前節のホーム最終戦(ザスパ草津戦)は2-0で勝利。勝てない時期が長く続いたシーズンでしたが、最後にホームの皆さんに楽しんでいただける試合ができて良かったです。そして、今季限りで引退を表明したベンさん(FW大木勉)のラストゲームを白星で飾れたことも、これ以上ない喜びでした。

 ベンさんのことは、もちろんサンフレッチェ広島時代から知っていましたが、親しくさせてもらったのは、この愛媛に移籍してからです。近年のベンさんはケガに泣かされ、今季はなかなか練習もできず、つらい日々だったと思います。しかし、いざボールを持った時のパフォーマンスのクオリティはチームの中でも一番でした。

 実際の試合こそ、ベンさんと2トップを組む機会は限られていましたが、サブ組の紅白戦やトレーニングマッチで一緒にプレーした時は、本当にやりやすかったです。ベンさんがボールを持つと、ここに出してほしいというタイミングや場所にきっちりとパスを出してくれました。

 テクニックのみならず、ピッチ全体を見渡せる視野を持ち、試合や練習中に「あのスペース、気をつけてくれ」と相手の弱点を見抜く力がありました。実際に、そのスペースに行くと、ベンさんがボールをポンと出してチャンスを演出してくれるのです。

 顔はコワモテでいかついかもしれませんが、プレースタイルは繊細で鮮やか。そのギャップが多くの選手やファンを引きつけたのでしょう。言葉数は少なくても、入念に準備をして来るべき時に備える姿は、まさに真のプロフェッショナルでした。ベンさんとチームメイトだった3年間で僕も多くのことを学びました。

 ベンさんとの一番の思い出といえば2010年4月の東京ヴェルディ戦です。ベンさん、石井(謙伍)と3トップを組み、前半8分にループシュートで先制ゴール。僕にとっては、これが愛媛に来てホームでの初得点でした。

 これが決勝点となり、1-0の勝利。結果的に、この一戦が唯一、ベンさんと一緒にスタメン出場した試合となりました。今となってみれば、本当に貴重な時間をピッチで過ごせたと感じています。

 ベンさんの引退で、今度は僕がクラブの中で最年長になります。しかし、以前も書いたように、現役選手である以上、あまり年齢は意識していません。しっかり準備をして、チャンスをつかみ、試合で結果を残す――この点は若手だろうがベテランだろうが関係ないからです。

 愛媛は勝てない時期を乗り越え、現在は7試合連続で負けなし。チーム状態や雰囲気はとても良くなっています。あと1試合、クラブとしても個人としてもいい締めくくりをしたいものです。

 最終節の相手、ロアッソ熊本には昨季、リーグ戦でゴールを決めています。だから、今回も試合に出れば、得点をあげられそうな予感がしています。

 個人的にも今季は不本意なシーズンでした。しかし、後ろを振り向いている暇はありません。後ろ向きの姿勢で得るものは何もない――。それが僕の生き方です。

 人生、いいことばかりではありません。でも、悪いことばかりでもありません。どんなに苦しい時も自分のできることを一生懸命やっていれば、必ずいい答えが出るはずです。

 今季はプレーオフ進出の望みを断たれ、天皇杯でも敗退したため、ここで最終戦を迎えてしまうのは残念ですが、笑って愛媛に帰れるよう、熊本戦までの時間を大切に過ごしたいと思っています。この1年の経験が、最後の最後で喜びに変わる。そう信じて頑張ります。

 ラスト1試合、現地やテレビの前での応援、よろしくお願いします。

(この連載は毎月第2、4木曜更新です)
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