24日から25日(現地時間)にかけ、08−09ヨーロッパチャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメントが開幕する。8試合のうち3試合が「イングランド・プレミアシップvs.イタリア・セリエA」となり、世界中のサッカーファンから大きな関心を集めている。果たして豪華な布陣を擁するプレミア勢が優位に立つのか、それとも近年沈黙を続けるカルチョの国の逆襲はあるのか。
 昨年12月19日、CL決勝トーナメントの組み合わせが発表された会場はどよめいた。トーナメント1回戦から極上のエンターテーメントが用意されたからだ。

 中でも最も注目を集めるのは「マンチェスター・ユナイテッドvs.インテル・ミラノ」。昨シーズンの欧州王者とスクデット保持クラブがいきなり顔を合わせる。両クラブを率いるのはアレックス・ファーガソンとジョゼ・モウリーニョ。世界を代表する知将2人の対決にも注目だ。

 現在の両クラブの状況はともに上り調子だ。マンUはプレミアリーグで2位リバプールに7点差をつけ首位を独走中でリーグ戦では10戦無敗。シーズン序盤は若干出遅れ気味だったが、昨年12月のクラブW杯優勝を境に完全に波に乗っている。故障気味だったウエイン・ルーニーも先週のブラックバーン戦でゴールを挙げ復活してきた。この試合では主力選手を数名温存する、いわゆるローテーションを使い、万全の態勢でインテル戦に臨む。

 対するインテルは、先々週に行われたミラノダービーでACミランを2−1で撃破している。リーグ戦も2位ユベントスに9点差をつけ、現在首位。シーズン当初からモウリーニョが目指すサッカーが実現できず苦戦を強いられてきたが、ここ数試合は2トップの下にスタンコビッチを配置することでシステムが整ってきた。また、ズラタン・イブラヒモビッチと組むFWが固定できずにいたが、アドリアーノが復調気配。監督との確執が報じられてきたアドリアーノだが、自身の調子とクラブの状態が上ってきたことで信頼関係にも修復がみられてきたようだ。

 組織面やチームの成熟度ではマンUに分がある。しかし、対モウリーニョとなると、マンUにとって不気味なデータがある。モウリーニョが率いたチェルシーとの対戦成績は1勝5敗4分と勝率は1割。チームが変わっているとはいえ、ここまで分が悪いとベンチに座るモウリーニョの姿を目にするだけでも嫌なマンUの選手がいるだろう。また、モウリーニョのホームゲームでの勝負強さは有名だ。チェルシーの監督時代には3年半の間、ホームで無敗を誇った。第1戦の行われるミラノで、モウリーニョが強烈な先制パンチを加えることができれば、連覇を目指す赤い悪魔もどっしりと構えてはいられなくなる。

 プレミアvs.セリエAの構図は「チェルシーvs.ユベントス」「アーセナルvs.ローマ」でも繰り広げられる。チェルシーは先日、ルイス・フェリペ・スコラーリが解任されたばかりだが、後任のフース・ヒディンクが先週末の試合から指揮を執り、アウェーのアストンビラ戦を0−1で勝利し上々のスタートを切った。クラブはこの勝利で3位に浮上。多くのタレントを抱えるクラブだけに、ヒディンクの手にかかればチームを立て直すのに時間はかからないだろう。一方のユベントスは、よくも悪くもアレクサンドロ・デルピエロ頼み。ユーベを決勝トーナメントまで押し上げた彼の活躍がなければ、過去5年で4度CLベスト4に進出しているブルーズを撃破するのは難しい。

 アーセナルは、今季プレミアで5位と沈んでいる。シーズン序盤から故障者が多く、なかなか波に乗れずにここまできた。特に中盤のキープレーヤーであるセスク・ファブレガスの長期離脱は痛かった。しかし、苦しい台所事情のときにこそ、監督のアーセン・ベンゲルは力を発揮する。9年連続で決勝トーナメントに進出しているクラブの底力と監督の手腕が試される。一方のローマは、ユベントス同様、エースであるトッティの存在なくして躍進は期待できない。故障明けである絶対的エースの出来がチームの浮沈の鍵を握る。今年の決勝の舞台はローマ・スタディオオリンピコ。地元開催のファイナルへ、ローマ選手たちのモチベーションは低くない。

 その他の試合でも、「レアル・マドリッドvs.リバプール」や「アトレティコ・マドリッドvs.ポルト」など激戦が予想されるカードが組まれている。

 比較的組しやすい相手となったビッグクラブはバルセロナとバイエルン・ミュンヘンだ。前者はリヨンと、後者はスポルティング・リスボンと対戦する。

 バルセロナは先週の試合、ホームでリーグ最下位エスパニョールに敗れるという失態を演じている。審判の不可解な判定から選手が退場するなど不運な面もあったが、リーガ・エスパニョーラの首位チームがホームで最下位に負けるのは珍事であることに変わりはない。リーグでは首位を独走しているだけに、この敗戦は実質的には大きな痛手にならない。大事な決勝トーナメントを前に足元をすくわれたことは、気を引き締めなおすという点で逆にプラスに働くだろう。今季CL優勝候補の筆頭クラブがどのような戦いぶりを見せるか、注目だ。

<欧州CL決勝トーナメント1回戦>(左からホーム、アウェー)
◇2月24日(火)
アーセナル(イングランド) × ローマ(イタリア)
アトレティコ・マドリッド(スペイン) × ポルト(ポルトガル)
リヨン(フランス) × バルセロナ(スペイン)
インテル・ミラノ(イタリア) × マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)

◇2月25日(水)
チェルシー(イングランド) × ユベントス(イタリア)
スポルティング・リスボン(ポルトガル) × バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)
ビジャレアル(スペイン) × パナシナイコス(ギリシャ)
レアル・マドリッド(スペイン) × リバプール(イングランド)