第27回 二宮清純が迫る「フットボールクリエイターの重要性」
2014年のFIFAワールドカップブラジル大会で優勝を収めたドイツ代表、その中心メンバーが揃うバイエルン・ミュンヘン、チャンピオンズリーグの2014-15シーズンを制して3冠を達成したバルセロナ、プレミアリーグを圧倒的な強さで制覇したチェルシー。なぜ彼らはここまで強いのか。adidasでは、その理由を、チームとしてのひとつの「根本に根付くスタイル」と、選手の圧倒的な「個」の強さにあるとの仮説を立てている。
(写真:中村俊、香川、宇佐美、柴崎ら現役のトップクラス16選手も登場した)
[size=medium] ゲームつくる「ACE」と、ゲーム壊す「X」[/size]
チームのスタイルを形成する上で、adidasが必要と考えているのが、「フットボールクリエイター」だ。このフットボールクリエイターをadidasでは大きく2タイプに分けている。ひとつは90分間を通じて、ゲームエリア全体をコントロールし、支配する「エースプレーヤー」だ。ハメス・ロドリゲス、メスト・エジル、オスカルらが、その代表格にあたる。
もうひとつは相手のゲームプランを短い時間で狭いエリアで破壊し、ゴールを決める「ゲームチェンジャー」。このタイプにはガレス・ベイル、トーマス・ミュラー、ルイス・スアレスなどが当てはまるだろう。
今回、adidasでは従来のフットボールスパイクを一新し、この2タイプに沿った形で新商品を開発した。それが「ACE」と「X」である。「ACE」はゲームをつくるエースプレーヤー用、「X」は状況を打破するゲームチェンジャー用だ。
この「ACE」と「X」の一般発売に先駆け、6月30日には「adidas New Football Summit」と銘打った記念イベントが東京・両国国技館で開催された。イベント内では元日本代表監督の岡田武史氏、FC東京や甲府で指揮を執った城福浩氏、昨季限りで引退した元日本代表の中田浩二氏、W杯を2大会連続でレフェリーとして試合を裁いた西村雄一氏、そして二宮清純がステージに登壇。現代フットボールのトレンドと方向性について語り合った。
[size=medium] 「個か組織か」ではなく「個も組織も」[/size]
岡田氏は強いチームの共通項として「こういうサッカーをやるんだという意思統一があり、なおかつ、強い個がいる」と強調する。監督経験もある城福氏は「選手の良さを最大限に出しながら、いかにチームの共通意識を伸ばすためにエネルギーを効率よく避けるか」とマネジメントの重要性を指摘した。
(写真:「個か組織か、どちらか一方に偏っているチームは途中で落ちていく」と力説する岡田氏)
では、いかにして強い組織をつくっていけばよいのか。
「個の良いところをすべて集めて、ひとつのチームになっていくのが理想。だけど、そう簡単にはいかない」
チームづくりの難しさを語ったのが岡田氏だ。
「日本人って、右か左かってスッキリさせることが好き。たとえば放任主義か、管理主義かといった議論になりやすい。実際には、ある程度は放任しつつ、ある程度は管理する必要がある。個と組織の話でも、選手を生かしながらも当然、チームに合わせてもらわないといけないところがある。どちらかに割り切れるものじゃない」
優れたシェフは目の前にある食材で最高の料理をつくると言われる。最高の食材を集めたからといって、最高の料理が完成するとは限らない。食材=個の力をいかに最大限活用して、おいしい料理=組織をつくるか。ここが問われるというわけだ。
その上でゲームを支配する「ACE」を履くタイプに求められる人材を、岡田氏は次のように考えている。
「エースっていうのはつくる人。つくると言っても工作の“作”じゃなくて、創造の“創”です。相手の意表を突くような組み立てをして、最後に仕留める、またはゴールをする人がゴールしやすい状況をつくる。そういう人がエースなんじゃないですかね」
その一方で城福氏はこう語る。「パスを何度繋いでも、ポゼッションの位置が高くてもサッカーは勝てない。結局は相手よりも多くゴールを入れるという競技の中で、フィニッシャーの役割は本当に大きい」。すなわち「X」タイプの大切さを強調するのだ。シドニー五輪やワールドカップ日韓大会、ドイツ大会のピッチに立った中田氏も「決定的な仕事ができる選手がいるチームは苦しい時でも点が取れるので、より上に上がっていける」と、試合の流れを変えられる存在が勝てる組織には不可欠との考えだ。
(写真:「ゴール周りのところで際立つ選手は、それだけ貴重」と話す城福氏)
[size=medium] 求められる「守破離」の思想[/size]
