2009年夏の総選挙で惨敗し、長年守り続けてきた政権から転落して元気のない自民党、悲願の政権交代を果たしながら、財源不足などでマニフェストを実行できず、行き詰まりをみせる民主党……。敗者が明日の勝者となり、勝者が明日の敗者になる可能性はいつの世にもある。私たちは失敗からいかに学び、成功へのビジョンを描くべきなのか?
 日本の政治と社会を改めて考え直す対談本が完成しました。激論を展開するのは自民党幹事長代理を務める河野太郎衆議院議員と、当HP編集長・二宮清純。昨年の自民党総裁選にも出馬するなど注目を集める改革派の旗手と、スポーツの現場から「勝てる組織」「勝てない組織」を取材し続けてきたスポーツジャーナリストが、日本を変えるために今、求められるものを語り尽くします。異色のコラボレーションによる興味深い一冊です。
 二宮清純メッセージ

 この国を、そして世界を取り巻く状況は目まぐるしく移ろっている。
 ひとつのプレーがきっかけでガラリと流れが変わる。攻めているはずか、わずかなミスでボールを奪われ、守勢に立たされる。かと思えば、防戦一方のところに、何かのはずみでボールが転がりこみ、カウンターアタックのチャンスを得る。まるでサッカーの試合を見ているようだ。天国と地獄は一本の地下通路でひっそりとつながっているのである。

 7月の参院選の結果がどうなるのか、この原稿を書いている時点では誰にもわからない。しかし、どんな結果になろうとも常識的に考えて、衆議院で307議席を持つ民主党を中心にした政権が当分の間、続くことは、ほぼ間違いあるまい。仮に解散することがあっても、それはまだだいぶ先の話だろう。

 となれば民主党には“与党力”、自民党には“野党力”が問われることになる。政権交代からのこの10カ月間、民主党は与党としての責任感が見られず、総理や閣僚の言葉の軽さが浮き彫りになった。まだ野党時代のクセが抜けきらないのだ。それだけならまだいい。与党になったというのに、財源の裏付けのない、つまり出来もしないマニフェストに、未だにこだわりを見せるのはいかがなものか。

 一方の自民党には“野党力”が必要だ。政権与党をチェックするのは野党として大切な仕事のひとつではあるが、それが過ぎると“何でも反対”の55年体制下の社会党のようになってしまう。リアクティブ(現実対応)な事象に追われる与党に対し、野党はプロアクティブ(未来予測)な政策提言が行なえる立場にある。それが無責任なものであっては困るが、身の丈を考えて安全運転に徹するのも味気ない。

 政党にとって野党という時間は充電期間を意味する。自民党は政権復帰へスタンバイOKなのか、それともまだ早すぎるのか。
 河野太郎氏との、のべ10時間にわたる対談を通じて見えてきたもの、それは組織という名の生命体が生き永らえるためには、刺激と代謝が必要だということである。そしてそれは自民党に限った話ではない。

(「まえがき」より抜粋)

『変われない組織は亡びる』

○第1章 変われない組織では何が起こっているのか
 5人もいる幹事長代理/いまだ喫煙可の会議/負けた自覚なし/年寄りが退場しない/最大の突っ込みどころを突っ込めない など

○第2章 ルールとは何か――決めごとを変えられない日本人
 ルールをつくろうとしない/「また欧米にルールを変えられた」と怒る/守るためには変わらなくてはならない/ルールより優先される暗黙のルール/ルールを変えたがらない人の理由 など

○第3章 「共存共貧」で縮んでいく日本
 みんなで貧しくなれば、格差もない/敗者を弱者に仕立てる社会/子ども手当は経済的虐待/脱亜入欧は、世界中で日本だけ/外資がそんなに悪いのか? など

○第4章 民主政治の崩壊過程
 民主主義なんだから、ちゃんと数を数えろ/国民から乖離する議員の常識/反対するなら国会で反対しろ/国家権力とメディアの共犯/気に食わないやつはすぐパクれ/恐ろしい連帯責任の論理 など

○第5章 個人の戦いが組織を変える
 「みんなでやろうぜ」ではなく……/抵抗する役人と戦うには/執行部批判はどこまで許されるのか/河野太郎が総裁選に負けた理由/なぜ自民党から立候補したか/僕が盆踊りに顔を出す理由 など

○第6章 野党力――負けと向き合う力
 負け試合で汗をかける人が真のリーダー/政権交代はオリンピックと同じ覚悟/勝ち馬に乗っても、勝てない/阪神ファンが手本/組織票、団体票は捨てよ/負けるからこそ、新しいものをつくることができる など

(祥伝社新書/定価:798円(税込)/二宮清純、河野太郎著)
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