、パスやシュート時の力強いミートや正確なインパクトを支えてくれる。またソールとヒールカウンターは耐久性に優れた合成樹脂によって一体化しており、かかとでの着地から前足部の蹴り出しまでスムーズで安定した動きを可能にしている。
(写真提供:adidas 左が「X」、右が「ACE」)

 adidasでは「X」と「ACE」を通じ、“フットボールクリエイター”の重要性を提言する。日本が世界で結果を残せないのはなぜか。世界の強豪とは何が違うのか。この答えをadidasでは「組織から逸脱する個の力」に求めた。そのために不可欠なのが“フットボールクリエイター”の存在だ。今回の革新的な2つのモデルで、adidasは日本のサッカーに変革を起こしたいと願っている。

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(インタビュー構成・写真/石田洋之)
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