巨人のドラフト1位ルーキー・小林誠司(日本生命)は、3月10日の対阪神オープン戦で同じルーキーの阪神・山本翔也(王子)から満塁本塁打を放った。オープン戦らしく新人が活躍するのは、新鮮で、いいものだ。

 ご承知のように、小林は広陵高時代、野村祐輔とバッテリーを組んで、夏の甲子園準優勝したときの捕手である。佐賀北高との決勝戦、4-0とリードして優勝を目前にした8回裏、1点を返された後に野村が打たれた逆転満塁本塁打は、いまだに脳裏に焼きついている。

 おそらくは、あの痛恨の一球を糧にして、野村は明治大でコントロールをみがき、カープの三本柱の1人にまで成長した。

 小林は、あのとき、審判への判定に不服そうなしぐさをしたことが話題になったけれども、どちらかといえば、線の細い、非力な印象の捕手だった。それが、巨人のドラフト1位にまで成長し、オープン戦とはいえ、満塁本塁打を放ったのだから、やはり、あの日を糧にして努力してきたのだろう。

 阪神では、梅野隆太郎(福岡大)というドラフト4位の新人捕手が注目を集めている。たしかに、パワフルなバッティングをしている。

 北海道日本ハムでは、正捕手・大野奨太の故障をうけて、高卒3年目の近藤健介がレギュラーをとりそうな勢いだ。

 正直いって、ちょっとうらやましい。捕手の新戦力が台頭してくると、チーム全体がどこか新鮮になったような気がする。たぶん、その真逆にあるのが中日で、きっと今年も谷繁元信監督が正捕手なのでしょう。

 さて、カープである。ここまでのオープン戦は、白濱裕太が先発マスクを被ることが多かった。そして、終盤になって會澤翼に交代する。正捕手・石原慶幸は3月11日のオリックス戦で、ようやく先発出場した。ベテランだから、当然といえば当然。結局、今年もカープの正捕手は石原なのだろう。

 今年のカープは、選手や、地元メディア、解説者の方を含めて、とにかく「優勝」という言葉が出てくる。去年、ようやくクライマックスシリーズに初進出した。今年はなんとしても、日本シリーズに出たい……。

 実際に、その可能性はある戦力になってきた。打線は、キラ・カアイフエが今年も健在のようだし、ルーキー田中広輔(JR東日本)も1軍に残って活躍しそうだ。打てる内野手というオプションが加わったのは大きい。投手陣は、もちろん先発3本柱(前田健太、野村、ブライアン・バリントン)はじめ、ブルペンを含めて他球団にひけをとらない。優勝できるか否かは、ベンチワーク次第といってもいいかもしれない。

 だからこそ、捕手の新鮮味のなさが気になる。白濱とて、すでに11年目を迎えた28歳である。けっして若手とはいえないし、これから大化けするとも思えない。倉義和は17年目、38歳である。

 真に強いチームになっていくために、石原をおびやかす若手捕手の育成は急務であるまいか。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)
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