こうした強烈な「個」を生み、育てるには、どうすればいいのか。
「自由なものの中から、自由なものってなかなか出ない」
こう前置きして、話し始めたのが岡田氏だ。
「驚くような発想というものは、型があるからこそ、それを破って出てくるんじゃないかと思っています。型と言うと何かに無理やりはめるように想像されるのであれば、共通認識と言いかえてもいいでしょう。誰がやっても、どのコーチがやっても、どの選手が出ても、この時はこうするといった意思統一です。しかし、それだけでは、絶対に試合に勝てない。これを破って離れるようにしていかない。16歳までに基本の習得を終え、16歳以降は自由に発想していく。これが日本に今、一番欠けているんじゃないでしょうか」
話を聞いていて、ふと浮かんだのが、歌舞伎界の名優・中村勘三郎さんが生前、よく口にしていた言葉だ。
「型を身につけてこその型破り。基本のできていない芸はただの型なし」
能の世阿弥が起源とされる「守破離」という言葉がある。芸や武道など伝統文化の基本は師から教わった型を忠実に「守」ることから始まる。だが、それだけでは発展しない。次の段階で型を「破」り、最終的には型から「離」れて自由になる。つまり新しい型を創造することで師の恩に報いるとの思想だ。この日本に古くから伝わる「守破離」の考え方こそ、フットボールクリエイターを生み出す元になるのではないか。
(写真:中田氏は「クリエイティブなエースのような選手は意外と、どのチームにもいる。それだけでは試合は決まらない」と言う)
世界の潮流を「だんだん戦術というものが浸透し、いろんなチームが組織化されて平均アベレージが上がってくる」ととらえる岡田氏も、違いが出せる「個」の出現に期待を寄せる。
「今度はその選手を抑えようと、おそらく世界のサッカーはマンツーマンじゃなくて、マンマーク気味の守備になってくると思います。すると、マンマークの守備を破るために今度は、他の選手の動きがものすごく重要になってくる。そういうことをこの先、繰り返していくんじゃないでしょうか。我々はそういうトレンドを先掴みしていきたいなと考えています」
強いチーム、そして強い個が、サッカーを進化させていることは間違いない。そして、その流れを打ち破る個やチームが登場することで、また新たなフットボールスタイルが現出するのだ。「ACE」と「X」を着用したフットボールクリエイターによる、たゆまざるイノベーションの行方をしかと見届けたい。
>>「X」の詳細はこちら
>>「ACE」の詳細はこちら
(写真:中村俊、香川、宇佐美、柴崎ら現役のトップクラス16選手も登場した)
[size=medium] ゲームつくる「ACE」と、ゲーム壊す「X」[/size]
チームのスタイルを形成する上で、adidasが必要と考えているのが、「フットボールクリエイター」だ。このフットボールクリエイターをadidasでは大きく2タイプに分けている。ひとつは90分間を通じて、ゲームエリア全体をコントロールし、支配する「エースプレーヤー」だ。ハメス・ロドリゲス、メスト・エジル、オスカルらが、その代表格にあたる。
もうひとつは相手のゲームプランを短い時間で狭いエリアで破壊し、ゴールを決める「ゲームチェンジャー」。このタイプにはガレス・ベイル、トーマス・ミュラー、ルイス・スアレスなどが当てはまるだろう。
今回、adidasでは従来のフットボールスパイクを一新し、この2タイプに沿った形で新商品を開発した。それが「ACE」と「X」である。「ACE」はゲームをつくるエースプレーヤー用、「X」は状況を打破するゲームチェンジャー用だ。
この「ACE」と「X」の一般発売に先駆け、6月30日には「adidas New Football Summit」と銘打った記念イベントが東京・両国国技館で開催された。イベント内では元日本代表監督の岡田武史氏、FC東京や甲府で指揮を執った城福浩氏、昨季限りで引退した元日本代表の中田浩二氏、W杯を2大会連続でレフェリーとして試合を裁いた西村雄一氏、そして二宮清純がステージに登壇。現代フットボールのトレンドと方向性について語り合った。
[size=medium] 「個か組織か」ではなく「個も組織も」[/size]
岡田氏は強いチームの共通項として「こういうサッカーをやるんだという意思統一があり、なおかつ、強い個がいる」と強調する。監督経験もある城福氏は「選手の良さを最大限に出しながら、いかにチームの共通意識を伸ばすためにエネルギーを効率よく避けるか」とマネジメントの重要性を指摘した。
