このままレアルが逃げ切るのか、それとも大逆転劇が待っているのか。今季のスペインリーグは最終節(第38節、6月17日)を前にして、首位レアル・マドリード(勝ち点73)、2位バルセロナ(同73)、3位セビージャ(同71)の3チームに優勝の可能性が残っている。
 第37節(6月9日)では首位レアルと他の2チームの明暗が分かれた。
 常に先行される苦しい展開ながら、土壇場で追いつき、貴重な勝ち点1を得たのはレアルだ。1−2で迎えた後半44分、FWイグアインのシュートのこぼれ球をFWファンニステルローイが蹴りこんで、試合終了間際にスコアをタイに戻した。アウェイでの戦い、加えて対戦相手のサラゴサがUEFAカップの出場権を獲得できる現順位を維持するためモチベーションが高かったことを考えれば、ドローに持ち込めた意味は大きい。

 一方、同じ勝ち点1でも痛恨のドローに終わったのが2位バルセロナ。2−1とリードしていた後半ロスタイム、エスパニョールのFWタムードに痛烈な同点弾を叩き込まれ、獲得するはずだった勝ち点3が1になった。レアルとは当該対戦成績で負け越しているため、勝ち点で並んでも2位。そのため、できる限り勝ち点を積み上げたかったが、ホームという利点を生かせず引き分けた点は悔やんでも悔やみきれないことだろう。

 今季21ゴールのエースFWカヌーテを故障で欠いたセビージャも引き分けに終わり、上位との勝ち点差を縮めるチャンスを逃した。早々にチャンピオンズリーグで敗退した上位2チームとは対照的に、UEFAカップを勝ち進んだセビージャには過密日程の難しさがあった。目に見えない疲労が蓄積されているのは間違いない。

<勝負強いレアル、ムラのあるバルサ>

 ここで、3チームの直近11試合の成績を比較してみよう。レアルは9勝1分1敗、バルセロナは7勝2分2敗、セビージャは6勝3分2敗。過密日程を考慮すれば、セビージャの成績は理解できるが、レアルとバルセロナの差はどうして生まれているか。

 両チームの最近の戦いぶりを見たら、その差がよくわかる。競った試合で勝負強さを見せるのはレアルだ。第33節(5月6日)セビージャ戦では4−3、第34節(5月12日)エスパニョール戦では3−2と2試合連続の逆転勝ち。第35節(5月20日)のレクレアティーボ戦では後半ロスタイムに勝ち越し弾を奪い、勝ち点3を手にした。勝利への執念については他の追随を許さない。

 逆に、バルセロナはムラのある戦いぶりが目立つ。第27節(3月17日)レクレアティーボ戦、第35節(5月20日)アトレティコ・マドリード戦など4点以上の大差をつけて勝つゲームもあれば、第34節(5月13日)ベティス戦のように後半ロスタイムに同点ゴールを許し、ドローに持ち込まれる試合もあった。

 37試合を終えて、バルセロナの得失点差は41、レアルのそれは24。数字の上ではライバルチームを上回るが、ここぞという場面での勝負強さに欠いたことが現在の状況につながっている。

<レアルは勝たなければ優勝できない!?>

 言うまでもなく、最も優勝に近いのはレアルだ。勝てば優勝の最終戦はホームというアドバンテージが見込める。さらに相手はカップ戦の出場権や降格争いとは無関係のマジョルカ。ここ7試合で10ゴールと絶好調のファンニステルローイら攻撃陣が爆発すれば、4シーズンぶり30回目の優勝に手が届く。

 ただ、当然、他の2チームにもチャンスは残されている。
 アウェイでの戦いとはいえ、バルセロナの対戦相手は既に降格が決まった最下位のヒムナスティック。出場停止明けのFWロナウジーニョの復帰も好材料といえる。第37節終了後にはリーグ優勝に悲観的な声がチーム内から聞こえるが、3連覇の夢を諦めるにはまだ早すぎる。

 勝ち点2差で3位につけるセビージャは、上位2チームがともに敗れるようなことがあれば、タイトルが手中に転がり込む可能性がある。対戦相手がUEFAカップ出場圏内のビジャレアルということもあり、難しい戦いを強いられそうだが、最後まで諦めることなく、死に物狂いで勝ちにいくはずだ。

 レアルにしてみれば“勝てば優勝”というよりは、勝たなければ優勝できないと考えるべきだ。最後に笑うのはレアルか、バルセロナか、それともセビージャか……。6月17日、全てが明らかになる。