11月3日、2007ナビスコカップの決勝が東京・国立競技場で行われ、ガンバ大阪が川崎フロンターレを1−0で破り、初優勝を果たした。スコアレスで迎えた後半10分、右クロスに合わせたDF安田が決勝点を挙げた。MVPには安田が選ばれ、前日に発表されたニューヒーロー賞と合わせてダブル受賞となった。

◇11月3日、国立競技場
川崎フロンターレ 0−1 ガンバ大阪
【得点】
[大阪] 安田理大(55分)
「やっと(ナビスコ杯を)とれた。選手たちは90分間、よく戦ってくれた。本当に満足している」
 試合後、G大阪の西野朗監督は充実した表情でそう語った。2005年大会の決勝ではPK戦の末に千葉に苦杯をなめた。その悔しい経験を乗り越えての大会初優勝。それだけに喜びも大きかった。

 決勝はJ屈指の攻撃的なチーム同士の顔合わせとなった。G大阪は現在Jリーグ最多の65得点を誇り、川崎もそれに次ぐ56ゴールを記録している。互いに勝てば初優勝。川崎がMFマギヌンを出場停止で欠く以外は、ともにベストの布陣で臨んだ。

「最初は明らかに主導権を握られた。ビルドアップが単調で、中盤のタメができていなかった」
 西野監督がそう話すように、前半は川崎がペースを握った。前半6分、PA右でFWジュニーニョがDFシジクレイをかわし、右足で強烈なシュートを放つ。その後も、川崎はセットプレーから度々G大阪のゴールを脅かした。対照的にG大阪はトップ下で先発したMF遠藤のボールタッチが少なく、リズムがつくれない。だが、川崎がチャンスを決めきれず、前半はスコアレスで折り返した。

 後半、G大阪が動く。「リスクはあると思ったが、思い切ってシステムを変えた」(西野監督)。右サイドバックのDF加地をセンターバックに置き、ボランチの橋本を右ウィングバックに回して、4バックから3バックへシフト。遠藤がポジションを一つ下げてボランチへ、安田が一つ上がって左ウィングバックに入った。遠藤のボールタッチを増やし、安田の攻撃力を生かすべく、「今までに試したことがなかった」(西野監督)という新システムで勝負に出た。

 その賭けが吉と出た。後半開始から攻勢のG大阪は10分、待望の先制ゴールを奪う。FWバレーのクロスがニアのMF二川を経由して、ファーサイドに流れる。そこに安田が待っていた。DFと競り合って、倒れこみながらも左足で押し込んだ。これがプロ入り初ゴール。弱冠19歳の安田が大舞台で大仕事をやってのけた。

 追い込まれた川崎は同点弾を狙うべく、3トップへシフト。だが、DF山口を中心にまとまったG大阪の壁を崩せない。「チャンスはつくれたが、ゴール前の精度を欠いた」(川崎の関塚隆監督)。そのまま、1−0で試合終了の笛。歓喜の瞬間、G大阪の選手やスタッフはピッチで喜びを分かち合った。

 試合後、敗れた川崎の関塚監督は「前半は先制点を奪うチャンスがあったが、決め切れなかった。それで後半にちょっとした隙を突かれ、逆に先制点を奪われてしまった。経験豊富なG大阪に試合をうまく運ばれてしまった」と悔しそうな表情を浮かべた。一方で「やるべきことはやったと思っている。選手にもそう伝えた。この悔しい思いをバネにしていく」と胸を張っていた。

 一方、優勝したG大阪の西野監督は「最初は川崎に圧倒されたが、選手はハーフタイムでよく切り替えてくれた。我々は超攻撃的と言われるが、今季はディフェンスにも手応えがあった。うまくコントロールしてくれた」と満足そうな表情。

 リーグ戦では首位の浦和に残り4試合で勝ち点7差と厳しい状況に置かれているが、「(この優勝が)チームに勢いをつけてくれる。前節で清水に敗れて、メディアにリーグ優勝は絶望的と書かれたが、僕はそうではないと思っている。諦めずに全てのタイトルを獲る」と逆転Vを力強く誓っていた。