◇12月1日 愛媛県総合運動公園陸上競技場 5,314人
 愛媛FC 2−1 湘南ベルマーレ
【得点】
[愛媛] 近藤(79分)、赤井(80分)
[湘南] エドワルド・マルケス(36分)

▼GK羽田選手、引退セレモニーでサポーターに別れ
<「愛媛で幸せな生活を送れた」 羽田選手がサポーターに別れ>

 今季限りでの現役引退を表明したGK羽田敬介選手が、ホーム最終戦となったこの日、サポーターに最後の挨拶を行い、12年間のプロ生活に幕を下ろした。

「すべてをぶつけたい」
 最終戦に向けて、そう意気込みを語っていた羽田。残念ながらゴールマウスの前で勇姿を見せることはできなかったが、試合前にサイン会を実施するとあっという間に長蛇の列ができた。「こんなにサインしたのは初めて」。羽田はサインペンで手を真っ黒にしながら、笑顔でサポーターのひとりひとりとサインや握手、記念撮影に応じていた。

 ゴール前で大声を出して選手を鼓舞し、最後の砦としてチームのピンチを幾度となく救ってきた愛媛の守護神。その姿が乗り移ったかのように選手たちも奮闘する。

 前半に1点を失う苦しい展開をはねかえし、後半34分、MF赤井秀一のコーナーキックをDF近藤徹志がヘッドで合わせて同点。直後にも羽田の南宇和時代の先輩にあたるFW大木勉と、FW田中俊也の2トップが前線にボールを押し上げ、DFラインが下がったところで、赤井がミドルシュートを放つ。これが見事にゴールに突き刺さり、愛媛は逆転に成功した。

 後半37分には、相手にPKを与える大ピンチを迎えるが、J昇格後、正GKとして愛媛のゴールマウスを守ってきた川北裕介が立ちふさがる。
「(羽田選手は)存在感があった。なんとしても勝って送り出したかった」
 その思いがプレーに表れた。相手FWのゴール右へのキックにすばやく反応し、倒れこみながらボールをはじく。瞬時に起き上がり、こぼれ球をしっかり両手でセーブした。

 このビッグプレーが決め手となり、愛媛は勝利で羽田の引退に花を添えた。「逆転勝利できるチームにならないと、強くならない」。かねてから、そうチームを叱咤してきた羽田に応えるような、愛媛にとって今季初めての逆転勝ちだった。

 試合後、ファンの前で挨拶を行った羽田は「愛媛FCのユニホームを着せてくれて、幸せな生活を送ることができました」と、選手、クラブ関係者、これまで愛媛FCに携わってきたOBたちの名前をあげ、感謝の気持ちを表明した。

「ここに残っている選手たちが、必ずJ1にチームを押し上げてくれると思う。これからは1サポーターとして応援したい。12年間、ありがとうございました」
 別れの言葉を締めくくると、愛媛のみならず、湘南サポーターからも「ケイスケコール」「羽田コール」が巻き起こった。

 その後は選手たちと場内を一周し、別れを惜しむかのように観客のひとりひとりと握手。JFL時代からゴール裏で熱い声援を送り続けたサポーターたちの前にくると、さすがにこらえていたものがあふれ出した。「J昇格を決めた試合は、いつも(脳裡に)浮かんでくる。自然と涙が出てきた」。最後は全選手から胴上げされ、ポンジュースのシャワーを浴びるおまけつきで、ピッチを後にした。

「ホッとした。本当に幸せな気持ち」
 セレモニーを終えた羽田は晴れやかだった。J1のトップレベルでプレーする道を自ら断ち、ふるさとのために貢献した背番号1。愛媛サポーターに勝つ喜びを与えてくれた。そして選手たちには勝つ厳しさを教えてくれた。「ケイスケ、愛媛にJをありがとう」。スタンドの横断幕が冬の太陽に照らされ、ひときわ輝いていた。

<両チームメンバー>
愛媛FC
GK 35 川北裕介
DF 15 森脇良太 
   10 金守智哉 → 13 関根永悟(75分)
    3 近藤徹志        
    5 星野真悟      
MF 30 宮原裕司
   27 青野大介
   17 大山俊輔 
   18 江後賢一 → 16 赤井秀一(65分)
FW 11 田中俊也
   26 内村圭宏 → 20 大木勉(74分)

湘南ベルマーレ
GK 25 金永基
DF 30 山口貴弘 → FW 20 原竜太(82分) 
    3 ジャーン
    2 斉藤俊秀
   21 尾亦弘友希
MF 13 鈴木将太 → 14 永里源気(60分)
    6 田村雄三 → DF 22 松本昴聡(67分)
    8 坂本紘司
   24 加藤望
FW  7 エドワルド・マルケス 
   11 石原直樹


<3選手と契約更新せず>

 愛媛FCはシーズン終了にあたり、MF新井翔太、MF中村豪、GK阿部一樹の3選手と来季の契約を結ばないことを通告した。

 新井は今季、浦和レッズから移籍。ボランチのMF井上秀人がケガで戦列を離れた際などに、先発出場していた。9月2日の札幌戦ではJ初ゴールをあげている。しかし、青野大介、宮原裕司でボランチが固定されて以降はあまり出場機会を得られなかった。

 中村は今季、ジュビロ磐田から移籍。徳島との開幕戦で途中出場ながら愛媛の今季初ゴールをたたき出した。その後はスタメン出場がつづいたが、開幕1カ月を経過した頃から、ベンチ入りメンバーすら入れない状況が続いていた。

 阿部はユースからトップチームに昇格。羽田、川北のベテランGKの後を担う若手として期待されていた。ところが、今季は広島より佐藤昭大が移籍し、愛媛FCの登録全選手の中で唯一、出場がなかった。


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