2012年のJ1が佳境を迎えている。
 残り3節となり、優勝争いは首位・サンフレッチェ広島(勝ち点58)、2位・ベガルタ仙台(同56)に絞られた。次節で勝ち点差が広がると広島は優勝に大きく前進するが、仙台が持ち前の粘り強さを発揮して差を縮められれば最終節まで行方は分からなくなる。

 ただ今季は優勝争いもさることながら、残留争いにも大きな注目が集まっている。残る2つの降格枠(札幌の降格は既に決定)から逃れるため、13位・鹿島アントラーズから17位・アルビレックス新潟までの5チームがしのぎを削り、先が読みづらい展開になっているのだ。

 残り3節(11月17日、同24日、12月1日)の対戦表を書き記しておく。

●13位鹿島(勝ち点39、得失点差+4)=仙台(H)、名古屋(A)、柏(H)
●14位大宮(勝ち点37、得失点差-11)=C大阪(A)、磐田(H)、清水(A)
●15位神戸(勝ち点36、得失点差-8)=FC東京(A)、柏(A)、広島(H)
●16位G大阪(勝ち点34、得失点差+1)=清水(A)、FC東京(H)、磐田(A)
●17位新潟(勝ち点34、得失点差-8)=川崎F(H)、仙台(A)、札幌(H)
※対戦節は左から第32節、第33節、最終節

 この日程を見ると、まず5チームとも直接対決がないのが興味深い。つぶし合いがあると、当該しないチームには「漁夫の利」もあるのだが、それもないために計算が立ちにくい。もちろん11月17日の結果が極めて重要であるが、残り3節を残した現時点で明らかなのは残留ラインと見られていた勝ち点40に乗せても安心はできないということだ。

 現在降格圏のガンバ大阪と新潟が2勝1分けでリーグ戦を終えた場合、勝ち点7を積み上げていずれも同41。大宮アルディージャ、ヴィッセル神戸、さらにナビスコカップを制した鹿島にも、降格の危険性は十分にあるのだ。

 リーグ終盤ともなると、対戦相手に良いも悪いもない。それは百も承知で、先述した対戦カードから残留争いの行方を読み解いてみたい。各チームの対戦相手との今季のリーグ戦成績は、

●鹿島=勝ち点1(1節 0-1仙台、14節 2-3名古屋、15節 1-1柏)
●大宮=勝ち点3(5節 0-3C大阪、13節 0-4磐田、16節 1-0清水)
●神戸=勝ち点3(3節 0-2F東京、7節 3-1柏、12節 2-3広島)
●G大阪=勝ち点3(7節 3-1清水、17節 2-3F東京、3節1-2磐田)
●新潟=勝ち点3(1節 0-1川崎F、8節 0-1仙台、17節 1-0札幌)

 となっている。どこも似たりよったりであることは一目瞭然だ。仮に1戦目と同じ勝敗になった場合は、勝ち点37止まりのG大阪と新潟が降格となる。

 ただ、対戦相手の状況を加味し、一巡目の試合結果を凝視してみると見え方も多少違ってくる。それぞれのポイントを示してみる。

●鹿島の場合。5チームのなかで最も上位勢との対戦を残す。優勝争い中の仙台、次に対戦する名古屋グランパスもリーグ上位に位置しておりACL出場も絡んでくる。最終節に当たる柏レイソルも状況次第では3位に食い込む可能性があるだけにモチベーションは高いだろう。2試合をホームで戦える状況を生かしたい。

●大宮の場合。毎年残留争いをしている経験が大きいのか、ここ8試合負けなしで残留に邁進している。だが、残る3節はいずれも一筋縄ではいかない相手だ。C大阪(勝ち点41)は残留争いから抜け出した感はあるが、彼らもまずは残留を確定させるために全力でくる。その次に対戦する磐田は中位にいて、モチベーションで上回ることができる状況だが、一巡目の対戦で0-4で大敗した嫌なデータもある。最終節で当たる清水には前回勝利したものの、ACL出場権を前に士気は高いはずだ。1勝1敗1分け以上が残留条件か。

●神戸の場合。シーズン途中に就任した西野朗監督を解任し、選手たちの奮起を求めるという勝負に出た。17日、ホームで負けているFC東京にアウェーで勝つことができれば、一巡目で勝利している柏戦(24日)にも勢いを持って臨める。最終節は現在首位の広島との対戦だけに、前の2試合で残留を決めたい。

●G大阪の場合。FC東京、磐田には前回敗れたものの、内容的には接戦だった。今回は中位にいるFC東京、磐田よりもモチベーションで上回ることができる。17日に清水を叩くことができれば、2勝1分けも十分可能とみる。

●新潟の場合。17日の川崎F戦に勝つことが残留条件か。その上で仙台戦を引き分け以上で終え、最終節の札幌戦でしっかりと勝つ。2勝1分けで勝ち点41まで伸ばせれば奇跡は起きる可能性も十分ある。鹿島同様、ホームで2試合戦える状況も大きい。

 5チームのいずれも厳しい状況にあるのは間違いない。逆境下でチーム力を発揮し、生き残るのはどこか――。目の離せないドラマが待ち受けている。

(この連載は毎月第1、3木曜更新です)
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