昨季からは一歩前進だ。
 1部リーグで戦う伊予銀行女子ソフトボール部はシーズン前半を終え、3勝10敗の10位。昨季の同時期が2勝11敗だったことを考えれば、確かな成長を示す結果を残している。とはいえ、2部降格、入れ替え戦の対象となる下位2チーム(11位、12位)に転落する危険性から抜け出せているわけではない。9月からスタートするシーズン後半戦が彼女たちにとって本当の戦いになる。

「バッティングは、この冬、鍛えた成果が出ていますね。山崎あずさ、矢野輝美、加藤文恵の中軸は確実性が出てきました。上位打線の片岡あいもいいところで打てるようになってきました」
 昨季まで指揮を執った酒井秀和総監督は昨年までとの違いを評価する。個人成績をみても山崎、片岡、金澤美優が打率3割超。昨季はひとりも3割バッターがいなかっただけに、個々のレベルアップが数字となって表れている。

 開幕のSGホールディングスグループ戦では2ケタ得点で快勝したほか、勝利した試合は5点以上をあげている。昨季と比較して打線は活発になってきた。一方で敗れた試合は2点以下と攻撃が不発に終わっているのが現実だ。

「スコアシートをまとめてみると、他チームと比較してチャンスがつくれていないわけではない。でも、ここぞの一本が打てない。その点は力不足です」
 コーチを兼任し、中軸を打つ矢野(写真)は課題を明確に指摘する。北京五輪金メダルの立役者、上野由岐子相手に中盤まで0−0が続いたビックカメラ高崎戦、2年目の右腕・庄司奈々が1失点と好投したHonda戦など、伊予銀行は強豪に対しても接戦を演じてきた。

 しかし、最終的には勝ち星をあげられなかった。打線がつながらず、ホームベースが遠く、大事な場面での勝負強さが上位との差になっている。矢野は「プレッシャーのかかる場面で打てていない。これは技術ではなく心構えの問題だと感じています。練習からいかに緊張感を持ってできるか。それが実際の試合にも出てくる」と語る。

 練習から実戦をいかに想定して取り組むか。秋元理紗監督は、選手たちへ意識改革を促している。求めるは「スピード」だ。同じような反復が続く日々のトレーニングから、スピード感を追求する。機敏な行動、迅速な取り組みが、試合での走攻守におけるスピードにもつながってくるとの考えだ。

「チームの新しい型をつくる」
 それがシーズン前半を終えてのテーマである。秋元監督はU24の日本代表コーチとして7月中旬まで北米遠征に帯同し、チームを離れている。それだけに個々人が志を高くしてレベルアップに励めるかどうかで、後期の戦いは大きく変わってくる。

「残り試合は順位も絡んでくるので、毎節、ターゲットとなるチームを定めて、そこに確実に勝てるようにしていくつもりです。対戦相手のデータは昨年や前半戦のものが出てきていますから、映像を見て自分たちでしっかり研究していきたい」
 
 矢野は選手を代表して後半戦への意気込みを口にする。勝負強さを身につけ、台風の目に――。伊予銀行の選手たちはシーズン再開までに一回りも二回りも大きくなって他チームを驚かせる。




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