27日、フジゼロックススーパーカップが東京・国立競技場で行われ、09年Jリーグチャンピオンの鹿島アントラーズが09年度天皇杯王者のガンバ大阪が対戦した。試合は鹿島が前半20分にPKで先制するものの、ガンバも前半ロスタイムに加地亮がミドルシュートを決め、同点に追いつく。後半は両クラブとも決勝点を決めるべく攻撃するものの、無得点に終わり90分間で決着がつかずPK戦へ。鹿島は5人全員がPKを決めたのに対し、ガンバは1番手の遠藤保仁が外す。最後まで集中を切らさなかったアントラーズが5対3でガンバを下し、2010シーズン1つ目のタイトルを獲得した。

  名手、遠藤がPK外し激闘に決着(国立)
鹿島アントラーズ 1−1 ガンバ大阪
        (PK −3)
【得点】
[鹿島]  マルキーニョス(20分)
[G大阪] 加地亮(45+1分)
 3万7千人の観客が詰めかけた10年最初のタイトル戦は、リーグチャンピオンとカップ戦王者ががっぷり四つで組み合う好ゲームとなった。両クラブとも今週アジアチャンピオンズリーグを戦っておりコンディションが心配されたが、立ち上がりからアグレッシブな戦いぶりを見せる。特に中2日でこの試合に臨んだガンバだが、厳しい日程の疲労を感じさせないパス回しで序盤の主導権を握った。対するアントラーズは2トップの興梠慎三、マルキーニョスにボールをシンプルに送りゴール前へと侵入していった。

 試合は思わぬ形で動いた。前半20分、右サイドからのFKを野沢拓也がゴール前に送ると、混戦の中でチョ・ジェジンと高木和道に挟まれ岩政大樹が倒される。ここで西村雄一主審が下した判定はペナルティキック。岩政が倒れた場面でファウルがあったようには見えなかったため、ガンバイレブンは主審に抗議したが決定が覆ることはなかった。PKのチャンスをマルキーニョスが落ち着いて決め、鹿島が早い時間に先制する。

 昨年のこの大会、前半だけで3失点を喫したガンバだが、今年は同じ轍を踏まない。右サイドの加地から幾度かチャンスを作り出し鹿島ゴールに迫った。昨年、負傷のためスーパーカップを欠場したベテランが思い切りのいい攻め上がりでチームを奮起させた。

 そして前半ロスタイムにガンバの同点ゴールが生まれる。右サイドの高い位置でボールを受けた加地がドリブルで中に切り込みミドルシュートを放つ。シュートはDFに入った小笠原満男に当たりコースが変わる。GK曽ヶ端準が必死のセービングを試みるものの、ボールはゴール左隅に吸い込まれ、試合は1対1の振り出しに戻った。

 後半に入ると連戦の疲労が出始め、両者ともに攻撃に鋭さは消えていった。その症状が顕著に現れたのはガンバ。後半30分過ぎから目に見えて一気に運動量が落ちた。ここで鹿島は疲れの見える中田浩二に代え青木剛を投入し、中盤のてこ入れを図る。すると、38分に遠藤康、43分にマルキーニョスがゴール前に侵入し決定機を作り出す。さらに後半ロスタイム、ゴール前でフリーになった野沢がキーパーと1対1になりビッグチャンスが生まれる。しかし、左足から放たれたシュートは大きく枠の外へ跳び絶好機を逃してしまう。ガンバも終了間際にチョ・ジェジンが右サイドのクロスにうまくあわせバイシクルシュートを放つが、キーパーの正面を突き得点ならず。試合はこのまま90分を終了し、PK戦に突入した。

 落ち着いて鹿島1番手小笠原がPKを決めたのに対し、ガンバの1人目は遠藤。日本代表でもPKを任せられる名キッカーだけにここはかなりの確率で成功するものと思われたが、遠藤が放ったボールは惜しくもゴールバーの上を通過しPK失敗。その後、鹿島は野沢、新井場、岩政、マルキーニョスと全てゴール右サイドにキックを流し込み合計5対3でPK戦を制し、2年連続でゼロックススーパーカップを手中にした。

 試合後、優勝を決めた鹿島のオズワルド・オリヴェイラ監督は「どちらも高いレベルでいいゲームができた。シーズン最初のタイトルを手に入れたことは素直に嬉しい。同じように1試合戦っても、結果的に勝利することで選手にとっていい薬になる。次への準備に向けて、いい形でモチベーションを上げていける」と接戦をものにした効果を口にした。

 一方のガンバ・西野朗監督は「厳しい日程の中で選手はよく戦ってくれた。ACLと今日の2試合で、DFが1点を決めただけなのでそこは問題だ。前線の選手は個ではなくグループで動いているが、開幕に向けてベクトルの方向を直していきたい」と今後の課題を話した。

 昨年ほどの大差がつかず、90分で決着のつかなかった今大会。オリヴェイラ監督が語ったように、このタイトルを手にしたことは鹿島にとって大きい。昨年は開幕から好調を維持し貯金を貯めたことが、シーズン終盤で大きく生きて3連覇を達成した。PK戦までもつれ込みながらもタイトルを死守し、昨年同様いい流れでリーグ戦開幕を迎える。負けたガンバも故障者を多く抱えながら、リーグ王者と紙一重の試合を演じた。途中出場した宇佐美貴史ら、若手も場数を踏み始めている。2010シーズンへいいスタートを切ったといえるだろう。

 いよいよ来週から、全34節の長いシーズンが開幕する。開幕前にいい仕上がりをみせた両クラブが、どのような強さを見せることができるのか。彼らの戦いぶりに注目したい。

(大山暁生)