「ローカルヒーロー祭?」
 僕の友人は、イベント名を聞いただけで大笑いした。「ヒーロー」というカッコイイ言葉に「ローカル」という文字が組み合わさると何ともダサい感じがするからだろう。
(写真:100体以上のローカルヒーローが千葉で一同に会した)

 ふなっしーやくまモンなど、ご当地ゆるキャラ全盛の現在、ローカルヒーローが入り込み余地はなく、まだまだマイナーな存在だと感じる。しかし、ローカルヒーローもプロレス団体同様、メジャーからインディーズまで幅広く存在しているのだ。

 今回、ローカルヒーロー祭を主催した『鳳神ヤツルギ』という千葉のローカルヒーローは、なんと映画まで撮影されている。地元のちばテレビでは毎週番組が放送されていて、絶大な人気を誇っているという。活動がローカルなだけで、作品のクオリティは、みんなが良く知っている全国区の仮面ライダーと遜色がない。実際にステージショーも拝見したが、とても豪華で「お金をかけているなぁ~」と感嘆の声をあげるほどであった。

 僕が、ローカルヒーローというジャンルと関わるようになったのは、以前、このコーナーに書いた震災支援のイベントからだ。震災復興のため、全国のローカルヒーローが集まった『宮城国際ヒーローサミット2012』にミヤマ☆仮面が参加したことがきっかけだった。

『週刊文春』などメディアに取り上げられたのも効いたのか、東北で開催されたこのイベントに2年連続で参加させていただき、すっかりローカルヒーローの仲間入りを果たすことができた。そして、この10月、関東で初めて行なわれた「日本ローカルヒーロー祭2014」にも声をかけられたのである。
(写真:北は東北、南は沖縄までヒーローたちが集結した)

 呼ばれることは、とてもありがたかったのだが、ミヤマ☆仮面のショーは、体操やクイズがメインである。それに戦うのは昆虫であり、ヒーローショーのイメージではない。コスチュームのテイストだって全く違う。

 もちろん、冒頭に書いた通り、ローカルヒーローにいろんなパターンがあっても構わないのだが、やはりアクション好きな人が集まっている場だ。少しぐらいはアクションを取り入れるべきだと感じた僕は、ローカルヒーローのイベントで知り合った山梨の『甲州戦記サクライザー』の稽古場の門を叩いた。

 実際にアクションをやってみると、これが驚くほど難しい。
「闘う蹴りと魅せるそれは全然違うぞ」
 ベテランスーツアクターのコーチから激が飛んだ。

 僕がこれまでやってきたキックやパンチとは、そもそも打つ角度が違うのだ。アクションは相手に一切当てないのだが、子供だましの動きは通用しない。

「見栄えの良いバックスピンキックのコツは踵です」
 サクライザーからも直接手ほどきを受けたものの、体で覚えるまでにはいたらない。他のイベントにも時間をとられ、なかなか稽古場にも通えなかったのも痛かった。

 それでも10月12日の日本ローカルヒーロー祭に照準を合わせ、アクションの動きを繰り返し練習した。まるでプロレスの復帰戦を思わせるようなトレーニングメニューを自らに課したが、苦にはならなかった。きっと17歳の頃から体に染み付いているからだろう。
 
 肉離れなどは起こさないよう、しっかりと柔軟体操を行い、股関節の可動域を広げる運動や、ダッシュやジャンプで瞬発力を磨くトレーニングを丁寧にやり、キックのシャドーを繰り返す。現役の頃のような華麗なハイキックを打てないのは少々もどかしいが、これまで培ってきたものを掘り起こす作業は楽しい。

「そろそろアクションのストーリーを決めたいけど、悪役はどうしようか?」
 僕は、一緒にステージに上がる息子に相談した。ヒーローショーでは、正義が悪を倒すのが定番だ。しかし、そこまでの本格アクションを素人の僕たちがやるのは正直難しい。

 そこで、息子扮する相方のクワガタ忍者が、修行の成果をアピールするためにミヤマ☆仮面と闘うという流れを思いついた。仲間同士の“スパーリング”をお披露目する手法もありだと考えたのだ。

 これなら悪役をつくり出す手間も省けるし、クワガタ忍者となら、毎日アクションの練習ができる。クワガタ忍者は、忍者キャラだけにバク転などアクロバティックな動きをマスターしているから華やかだ。

「なんとか、それっぽくなりそうだね」
 頼りになる息子に向かって、僕は微笑んだ。実際に闘うのは1分もないだけに、コミカルな寸劇を入れてボリュームを膨らませる工夫もした。

 当日は、普段行っている昆虫体操も組み入れ、与えられた尺をオーバーしてしまったが、ステージを見てくれたヒーロー仲間の反応は悪くなかった。クワガタが闘うクワレスイベントから、今度は自らが闘うはめになるとは思いも寄らなかったが、UWFの頃から磨いてきた掌底や蹴りを違った形で出せたのはうれしい。

 奇しくも旧UWFが誕生して30年にあたる今年、アクションデビューしたのは感慨深い。Uの技術や魂をチビッコが見つめるステージで、これからもアピールしていくつもりだ。

【お知らせ】 
 11月8日(土)、9日(日)、「お台場キャンピングカーフェア2014」で昆虫イベントを開催いたします。場所はお台場野外特設会場です。たくさんの皆さんのご来場をお待ちしています!

(このコーナーは毎月第4金曜日に更新します)
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