(写真:「個か組織か、どちらか一方に偏っているチームは途中で落ちていく」と力説する岡田氏)
では、いかにして強い組織をつくっていけばよいのか。
「個の良いところをすべて集めて、ひとつのチームになっていくのが理想。だけど、そう簡単にはいかない」
チームづくりの難しさを語ったのが岡田氏だ。
「日本人って、右か左かってスッキリさせることが好き。たとえば放任主義か、管理主義かといった議論になりやすい。実際には、ある程度は放任しつつ、ある程度は管理する必要がある。個と組織の話でも、選手を生かしながらも当然、チームに合わせてもらわないといけないところがある。どちらかに割り切れるものじゃない」
優れたシェフは目の前にある食材で最高の料理をつくると言われる。最高の食材を集めたからといって、最高の料理が完成するとは限らない。食材=個の力をいかに最大限活用して、おいしい料理=組織をつくるか。ここが問われるというわけだ。
その上でゲームを支配する「ACE」を履くタイプに求められる人材を、岡田氏は次のように考えている。
「エースっていうのはつくる人。つくると言っても工作の“作”じゃなくて、創造の“創”です。相手の意表を突くような組み立てをして、最後に仕留める、またはゴールをする人がゴールしやすい状況をつくる。そういう人がエースなんじゃないですかね」
その一方で城福氏はこう語る。「パスを何度繋いでも、ポゼッションの位置が高くてもサッカーは勝てない。結局は相手よりも多くゴールを入れるという競技の中で、フィニッシャーの役割は本当に大きい」。すなわち「X」タイプの大切さを強調するのだ。シドニー五輪やワールドカップ日韓大会、ドイツ大会のピッチに立った中田氏も「決定的な仕事ができる選手がいるチームは苦しい時でも点が取れるので、より上に上がっていける」と、試合の流れを変えられる存在が勝てる組織には不可欠との考えだ。
(写真:「ゴール周りのところで際立つ選手は、それだけ貴重」と話す城福氏)
[size=medium] 求められる「守破離」の思想[/size]
こうした強烈な「個」を生み、育てるには、どうすればいいのか。
「自由なものの中から、自由なものってなかなか出ない」
こう前置きして、話し始めたのが岡田氏だ。
「驚くような発想というものは、型があるからこそ、それを破って出てくるんじゃないかと思っています。型と言うと何かに無理やりはめるように想像されるのであれば、共通認識と言いかえてもいいでしょう。誰がやっても、どのコーチがやっても、どの選手が出ても、この時はこうするといった意思統一です。しかし、それだけでは、絶対に試合に勝てない。これを破って離れるようにしていかない。16歳までに基本の習得を終え、16歳以降は自由に発想していく。これが日本に今、一番欠けているんじゃないでしょうか」
話を聞いていて、ふと浮かんだのが、歌舞伎界の名優・中村勘三郎さんが生前、よく口にしていた言葉だ。
「型を身につけてこその型破り。基本のできていない芸はただの型なし」
能の世阿弥が起源とされる「守破離」という言葉がある。芸や武道など伝統文化の基本は師から教わった型を忠実に「守」ることから始まる。だが、それだけでは発展しない。次の段階で型を「破」り、最終的には型から「離」れて自由になる。つまり新しい型を創造することで師の恩に報いるとの思想だ。この日本に古くから伝わる「守破離」の考え方こそ、フットボールクリエイターを生み出す元になるのではないか。
(写真:中田氏は「クリエイティブなエースのような選手は意外と、どのチームにもいる。それだけでは試合は決まらない」と言う)
世界の潮流を「だんだん戦術というものが浸透し、いろんなチームが組織化されて平均アベレージが上がってくる」ととらえる岡田氏も、違いが出せる「個」の出現に期待を寄せる。
「今度はその選手を抑えようと、おそらく世界のサッカーはマンツーマンじゃなくて、マンマーク気味の守備になってくると思います。すると、マンマークの守備を破るために今度は、他の選手の動きがものすごく重要になってくる。そういうことをこの先、繰り返していくんじゃないでしょうか。我々はそういうトレンドを先掴みしていきたいなと考えています」
強いチーム、そして強い個が、サッカーを進化させていることは間違いない。そして、その流れを打ち破る個やチームが登場することで、また新たなフットボールスタイルが現出するのだ。「ACE」と「X」を着用したフットボールクリエイターによる、たゆまざるイノベーションの行方をしかと見届けたい。
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