11日、ベースボール・チャンレンジ・リーグ(BCリーグ)が開幕する。設立3年目を迎え、今季から新たに延長戦が導入される(ただし3時間20分を超えた場合は引き分けとなる)。これはファンの要望に応えたもので、これまで以上にエキサイティングなゲームが数多く見られそうだ。
 さて昨季は北陸地区で前後期ともに優勝した富山サンダーバーズがリーグチャンピオンシップで上信越地区代表の群馬ダイヤモンドペガサスを下し、念願の初優勝を飾った。だが、一昨年の石川ミリオンスターズに続き、グランドチャンピオンシップではチャンピオンフラッグを手にすることはできなかった。それだけに今季こそはBCリーグチャンピオンの日本一達成を期待するファンも少なくない。
 果たして今季はどんなシーズンとなるのか。ぜひ、プロらしいハツラツとしたプレーでファンをわかせてほしい。
【北陸地区】
<富山サンダーバーズ 〜急がれる廣田の後継者〜>
 昨季、北陸地区で前後期ともに優勝。さらにはリーグチャンピオンシップでは上信越地区代表の群馬に無傷の3連勝を飾り、リーグでは圧倒的な力を見せつけ、見事初優勝を達成した。だが、チーム事情は決して楽観視できるものではない。設立以来、主砲として活躍した野原祐也が阪神へ、投手陣の柱だった小園司が関西独立リーグの神戸9クルーズへ移籍。さらに、主将および捕手としてチームを牽引してきた廣田嘉明や草島諭、川端英治が現役を引退とレギュラーが5人も一気に抜けた穴はあまりにも大きい。
 それでも昨季、MVP、最多勝(15勝)、最優秀防御率(1.42)の3冠に輝いた小山内大和、1年目からレギュラーを張り、昨年は5番打者として野原に次ぐ打点(40)を挙げた町田一也と投打の柱は健在だ。また、新人の成瀬友登や野口翔也はパワーがあり、野原の抜けた穴を埋める存在として期待される。
 最大の課題は捕手か。現在は茅場大陽(登録名:大陽)が最有力候補として挙げられているが、しばらくは信濃グランセローズから移籍してきたベテランの松橋良幸と併用しながらの起用となりそうだ。大陽がシーズンを通して、どこまで成長できるか。捕手出身の小牧雄一コーチの手腕にも注目したい。

<石川ミリオンスターズ 〜投手王国が王座奪還を狙う〜>
 今季も「守備力重視」のチーム構想は変わらない。昨季、富山の小山内とともに最多の15勝を挙げ、元NPB出身者としてのレベルの高さを遺憾なく発揮したエース南和彰がチームの大黒柱だ。MAX152キロの直球、スライダーに今季は元西武の森慎二プレーイングコーチから直伝されたフォークが加わり、投球の幅が広がった。ピッチングに凄味を増した南がNPBへの復帰を視野に、リーグでは前人未踏の20勝を目指す。そのほか、185センチの本格派右腕・山崎猛志や成長著しい高卒ルーキーの中園涼平らに先発の一角を担う活躍を期待したいところだ。NPBの第一線で活躍し、メジャーにまで上り詰めた森コーチが完全復活となれば、2年ぶりの王座奪還が見えてくる。

<福井ミラクルエレファンツ 〜怖さ秘めた若手集団〜>
 昨季は創立1年目ということもあり、前後期ともに地区最下位に終わった福井。立て直しが求められる今季は、メンバーをガラリと替え、リーグ最年少指揮官となった天野浩一監督のもと、チームを一新した。ベテラン勢7人に戦力外通告を言い渡し、10代〜20歳代前半の若手11人を補強した今チームの平均年齢は22.3歳。監督も選手も若さあふれるフレッシュな構成となった。荒削りなところは否めないが、どう化けるか怖さも秘めている。昨季エースとして活躍し、福岡ソフトバンクに入団した柳川洋平も「今年のチームは昨年とは全く違う」と太鼓判を押す。
 キーマンとなるのが守備の要、正捕手の丸木脩平だ。NPBへの昇格も噂されるほどのセンスをもつ丸木が投手陣を含め、チームをどう統率するのか。首脳陣からの信頼も大きく、20歳ながらチームのリーダー的存在としての活躍が期待される。
 開幕日に30歳となる天野監督。指揮官の誕生日を勝利で飾り、勢いに乗りたいところだ。

