WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)1次ラウンドA組の最終戦は、韓国代表が日本代表を1−0で下し、日本時間16日から米国・サンディエゴでスタートする2次ラウンドへ1位通過を決めた。日本は4人の韓国投手陣の前に散発の6安打に封じられた。

 岩隈、6回途中1失点も報われず
韓国代表     1 = 000100000
日本代表     0 = 000000000 
(韓)○奉重根−鄭現旭−柳賢振−S林昌勇
(日)●岩隈−杉内−馬原−ダルビッシュ−山口−藤川
 日本は2位通過となり、2次ラウンドの初戦はB組の1位チームと顔を合わせる。B組ではキューバの1位通過が有力なため、サムライジャパンにとっては連覇に向けて厳しい道のりとなった。
 日本と韓国は、いずれも同日深夜のチャーター便で米国に向けて出発。メジャーリーグの球団と練習試合を行って2次ラウンドに備える。

 2日前、屈辱の14失点を喫した韓国投手陣が意地をみせた。先発の奉重根をはじめ、4人の投手が日本打線を封じ込めた。

「登板間隔が空いている投手もいる。明日は投手をなるべく使いたい」。前日の試合後、韓国の金寅植監督はこう語っていた。日本戦を2次ラウンドに向けた調整の場ととらえているようにも聞こえた。ところが、起用した投手はすべて、この東京ラウンドで登板済の選手ばかり。緊迫した試合展開もあっただろうが、先発左腕の柳賢振までつぎこんで勝ちにきた。

 明暗を分けたのは四球だった。日本投手陣が延べ7人の打者を歩かせた一方で、韓国投手陣は四球ゼロ。決め球を変化球にして、きわどいコースを見極められた日本バッテリーに対し、韓国は直球でどんどん押して空振りを狙った。「相手のほうが一枚上だった。なかなか打たせてもらえなかった」。4打席ノーヒットに終わった稲葉はサバサバした表情で語った。「高低をうまく使っていた。苦手としているコースをしっかり分析していた」。伊東勤総合コーチも脱帽するしかなかった。

 岩隈久志は完璧な立ち上がりだった。ストレート、フォーク、ツーシームがさえ、3イニングをパーフェクト。一方の奉重根も速球と緩い変化球のコンビネーションで、日本の打者に的を絞らせない。「(7日にKOされた金)広鉉は(カウント球)の直球を打たれた。最初はチェンジアップなどで緩急をつけて、決め球にストレートを使った」。4回には中島裕之のヒットにボークも重なり、無死2塁。青木宣親のファーストゴロで1死3塁となり、2試合連続本塁打の4番・村田修一を迎えた場面では全球ストレート勝負を挑んだ。カウント2−1からの5球目、村田はインハイの直球につまり、力ないファーストファールフライに倒れた。

 緊迫した投手戦の中、先に失点したのは岩隈だった。先頭の李鍾旭に四球を出して、リズムを乱す。続く鄭根宇に初ヒットを許して、1、2塁。3番・金賢洙はフォークで空振り三振に打ち取ったものの、4番・金泰均に投じた内に食い込むツーシームがやや甘く入った。「内角のボールを狙っていた」。強振すると、打球はサード村田修一の左脇を抜けるタイムリーとなった。「ゴロを打たせたのは予定通り。ただ、内を突くならサードをもう一歩、ライン際に寄らせておくべきだった。僕の配慮が足りなかった」。リードする城島健司も悔やむ1球が、試合を決める1球となった。

 ただ、それ以外は韓国はまずい攻めが続いた。金泰均の先制タイムリーの際には、1塁走者の鄭根宇が3塁を狙ってタッチアウト。なおも2死1、2塁のチャンスも、2塁走者の金泰均が飛び出して、城島の牽制に刺された。続く5回は1死1塁でエンドランをしかけたが、朴勍完の当たりは浅いショートフライになり、飛び出した1塁走者までアウトになった。さらに7回、無死2、3塁と絶好の追加点の好機を迎えたが、李大浩のショートゴロで3塁走者がホームで憤死。さらに2塁走者も3塁を欲張ってタッチアウトになった。

