2009年4月の放送開始以来、スポーツ界の一流たちをゲストに招き、二宮清純がロングインタビューを試みたBS朝日「勝負の瞬間(とき)」。番組は2011年春より3年目に突入します。それを記念して、番組をもとにした書籍が完成しました。過去に登場したトップアスリートの中から世界を舞台に活躍した10名(遠藤保仁、青木宣親、諸見里しのぶ、大畑大介、佐藤琢磨、中澤佑二、長谷川穂積、武豊、宮大輔、杉山愛)をピックアップ。“世界との戦い方”を訊ねた部分を中心に、番組では放送されなかった内容も含めてインタビューが収録されています。今、何かの壁に当たって悩んでいる方、さらなるステップアップを目指したい方へ、勇気と力を与えてくれる一冊です。
 二宮清純メッセージ

 スポーツライティングを生業とするようになってずいぶん、歳月が経つ。これまでの経験を踏まえて述べればノンフィクションやコラムを執筆するにあたっての基本は取材である。しっかり話を聞くことである。
 当たり前の話だが、取材対象者からいい話を聞き出すことなくして、いい記事は書けない。もちろんいいノンフィクションやコラムも書けない。

 では、どうすれば取材対象者から本音や核心に迫る話を聞き出すことができるのか。
 私はインタビューを“疑似恋愛”みたいなものだと考えている。まずは取材対象者を好きになることだ。リスペクトすることだ。それが伝わらなければ、取材対象者は重い口を開かない。

 こう書くと「取材対象者が恋愛対象者なら、記事が甘くなるのではないか」と反論されるかもしれない。その反論は間違ってはいない。ただし、それは取材対象者と恋愛対象者が本当にイコールになった場合だ。

 だから私は“疑似恋愛”と書いたのである。好意は寄せても盲目的にはならない。要は距離感が大切なのだ。
 その意味で、すぐれた書き手はすぐれた“ボクサー”でもあらねばならない。相手の懐に入っては出、出ては入る。それを繰り返す。入りっ放しではダメだし、出っ放しでもダメだ。いかにして距離を詰め、真実に迫るか、その方法はどんな教科書にも載っていない。だからこそ取材やインタビューは難しいのだ。だからこそ面白いのだ。

 BS朝日「勝負の瞬間」では多くのアスリートにインタビューを試みた。いずれも日本を代表するトップアスリートである。
 体験は言葉を磨く。彼らの発する言葉はどれも新鮮で、理知的で刺激に満ちていた。

 日本人が世界で戦う上において必要なものは何か。どうすれば世界で勝てるのか。そして彼らが得た教訓は私たちに何をもたらせてくれるのか。
 本書がそれを考えるきっかけのひとつになれば、インタビュアーとしてこれ以上の喜びはない。

(まえがきより抜粋)

『勝負の瞬間 世界で戦う突破力』

○遠藤保仁(プロサッカー選手) 「いくらいい準備をしても、プロの世界である以上は結果がすべて」

○青木宣親(プロ野球選手) 「プロの世界では自分で考えられる人が生き残っている」

○諸見里しのぶ(プロゴルファー) 「緊張しているのなら、しているなりの打ち方があるし、不安なら不安なりの攻め方がある」

○大畑大介(元プロラグビー選手) 「一番大事なものを最後に託されるためには、本当にチームの信頼を勝ち得ていなければならない」

○佐藤琢磨(レーシングドライバー) 「もう一度、あの頂点に行けるかもしれないと思ったら、もうやらざるを得ない」

○中澤佑二(プロサッカー選手) 「自分の長所でまずは勝負する。そこで勝負して勝てなかったら、また考えればいい」

○長谷川穂積(プロボクサー) 「試合のための試合ではなく、この先のための試合を戦う」

○武豊(騎手) 「ゴールした瞬間に、あそこがダメだったと分かります」

○宮大輔(プロハンドボール選手) 「あらゆる競技にはヒントがあって、全部自分のものにできたら、また新しいハンドボールができる」

○杉山愛(元プロテニスプレーヤー) 「この人はいいかも、と思えた時、自分の思いをさらけ出してオープンにしていく」

(角川マーケティング/定価:1400円(税込)/BS朝日「勝負の瞬間」編)
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