11日にフクダ電子アリーナ(千葉市)でJリーグの合同トライアウトに参加してきました。こういった大人数でのトライアウトを受けるのは、もちろん初めての経験。スタジアムは独特な雰囲気が漂っていました。

 トライアウトの内容は7対7のミニゲームで体を温めた後、11対11での30分間一本勝負。チーム分けは当日まで分からず、どんな選手と組むのかドキドキしていました。

 組分けの結果、僕は最後に試合を行うチームに振り分けられました。チーム内に一緒にプレーした選手が全くいない中、試合開始までは、なるべくコミュニケーションをとることを心がけました。

 今回のトライアウトは個人の戦い。まずは自分の持ち味を発揮することが最優先に求められます。とはいえ、サッカーはチームスポーツですから、やはりボールの出し手と受け手の思いが一致しなければ、いいプレーはできません。短い時間で、いかにお互いのやりたいプレーをすり合わせるかはとても難しい作業でした。

 しかも最後の試合だったため、心身のコンディションをキープするのも大変でしたね。通常ならキックオフ時間が事前に分かった上で、調子をピークに持っていくものですが、トライアウトでは当日にならなければ自分の出番が分かりません。寒空の下、気持ちと体の状態が落ちないように試合を待つのは、いつも以上に時間が長く感じました。

 そして、いざ試合が始まると、コンビネーションはあってないようなものでした。相手はもちろん、味方選手の特徴も十分に理解できないまま、ボールはなかなかつながりません。普通はパスを選択する場面でも、多くの選手はアピールしようと、どんどん仕掛けてきます。審判は少々のファウルも流していましたから、みんな必死でボールを奪い合いました。

 どの選手も現役続行を希望して、このピッチに立っています。その気持ちの気持ちのぶつかり合いには本当に燃えるものがありました。僕も気持ちだけでは負けないよう、最後の最後までプレーし続けたつもりです。

 ただ、結果は無得点と不満の残るものになりました。やはりストライカーとして真っ先に要求されるものはゴール。1度、裏へうまく抜け出すシーンをつくったものの、オフサイドと判定されるなど、最後までゴールネットを揺らせなかった点は本当に残念です。

 しかし、いくら悔やんでも時間は後戻りしません。アップ代わりのミニゲームでは得点もしましたし、やるべきことはやりました。今はオファーがあることを信じて待つしかないと考えています。

 現時点では、もし声がかかるなら、国内クラブを優先したいと思っています。しかし、こればかりは獲得の打診がなければ何も始まりません。とにかく「福田健二が欲しい」と言ってくれるところが出てきてほしいと祈るばかりです。

 最近は電話がかかってくるたびに、「もしかして……」と少しドキドキします。でも、たいていは嫁からの電話だったりするので、正直、「何だよ~」と思ってしまいますね(笑)。家族は精一杯、僕の現役続行を応援してくれていますから、何とか、その思いに応えたいです。

 今回のトライアウトは僕の人生にとって非常にいい経験となりました。同じ境遇の選手たちと一緒にプレーすることで、「サッカーを続けたい」という強い意思をこれまで以上に自覚できたからです。現役続行――。今の選択肢はそれしか頭にありません。

 この試練を乗り越え、来季もどこかでプレーできれば、より成長した自分になれると信じています。しばらくは関東にそのままとどまり、単身でトレーニングを続ける予定です。次回のコラムでは、いい報告ができることを僕自身も願っています。

(この連載は毎月第2、4木曜更新です)
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