【上信越地区】
<群馬ダイヤモンドペガサス 〜投打の安定感に加えたい走力〜>
 昨季、1年目ながら見事上信越地区を制した群馬は、今季も投打ともに安定している。なかでも最も期待されているのが元日本ハムの山田憲。昨季、全72試合に出場し、打率.384、107打点、32打点の好成績で首位打者を獲得した好打者だ。課題はわずか11に終わった盗塁。オフに取り組んだ走塁技術を実戦でどこまでいかせるか。昨季の盗塁部門でチームメイトの遠藤靖浩、井野口祐介がワンツーを独占。そこに山田が割り込めば、埼玉西武のような野球が期待できそうだ。
 一方、投手も昨季チーム最多の11勝(3敗)を挙げたエース富岡久貴をはじめ、飯塚知之、越川昌和など先発、中継ぎ、抑えとコマは揃っている。あとは新戦力をどこまで上乗せできるかがカギを握る。

<新潟アルビレックスBC 〜実績十分のルーキーに期待〜>
 芦沢真矢新監督の下、投打ともに大きく戦力アップした昨季は前期に地区優勝し、最高の状態で折り返した。しかし、後期は2位に後退。群馬とのプレイオフでは1勝もできずに完敗した。要因はスタミナ切れだった。そのため、オフは1年間戦えるだけの体力づくりを行なってきた。
 不安要素は前期優勝の立役者となった3本柱のうち、2投手がチームを去った先発陣だ。そこでキーポイントとなるのは新人投手の台頭だ。今季は活躍が期待できる大型新人を豊富に取り揃えた。香川オリーブガイナーズ(四国・九州アイランドリーグ)でエースとして活躍し、2年間東京ヤクルトに在籍した伊藤秀範、常磐大時代には明治神宮大会出場に貢献した柏村雄太、東京学芸大3年時にはリーグ最多勝に輝いた折笠翔太、福井工大福井高時代にはエースとして春夏連続甲子園に出場した経験をもつ久保田晃史と、十分な実績をもつ投手陣がズラリと並ぶ。彼らがシーズンを通してどのような活躍を見せてくれるのかに注目したい。

<信濃グランセローズ 〜手腕問われる新指揮官〜>
 2年間、チームを率いてきた木田勇前監督の後継者として選ばれたのが昨季まで球団GMとして運営面にかかわってきた今久留主成幸監督だ。「今久留主成幸」と聞いて懐かしさを覚える野球ファンも少なくないだろう。PL学園時代、“KKコンビ”の異名を持つ清原和博、桑田真澄と同級生、3年時には桑田とバッテリーを組んだあの「今久留主成幸」だ。選手としては全国制覇を達成している今久留主監督。今度は指揮官としてどんな手腕を見せてくれるのか、楽しみだ。
 さて昨季はチーム成績がリーグ最下位だった投手陣だが、今季は島田直也コーチが嬉しい悲鳴をあげているほど豊富な人材が揃っている。特に先発陣は仁平翔、給前信吾、高田周平の既存選手に加え、芦田真史、星野真澄と新人選手も候補に挙がっている。なかでも左のエースとして期待されているのが星野。肩をつくるのも早く、今季千葉ロッテに入団した鈴江彬に代わり、先発、中継ぎ、抑えとフル回転の可能性もありそうだ。また、スピード、キレともに高いレベルを誇る給前の躍進、そして昨オフに右ヒジを手術した右のエース佐藤広樹が先発の2本柱を担えば、強固な投手陣が構築できる。昨季の汚名を返上し、投手王国へと生まれ変われるかがポイントとなりそうだ。