ワールドシリーズは3日、第5戦が行われ、3連敗で王手をかけられたフィラデルフィア・フィリーズがニューヨーク・ヤンキースとの点の取り合いを8−6で制し、対戦成績を2勝3敗として踏みとどまった。初回に1点を先行されたフィリーズはその裏、チェイス・アットリーの3ランで逆転に成功。3回にも3点を加え、試合を優位に進める。7回にはこの日2本目となるアットリーのソロなどで2点を奪い、ヤンキースの終盤の猛攻をしのいだ。3試合連続でスタメンを外れた松井秀喜は9回に代打で出場し、レフト前ヒットを放った。
 アットリー、2発4打点!(フィリーズ2勝3敗、シチズンズバンク・パーク)
ニューヨーク・ヤンキース   6 = 100010031
フィラデルフィア・フィリーズ 8 = 30300020×
勝利投手 リー(2勝0敗)
敗戦投手 バーネット(1勝1敗)
セーブ   マドソン(1S)
本塁打   (フ)アットリー4号3ラン、5号ソロ、イバニェス1号ソロ

【松井成績】
 1打数1安打
第1打席 左前安打

 崖っぷちに立たされたチームを救ったのは、フィリーズ生え抜きの強打者だった。
 先手をとったのは、3連勝で王手をかけた ヤンキース。初戦に完投を許したフィリーズ先発のクリフ・リーから4番アレックス・ロドリゲスがライト線へタイムリー2塁打を放つ。前日に殊勲打を放った主砲の一撃で1点を先制した。

 この嫌な流れを断ち切ったのがフィリーズ3番のチェイス・アットリーだ。その裏、A.J.バーネットの立ち上がりを攻め、ヒットと死球で無死1、2塁。アットリーはストライクをとりにきた初球を逃さなかった。打球はライトスタンドへ飛び込む3ラン。2000年にドラフト1巡目でフィリーズ入りした男の2試合連続本塁打で3−1と逆転し、試合の主導権を奪い返した。

 さらに3回、アットリーが今後はチャンスメイクの役割を果たす。先頭打者として四球を選び、すかさず二盗。無死2塁と得点圏に進む。続くライアン・ハワードも一塁に歩き、このシリーズ好調の5番ジェイソン・ワースが鮮やかなセンター返し。続くラウル・イバニェスもライト前にタイムリーを放ち、5−1。バーネットを早々とノックアウトした。フィリーズはこの回、なおも内野ゴロの間に1点をあげ、序盤で大きくリードを奪った。

 ヤンキースは5回、内野ゴロの間に1点を返したものの、第1戦でも敗れた左腕のリーを攻めきることができない。そして7回、とどめを刺したのがアットリーだった。先頭打者として左打席に入ると、ヤンキース4番手の左腕フィル・コークからアウトローのボールを右中間へ。打球はそのままスタンドに飛び込み、ダメ押しの一発となった。これでアットリーはこのシリーズ5本目のホームラン。1977年のロサンゼルス・ドジャースとのワールドシリーズでヤンキースのレジ―・ジャクソンがマークしたシリーズ最多記録に肩を並べた。フィリーズはこの回、イバニェスもライトへソロを叩きこみ、8−2と試合を決めた。

 だが終盤、ヤンキースも粘る。8回、疲れのみえるリーからようやく3連打で2点を返し、代わった2番手の朴賛浩からロビンソン・カノが犠飛を放って3点差。さらに9回、不調の守護神ブラッド・リッジの代わりに投入したライアン・マドソンを攻め立てる。先頭のホルヘ・ポサダがライトオーバーの2塁打で出塁すると、ピッチャーの打順で代打・松井秀喜が登場。カウント1−2から外のボールを逆らわずにはじき返すと、打球は三遊間を抜ける。無死1、3塁。一発が出れば同点の好機をつくった。ただ、頼みのデレク・ジーターはショートゴロ併殺打に倒れ、万事休す。1点を返すだけにとどまり、9年ぶりのワールドシリーズ制覇は、第6戦以降にお預けとなった。

 第6戦はヤンキースの本拠地に戻り、5日に行われる。ヤンキースは第3戦に先発して勝利投手となったアンディ・ペティット、フィリーズはペドロ・マルチネスが先発予定。百戦錬磨の両ベテランの出来が勝敗の行方を左右しそうだ。