12月1日、J1リーグの最終節(第34節)が行われ、ホームで清水エスパルスを破った鹿島アントラーズが勝ち点を72に伸ばし、逆転で6年ぶり5回目のリーグ優勝を果たした。Jクラブで初の国内10個目のタイトル獲得。最下位の横浜FCにアウェーで敗れた浦和レッズは勝ち点70で連覇を逃した。
▼鹿島OBの大野俊三氏が祝福のコメントを発表
 鹿島が奇跡の逆転Vを成し遂げた。
 前半20分、FWマルキーニョスが倒されて得たPKをMF小笠原が決めて、貴重な先制ゴールを奪う。後半3分には、相手DFのクリアボールを拾ったMF本山がミドルシュートを突き刺して、リードを広げた。

 後半13分には、FW田代のパスを受けたマルキーニョスが右足で駄目押しの3点目。守ってはDF岩政、GK曽ヶ端を中心とした守備が16本ものシュートを浴びながらも、完封した。
 第33節の直接対決を含めて、怒涛の9連勝。一時は10ポイントの差があった浦和を勝ち点で上回り、最終節での逆転優勝を決めた。そして、記念すべき10冠を達成した。

 当HPで『ザゲイロの眼』を連載中のクラブOB大野俊三氏がコメントを寄せてくれた。
「鹿島アントラーズ、本当におめでとう! リーグの終盤、アジア王者の浦和と競り合いながら、自分たちの攻撃的なサッカーを見失うことがありませんでした。それが9連勝という結果につながったと思います。
 序盤は苦しい時期もありましたね。今季から就任したオズワルド監督がブラジル人に少し執着しすぎていた。不調のMFダニーロを中盤で使い続け、コミュニケーションが必要不可欠なDFラインは、言葉が通じないDFファボンが入ることで混乱していた。後半戦に入ってようやく、日本人を中心にまとまった印象があります。
 もちろん全員がMVPですが、一人だけ挙げるとすれば、MF野沢ですね。イタリアに行った小笠原がいない中盤で柱となって、序盤のチームを支えてきた。負けてもおかしくはないゲームを引き分けで抑えることができたのも彼の力が大きかったでしょう。小笠原が帰ってくると、プレッシャーも軽減され、より生き生きとプレーするようになりましたね。第33節では、浦和を相手にアウェーで値千金の決勝ゴールを叩き出した。このゴールは本当に大きかったと思います。
 OBとして10冠を達成してくれたことは実に嬉しいこと。つまずいてしまった年もありましたが、よくやってくれました。昔の強かった頃の鹿島を思い出しましたよ。この優勝で、サッカーから遠ざかっていた鹿島のファンも戻ってくることでしょう。最後にもう一度、鹿島アントラーズおめでとう!」

<浦和、横浜FCにまさかの完封負け>

 浦和にとっては悪夢のような結末だった。

 勝てば無条件で優勝が決まる一戦。守備の大黒柱DF闘莉王を出場停止で欠くが、対する横浜FCはここ20試合白星がない。24日の鹿島との直接対決、28日の天皇杯・愛媛FC戦では不覚をとったが、勝って連覇に花を添えるはずだった。

 しかし、序盤から、アグレッシブな横浜FCに押された。左サイドをMFカタタウに何度もえぐられ、ピンチを招く。まさかのシーンが訪れたのは前半17分。右サイドから三浦知にGKとディフェンスラインの間に低いクロスを放り込まれ、最後はMF根占に押し込まれた。痛恨の先制ゴールを許してしまう。

 その後もワシントン、ポンテが横浜FCの執拗なプレスにあい、フィニッシュまで持ち込めない。逆に、左右サイドを崩され、あやうく2点目を奪われそうになる場面も。
 後半、DFネネに代えてFW田中達を投入して、右サイドにドリブラーのFW永井を置く攻撃的布陣で勝負に出た。だが、幾多のチャンスを生かせず、最後まで横浜FCの青い壁に崩すことはできなかった。

 まさかの完封負け、土壇場でのリーグV逸に監督、選手の表情はうつろだった。オジェック監督は「ご覧になったのが、我々の状況です。(選手は)疲労しきっていた。今までメディアの皆さんには『疲れていない』と言い張ってきたが、体力、メンタルはもう限界だった。もうひとつ、AFCチャンピオンズリーグ優勝を達成したことで、集中力が落ちてしまった」と明かした。MF平川は「この試合ですべてが駄目になったわけじゃない。この数試合、点がとれてなかったし、流れがよくなかった」と下を向いた。

 試合後の挨拶では、興奮したサポーターからペットボトルや発炎筒が選手に向けて投げ入れられるシーンも。MF長谷部は「サポーターの皆さんには何を言っても示しがつかない」と話し、MF鈴木は「僕ら以上にサポーターが悔しい思いをしたことを忘れてはいけない」と語った。  
 12月7日に開幕するクラブW杯への影響は計り知れない。鈴木は「今は残念な気持ちでいっぱいで、すぐに切り替えるということは難しい。今日の敗戦、優勝を逃したことは本当に大きい」と沈痛な表情だった。

<広島が入れ替え戦へ>

 今季のJリーグの全日程が終了した。優勝は鹿島、2位浦和、3位はG大阪で、17位甲府と18位横浜FCがJ2へ降格。16位広島がJ2で3位の京都との入れ替え戦(12月5、8日)に回る。得点王には川崎のFWジュニーニョ(22ゴール)が輝いた。
 また、J2から札幌(1位)と東京V(2位)が来季、J1へ昇格する。

横浜FCが5月以来の白星
◇12月1日、日産ス
横浜FC 1−0 浦和レッズ
【得点】
[横浜] 根占真伍(17分)

鹿島が9連勝で奇跡の逆転V!
◇12月1日、カシマ
鹿島アントラーズ 3−0 清水エスパルス
【得点】
[鹿島] 小笠原満男(20分)、本山雅志(48分)、マルキーニョス(58分)

大宮が終了間際に追いつく
◇12月1日、NACK5
大宮アルディージャ 1−1 川崎フロンターレ
【得点】
[大宮] 斉藤雅人(89分)
[川崎] 鄭大世(21分)

名古屋が最終戦で快勝
◇12月1日、フクアリ
ジェフ千葉 0−2 名古屋グランパス
【得点】
[名古屋] 小川佳純(63分)、玉田圭司(67分)

ルーカスのPKが決勝ゴール
◇12月1日、小瀬
ヴァンフォーレ甲府 0−1 FC東京
【得点】
[東京] ルーカス(87分)

大分が敵地で完封勝ち
◇12月1日、東北電ス
アルビレックス新潟 0−2 大分トリニータ
【得点】
[大分] 森重真人(9分)、鈴木慎吾(65分)

磐田が4発でラストを飾る
◇12月1日、ヤマハ
ジュビロ磐田 4−0 柏レイソル
【得点】
[磐田] 前田遼一(40分)、林丈統(46分)、上田康太(61分)、犬塚友輔(75分)

両者譲らず、スコアレスドロー
◇12月1日、ホムスタ
ヴィッセル神戸 0−0 横浜F・マリノス

広島、入れ替え戦が決定
◇12月1日、広島ビ
サンフレッチェ広島 2−2 ガンバ大阪
【得点】
[広島] 佐藤寿人(7分)、槙野智章(89分)
[大阪] バレー(27分)、二川孝広(80分)