オリンピック・ボクシングの最後のメダリスト、森岡栄治氏の栄光と挫折の人生を映画化した『子猫の涙』が、1月26日より公開された。そして27日、大阪・梅田ガーデンシネマにて、栄治氏の甥で監督の森岡利行、治子役・藤本七海、ヤクザ松永役の唐渡亮ら出演者による舞台挨拶が行われ、映画への思い入れを語った。
(写真:舞台挨拶にて、(左より)唐津亮、藤本七海、森岡利行監督)
 モデルは昭和43年、メキシコオリンピックのボクシング・バンタム級で銅メダルを獲得した伝説のボクサー、森岡栄治氏。日本人でオリンピック・ボクシングでメダルを獲得したのは3名しかいない。ローマオリンピックで田辺清氏が銅メダル、東京オリンピックで桜井孝雄氏が金メダル、そしてメキシコオリンピックの森岡氏と、日本は3大会連続でメダルを獲得した。しかしその後40年間、日本はメダルから遠ざかっている。日本人ボクサーがオリンピックでメダルを獲得することは、偉業中の偉業なのである。

 森岡氏は鳴り物入りでプロに転向したものの、酒とタバコと縁が切れず、大成せぬまま網膜はく離で引退。引退後の仕事は長く続かず職を転々とする。ようやくボクシングジムの開く機会を得たものの、そこで事件が起きる・・・…。喧嘩っ早くて女好き、そんな愛すべきダメ親父の姿が、正義感あふれるおてんば娘・治子の視線で綴られている。

 森岡監督は自らの叔父の栄治氏をモデルに脚本を書こうと思ったきっかけをこう語った。
「私は役者をやっていたのですが、仕事がなかったので、シルベスタ・スタローンの『ロッキー』みたいに、自分で書いて自分でやろうかなと思ったんです。叔父さんが元オリンピック選手で面白い人だったので、モデルにして『エイジ』という脚本を書きました。2004年に日本エンジェル大賞(優秀映画企画に贈られる賞)を受賞したんですが、その年に栄治さんが亡くなりました。お葬式には亀田3兄弟が来ていたり、和則(長男)や治子(長女)から生前のエピソードを色々聞いたので、脚本を書き変えたんです。『エイジ』は栄治さんの一人称でしたが、娘の治子の視点から、栄治さんを描いてみようと思いました」
 主役の栄治役を武田真治が熱演している。自らも協栄ジムでボクシングの練習をした経験があり、試合のシーンで栄治と対戦するボクサー役を演じるのは、すべて本物のプロボクサー。またヤクザ・松永役の唐渡亮は元キックボクサーでもあり、乱闘シーンの迫力には圧倒される。
 
 栄治の愛人を演じるのは広末涼子、妻役を紺野まひる、栄治の兄を山崎邦正、姉役を鈴木砂羽が演じるほか、喜味こいし、黒川芽以、宝生舞、赤井英和など、個性あふれる実力派俳優たちの豪華共演が、あたたかい物語を彩っている。

(上間伸浩)

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