合同トライアウトからしばらく関東に滞在し、愛媛に戻ってきました。あれから2週間が経ちますが、残念ながら、まだオファーは僕の下に届いていません。代理人に問い合わせても、いい話は来ていないようで厳しい現実を味わっています。

 一緒にトライアウトを受けた大山(俊輔、カターレ富山へ完全移籍)など、移籍先が続々と決まっていく現状に正直、心は揺れています。こちらから「まだ、オレはできるんだ」と売り込みをしたいのもヤマヤマですが、それぞれのクラブには事情があります。こちらの思いだけでどうにかなる話でもありません。

 とにかく今は焦っても仕方ない。やるべきことをやって朗報を待とう……。そう自分に言い聞かせながら、毎日を過ごしています。

 おかげさまで愛媛では今まで使わせてもらったジムなどでトレーニングが継続できていますし、家族も普段通り接してくれています。僕も子供のクリスマスプレゼントを買いに行ったり、家の大掃除を手伝ったりと、今まではあまりできなかった父親としての仕事もしているところです。

 年が明ければ、指導者のB級ライセンスの講習で静岡に行きます。サッカーの勉強はもちろん、一緒に講習を受ける各クラブの選手やコーチと交流しながら、今後に何かつながればいいなと思っています。

 このように年末年始も予定が入っており、今の僕にとっては、かえって気が紛れる状況と言えるかもしれません。ひとりになると“このままオファーがなかったら、どうなるんだろう”といった弱気な部分がどうしても顔を出してしまいます。

 年齢も年齢ですから、現実は決して甘くないのは十分承知しています。それでも僕のことを支え、応援していただいている皆さんのために、もう一度プレーで恩返しをしたい。今はその一心でオファーを最後まであきらめず、待ち続けたいと思っています。

 振り返ればスペインでカステリョンから放出された時には、次のヌマンシアに移籍が決まるまで2カ月半かかりました。ラス・パルマスと契約を更新できなかった時もギリシャのイオニコスに移るまで3カ月ほどの時間がありました。

 もちろん海外と日本で事情は違いますから単純に比較はできないものの、決して望みを捨てるタイミングではありません。年明けにかけて国内の移籍市場が一段落すれば、思うような選手が獲れず、改めて補強に乗り出すクラブも出てくるでしょう。あれこれ考える前に、いつ声がかかってもいいよう、しっかりと準備をしておくことが今の僕に求められていると感じています。

 ギリシャといえばFC東京時代、ともにプレーした梶山陽平がパナシナイコスへ移籍する方向で話が進んでいるようです。パナシナイコスはオリンピアコスと並ぶギリシャのビッグクラブ。僕が所属したイオニコスでは給与未払いがあったり、経済問題で騒がれている国ですが、その点はきちんとリサーチして契約を結ぶでしょう。

 梶山の力をもってすれば、パナシナイコスでも十分、主力として活躍できるはずです。ただ、扱い外国人ゆえに日本以上に結果を出さなければ居場所はなくなってしまいます。

 ひとつ彼にアドバイスを送るとすれば、ギリシャ語は難しいため、おそらくすぐにコミュニケーションをとるのは大変でしょう。ただ、英語は日本以上に通じますから、カタコトでもどんどん話しかけることが大切だと思います。

 外国では日本のレベルはまだまだ下に見られています。自分からどんどんチームに入りこんでいかないと溶け込むことはできません。その意味では普段の生活も含め、いかに早く異国の環境に適応できるかどうかが成功のカギを握っているのです。僕は1年しかギリシャでプレーできませんでしたが、彼には、ぜひカジヤマの名を広めてもらって、より上のステージに進んでほしいと願っています。

 悩み苦しんだ2012年も、もう残りわずかです。新しい年になれば、きっと何かが変わる。2013年がいい1年になることを信じています。

 今年1年間、いいところを見せられず、皆さんには本当に申し訳なく思っています。来年はこのコーナーで、たくさんいい報告ができるよう頑張ります。引き続き、よろしくお願いします。

(この連載は毎月第2、4木曜更新です)
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