タンパベイ・レイズの岩村明憲が4日、ピッツバーグ・パイレーツへトレードされることが決定し、両球団から発表された。26歳の右腕ジェシー・チャベスとの交換トレードになる。岩村は2007年にポスティングシステムで東京ヤクルトからレイズに移籍し、今季が3年契約の最終年だった。契約延長については球団に選択権があり、その場合、来季の年俸485万ドル(約4億4000万円)となるオプションを結んでいた。パイレーツはその契約内容ごと受け入れる形になる。
 昨季は球団創設初のリーグ制覇に貢献した岩村だが、今季は5月25日のフロリダ・マーリンズ戦で二塁での守備の際に、一塁走者から激しいスライディングを受けて負傷。左ひざ前十字靱帯断裂などと診断され、一時は今季中の復帰は絶望とされていた。その後、靱帯は部分断裂だったことが判明し、リハビリの末、8月下旬に復帰。69試合で打率.290、1本塁打、22打点、9盗塁の成績だった。

 チームは岩村不在の間、代役のベン・ゾブリストが成長。岩村が戦線に戻った後も事実上、併用の形がとられていた。岩村と契約更新すれば、来季年俸は今季の325万ドル(約2億9000万円)を大きく上回る高額となるため、球団はトレードに踏み切った。交換相手のチャベスは今季、73試合に登板し、1勝4敗、防御率4.01の成績で、年俸は40万ドル(3600万円)と格安だ。
「タンパは好きな街だし、チームメイトもスタッフもいい人ばかり。3年いて、もう慣れたので、できれば出たくなかった」
 岩村はチームへの惜別の情を抱きつつも、「こればかりはチーム事情。仕方ない」と割り切った。

 移籍先のパイレーツはナショナルリーグ中地区で3年連続最下位と低迷している。2007年は桑田真澄がプレーしていたチームだ。セカンドのポジションは、シーズン途中にフレディ・サンチェスがサンフランシスコ・ジャイアンツに移籍し、レギュラー不在となっていた。
「レイズに移籍した時と状況が似ている。高い評価をしてくれたことに感謝したい」
 岩村が語るように、レイズも岩村が入った当時は9年で8度最下位に沈む弱小球団だった。決して球団の資金も潤沢でない中、450万ドル(約5億3000万円)の入札金を支払い、チームの主力として迎え入れた。今回もパイレーツは4億以上の年俸を支払って、走攻守3拍子揃った日本人内野手に大きな期待をかけている。

「どこにいっても自分のやる野球は変わらない。日本で教えてもらった野球を貫くだけ」
 既に帰国している岩村は、このオフはケガをしたひざの回復と強化に努め、新天地で新たなスタートを切る。

※なお、当サイトの人気コーナー「この人と飲みたい」にて、今月は岩村選手がゲストとして登場します。「天国と地獄を両方経験した1年」と本人が語る今季のWBC連覇やケガからの復帰を振り返りつつ、現役メジャーリーガーだからこそ知りえる興味深い話をたっぷりお伺いしています。前編は12日(木)更新予定です。どうぞお楽しみに。