国際陸上競技連盟(IAAF)が主催する最高峰のリーグ戦「IAAFダイヤモンドリーグ」が今年も熱戦を繰り広げている。ダイヤモンドリーグは5月から9月にかけて、年間14大会(15戦)を開催、1大会につき16種目が行われる。既に5月のドーハ大会を皮切りに、7戦が終了した。後半戦のスタートとなるのが、第8戦パリ大会(5日)だ。

 勢いあるベテラン、ガトリン

 このパリ大会で当初、注目されたのが、男子100メートル&200メートルの世界記録保持者ウサイン・ボルト(ジャマイカ)の走りだった。ボルトはその爆発的なスプリント力から、“ライトニングボルト”の異名をとる。昨シーズンはケガのため、ダイヤモンドリーグを欠場し、1年間の休養を経て、表舞台に戻ってきた。

 しかし、今シーズンはまだ鳴りを潜めている。6月30日現在、ボルトは100メートルで9秒台、200メートルで19秒台を一度も出せていない。両種目の世界記録保持者としては物足りない数字である。100メートルのシーズンベストは10秒12。世界ランキング54位タイと低調だ。

 6月13日のニューヨーク大会では、200メートルに出場。20秒29で優勝したものの、目標としていた19秒台には届かなかった。25日のジャマイカ選手権は欠場したが、今は調整段階に過ぎない。本人は「今は万全な状態への梯子を上がっている途中だ」と、周囲の心配の声にも慌ててはいない。

 ボルトは2017年の世界選手権ロンドン大会を最後に現役引退を明言している。世界選手権では獲得した金メダルは、男子のカール・ルイス、マイケル・ジョンソン、女子のアリソン・フェリックス(いずれも米国)に並ぶ最多タイの通算8個。オリンピックでは史上初の2大会連続100&200メートルの2冠を達成するなど、走る度に金字塔を打ち立てている。その雄姿を見られる日々は限られてきた。今後は来月に開幕する世界選手権北京大会、そして来年のリオデジャネイロ五輪に向け、徐々にペースを上げてくるであろう。

 と、この原稿を執筆した直後、残念なニュースが入ってきた。ボルトが左足の故障により、パリ大会とローザンヌ大会(10日)の欠場を発表したのだ。「現状では100%の走りができない」。ボルトはそうコメントしている。

“人類最速の男”の走りが見られない点では楽しみがひとつ減ってしまったが、ダイヤモンドリーグの見どころは他にもある。今シーズン、好調が目立つのがボルトのライバル、ジャスティン・ガトリン(米国)だ。04年のアテネオリンピック、05年世界選手権ヘルシンキ大会の金メダリストである。

 33歳のベテランだが、今シーズンはドーハとローマの2大会の100メートルで優勝。ダイヤモンドリーグのポイントランキングでも単独トップに立つ。ドーハでの9秒74は今シーズン世界最高記録でもある。先月28日の全米選手権では200メートルで優勝。19秒57をマークし、こちらも今シーズン世界最高となるなど、最も勢いのあるスプリンターと言っていいだろう。

 最高峰の舞台に挑戦する日本人に期待

 10年にスタートしたダイヤモンドリーグは、男女16種目ずつ計32種目それぞれのツアーチャンピオンを決める大会だ。各大会3位までの選手にポイントが付与され、全15戦終了後に各種目の最多ポイント獲得選手がツアーチャンピオンとなる。

 アテネ五輪男子ハンマー投げ金メダリストで、番組スペシャルサポーターを務める室伏広治はダイヤモンドリーグを「常にオリンピックや世界選手権決勝をやっているような雰囲気」と評する。前身のゴールデンリーグ出場経験を持ち、男子100メートル日本記録保持者の伊東浩司は「アジア記録を持っていても、なかなか走らせてもらえる試合ではない。向こうから、お声がかかるなんて夢のような話」と解説する。

 ニューヨーク大会に出場予定だった男子短距離のホープ桐生祥秀(東洋大)が右太もも裏の肉離れのため、出場をキャンセルしたのは残念だが、男子走り高跳びの戸邉直人(つくばTP)は世界に近付きつつある跳躍を見せている。戸邉は5月に行われた第2戦上海大会で、2メートル29を跳び、4位に入った。表彰台には届かなかったものの、上には世界歴代2位の記録を持つムタズ・エサ・バルシム(カタール)や同3位のボーダン・ボルダレンコ(ウクライナ)がいたことを考えれば善戦と言えるだろう。世界選手権北京大会の日本代表に選ばれた戸邉は、パリ大会への出場が決まった。23歳の若きハイジャンパーには、9年ぶりの日本記録更新(2メートル33)を見せてほしい。

 注目はガトリン、日本人選手だけにとどまらない。ダイヤモンドリーグには男子400メートルのキラニ・ジェームス(グレナダ)、男子棒高跳びのルノー・ラビレニ(フランス)らオリンピック、世界選手権のメダリストや、世界記録保持者たちが多数、登場する。この最高峰の舞台を、スカパー!では日テレジータスで生中継を含む徹底放送中だ。画面を通じて、世界トップレベルのスピード、テクニック、パワーに括目したい。

 人類の限界を超える、その瞬間を目撃しよう!
 新たな世界記録は生まれるのか?
 ダイヤモンドリーグを全戦独占放送



【今後の生中継予定】(放送はすべて日テレジータス

第9戦 ローザンヌ大会(スイス)
7月10日(金) 2:45〜5:45

第10戦 モナコ大会
7月18日(土) 2:45〜5:45

第11、12戦 ロンドン大会(英国)
7月25日(土) 3:45〜6:45
7月25日(土) 22:45〜1:45

第13戦 ストックホルム大会(スウェーデン)
7月31日(金) 2:45〜5:45

 その他、再放送も充実。

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