 普通なら、これで流れは日本にくるはずだ。しかし、韓国ベンチはスキを与えなかった。8回には、岩村明憲、イチローと左が2人続くところで、6日の試合で先発した左腕の柳賢振を起用。イチローにセンター前ヒットを許すと、抑えの林昌勇を躊躇なく投入した。日本は中島に送りバントを命じて得点圏に走者を進めたが、林と青木のヤクルト対決は緩いチェンジアップでタイミングを外したクローザーに軍配が上がった。

 敗戦の中、日本にとっての収穫はダルビッシュ有のリリーフ起用。8回、その名前がコールされると球場全体がどよめいたが、「競ったゲームだったし、調子がよかったから。今日は総力戦なので予定はしていた」(与田剛投手コーチ)。速球とスライダーに韓国の打者は手も足も出ない。四球とヒットで走者は背負ったものの、すべてのアウトを空振り三振で奪った。「試合には負けたが、相手にイヤなイメージを植えつけられたと思う」。先発はもちろん、勝負どころでの秘密兵器として使えるメドが立った。

「大敗のショックはあった。それだけに今日の試合は試合に出ていない選手も含めて全員がひとつのボールに集中していた」
 先発した奉重根が語るように、この日の韓国は打倒日本に燃えていた。敗戦が彼らをひとつにまとめた。それは日本も同じだ。「今日の負けはチームの団結力を更に強めると思う。実際に試合後のロッカーで見る限り、そんな雰囲気が出ていた」。原監督は悔しさを押し込めるように前を向いた。今大会、韓国とはあと最大で3度激突する可能性がある。前回大会同様、日韓のライバル対決がWBCのメインストーリーとなることは間違いない。そして、そのエンディングはまだ見えない。

●原監督
 14点の後に0点、これが野球だ。相手投手にいいところへ投げられれば、そう打つことはできない。ただ、投手は非常に頑張った。
 韓国とは1試合目に戦って勝った時も、これから数回、顔を合わせる予感がしたが、その気持ちが強くなっている。韓国と日本がアジア代表として最後の最後まで勝ち残ってアジアの野球を知らしめたい。
 今日の負けはチームの団結力を更に強めると思う。実際に試合後のロッカーで見る限り、そんな雰囲気が出ていた。この思いをもってアメリカに飛び立ちたい。

●岩隈(6回途中2安打1失点)
 立ち上がりは良かったが、4回、先頭打者に四球を出して失点につながってしまった。それ以外は粘り強く自分のピッチングができただけに、その一点が悔やまれる。自分としてのスタートが切れたので、次回に向けてしっかり調整していきたい。

○金監督
 野球は投手がどれだけ大事かを思い知らされた。今日のように95%、投手が試合の勝敗を左右するのが野球の特徴だ。先発の奉重根から抑えの林昌勇までよく頑張った。
 奉は(日本に大敗した)2日前に、日本戦で投げたいという強い意思をみせてくれたので起用した。走塁ミスもあり、もっと点がとれたところがとれなかったのは残念だ。
 今日は意味のある勝利。今回のチームには若くて未熟な選手も多いが、米国でも自信を失わずにやってくれるだろう。

【2次ラウンド日程】 米国・サンディエゴ ※日時は日本時間
ゲーム1 B組1位日本 16日(月) 5:00
ゲーム2 韓国B組2位 16日(月)12:00
ゲーム3 ゲーム2敗者ゲーム1敗者 17日(火)12:00
ゲーム4 ゲーム2勝者ゲーム1勝者 18日(水)12:00
ゲーム5 ゲーム3勝者ゲーム4敗者 19日(木)12:00
ゲーム6 ゲーム4勝者ゲーム5勝者 20日(金)10:00

(石田洋之)