7月18日と19日に実施された「紀の国わかやま国体」の四国ブロック予選で、愛媛県は成年男女とも1位で本戦出場を決めた。男子は伊予銀行の佐野絋一と飯野翔太がペアを組み、女子は同行の長谷川茉美と、済美高出身の西田奈生(慶大)のチームで4県総当たりのリーグ戦を、それぞれ3連勝で制した。

 国体県予選を兼ねた5月の全日本選手権県予選では男子は佐野が1位、飯野は3位。女子は長谷川が1位、西田は2位だった。順位通りの編成となった女子とは異なり、男子で3位の飯野を代表に入れた意図はどこにあったのか。

「ダブルス勝負になることを想定した時に、佐野、飯野の組み合わせがベストだと考えました。国体でペアを組んだ経験はありませんが、他の大会での実績は十分で、安定感があります」
 伊予銀行の秀島達哉監督は理由をそう話す。

 国体は各選手のシングルスと、ダブルスで勝敗を決する。シングルスで1勝1敗になった場合、ダブルスが重要になるというわけだ。今回の四国予選でも、香川戦では佐野がシングルスを落とし、勝負はダブルスにもつれ込んだ。そのダブルスを佐野、飯野のペアで8−4で制し、香川を下している。和歌山国体ではダブルスで雌雄を決する機会がより増えると秀島監督はみている。

 また国体は通常の大会にはない難しさがある。限られた日程で多くの試合を消化するため、8ゲームプロセット方式が採用されているのだ。「8ゲームプロセットで、かつ、セミアドバンテージ方式のショートゲームなので、ゲームの出だしを失うと相手に流れが行ってしまう。実力が上でも足元をすくわれるリスクの高いシステムです。試合の入り方がより重要になります」と秀島監督は説明する。勝ち上がるには対戦相手の分析はもちろん、ゲームに向けた綿密な準備が不可欠である。

「女子は長谷川と西田のコンビが予想以上に良く、ダブルスでは本番での手応えをつかんだでしょう。おそらく和歌山国体では西田のランキングが低いため、愛媛はノーシードとなる見込みで、厳しい組み合わせが予想されます。シードされたチームを破る上でも、出だしでつまづかない対策が必要です」
 男女とも立ちあがりが肝心。そう秀島監督はにらんでいる。

 このほど、女子には強力な助っ人が仲間入りした。グランドスラム出場経験を持つプロ選手の波形純理と6月1日付で契約を交わしたのだ。男子の片山翔に続き、プロ選手の所属は伊予銀行で2人目となる。

「2年後のえひめ国体で勝つために長谷川のパートナーを探していましたが、適任となる選手がなかなか見つかりませんでした。そんな時、波形が新しい所属先を探しているとの話を耳にしたんです。波形は長谷川とは早稲田大学の先輩後輩にあたり、練習も何度か一緒にやったことがある。こちらの考えや熱意を伝えたところ、我々の考え方を理解し、協力してもらえることとなりました」
 秀島監督は契約に至った経緯を明かす。

「実績はもちろん、人としても本当にしっかりしている選手です。銀行のイメージにぴったりだと思いました。伊予銀行としては2年後の国体に向けて、地域を盛り上げたいという思いがあります。本来なら、海外を転戦している彼女は、国体に出場するクラスの選手ではないのかもしれません。それでも、愛媛のために協力しようという思いが伝わってきました」
 
 シーズン中のため、愛媛を訪れたのは、まだ数度だが、来季からは拠点を松山に移し、活動予定だ。プロ選手の加入はチームにとって、大きな効果が見込める。男子では先に契約を結んだ片山と既に何度か練習を重ね、他の選手が意識面も含めて刺激を受けているという。既存の選手とプロ選手が融合して全体の底上げを――。その目論見は徐々にかたちになりつつある。

「チームとしては9月末の国体と、12月にスタートする日本リーグ。個人としては11月の全日本選手権。ここで好成績を収めることを目標に置いています」
 秀島監督の指導の下、この夏、選手たちは愛媛でトレーニングを行いつつ、月2回ペースで大会に参加し、腕を磨いている。佐野と長谷川は8月には韓国へ遠征。国際大会でさらなるレベルアップを図る。実りの秋へ、伊予銀行テニス部は夏場に力をしっかりと蓄える。




◎バックナンバーはこちらから