薄手の服だけでは肌寒く感じるようになってきました。しかし、陽が出ている昼間は、上着を着ていると暑く感じる時もあります。衣服の調節が難しいこの頃ですが、どうにか体調だけは崩さずにいきたいところです。

 さて、今週のある日、僕以外のスタッフが外に出かけて、社内に編集長と僕ひとりだけという状況になりました。編集長は執筆作業中、僕もテープ起こしをしていて、特に問題が起きることもなく、時間が過ぎていきました。

 すると、原稿を書き終えた編集長が伸びをしながらスタッフルームへと入ってこられました。
「腹が減ったなぁ。Y.S.何か食べるか?」
「でも、具材も何もないんじゃないですか?」
「そうだなぁ……。あ! あれを買ってきておいたんだよ」

 編集長はキッチンから「札幌ラーメン」と書かれた箱を持ってきました。編集長が札幌出張に行かれた際、帰りに買ってこられたそうです。しかし、具材がなければやはりさびしい……。
「ちょっと待ってろ。スーパーで買ってくる」
 編集長は颯爽と自転車のカギを手に、スーパーへと出かけられました。帰ってきて調理を始めた編集長をお手伝いしようと思ったのですが、「仕事しながら待っていなさい」と言われ、僕はテープ起こしを再開しました。

 すると、鼻を刺激するいい匂いがキッチンから流れてきました。空腹だった僕はもう気が気ではありませんでした。
「Y.S.できたぞ。とりにこい」
 僕がキッチンに飛んでいったのは言うまでもありません。

 いざ実食。……うまい! しょう油ベースのあっさりとしたスープに野菜、チャーシューのうま味が溶け込み、下手なチェーン店よりもおいしいラーメンでした。
「いやぁ、すごくおいしいです」と僕が編集長の方を見ると、編集長は渋い表情を浮かべて、こう言いました。

「いや、まだまだだな。俺が札幌で食べたラーメンはもっとうまかった。やはり本場には勝てんな」
 文の達人が、麺の達人になる日はそう遠くないかもしれません。

(スタッフY.S.)
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