NPBではアイランドリーグ出身選手の活躍が相次いでいる。千葉ロッテの角中勝也(元高知)や中日の亀澤恭平(元香川)はスタメンで試合に出ており、巨人の土田瑞起(元愛媛)は好救援で今季初勝利をあげた。途中入団の中日ドリュー・ネイラー(元香川)も先発で2勝目をマークした。2軍では東北楽天の入野貴大(元徳島)が抑えを務めている。
 四国では彼らに次いでNPB入りが期待される選手たちが、後期シーズンを戦っている。香川の松本直晃は硬式でのピッチャー経験1年目ながら、一躍、ドラフト候補に躍り出た。オーバースローから140キロ台後半の速球を投げ込み、リリーフで26試合に登板。防御率1.12はリーグ2位の成績だ。今後の伸びしろが大いに期待できる24歳の右腕にインタビューした。
(写真:伊藤投手コーチは「右のオーソドックススタイルでコントロールもいい。巨人の菅野タイプ」と評する)
――中日の又吉克樹投手は環太平洋大学の同期です。当時、松本選手は、まだ野手でショートを守っていました。
松本: 又吉はテンポが良くてすごく守りやすかったですね。その頃はガンガン三振を奪うタイプでもなく、打たせてとるピッチングでした。中日に行ってからはボールに勢いも出て、イメージが変わりました。

――同期がプロで活躍しているのは、刺激になるでしょう。
松本: そうですね。でも、又吉の後ろで、亀澤さんが守っているのは、ちょっとヘンな感じがします。

――亀澤選手は2学年上で、ポジションは同じショートだったとか。
松本: だから僕は亀澤さんが卒業するまではレギュラーを獲れなかったんです。身体能力もすごく高くて、一生越えられない壁でした(笑)。2年間、ずっと後ろについてノックを受け、毎日のようにいろいろ教えてもらいましたね。おかげで、ものすごく守備が上達したんです。

――大学卒業後、医療法人養和会で軟式野球部に入り、ピッチャーに転向しました。中学、高校でも経験は全くなかったと?
松本: 中学ではサードとセカンド、高校(東海大翔洋)ではサードでした。中学時代に所属していた神戸須磨クラブでは飯田優也(福岡ソフトバンク)がピッチャーをしていました。2学年下には野間峻祥(広島)もいましたね。正直、2人とも中学時代は、たいしたことない選手だったんです。そういう選手がみるみる伸びて、夢をかなえているのは刺激を受けています。

――ピッチャーに転向したいきさつは?
松本: 社会人の軟式野球のチームはできたばかりで、人数が9人しかいなかったんです。監督から「オマエ、やってみるか」と言われました。野手としては、自分のレベルがだいたいわかって、これ以上は無理だと感じていたので、ピッチャーとしてイチかバチかやってみようと始めました。

――アイランドリーグに挑戦しようと思い立ったきっかけは?
松本: 軟式野球の監督の勧めです。その時はNPBに行くという気持ちは全くありませんでした。どこかで自分の野球のキャリアにケリをつけなくてはいけない。それなら、レベルの高いところで力を試してみたいと思ったんです。

――トライアウトでのピッチングが目に留まり、香川に入団。上を目指そうと意識し始めたのはいつ頃ですか。
松本: 最初に愛媛相手のオープン戦で投げた時です。先頭バッターに全球ストレートを放ったら、バットに当てさせることなく三振を取れた。これで一気に自信が生まれました。このリーグでもやれるという気持ちが出てきたんです。

――でも、軟式と硬式とではボールに慣れるのも一苦労だったのでは?
松本: やはりボールの重さが全く違いました。投げた後の肩、ヒジの張りも異なる。指先にもマメができて、つぶれて血が出ましたね。爪も割れました。やっと最近、硬式球に慣れてきたところです。

――前期はリリーフで20試合に登板、2勝1敗4セーブの成績でした。投げるうちにつかんだものはありましたか。
松本: 中継ぎや抑えでは、先頭バッターをしっかり打ち取ることが大事になります。マウンドに上がった時の“入り”がポイントになる。前期の終盤は徐々に良い感じの入りができるようになってきました。
(写真:変化球はスライダー、カーブなどを投げる。『ダルビッシュ有の変化球バイブル』も参考にする)

――ピッチャー経験が浅ければ、中継ぎの調整や準備も手探り状態でしょう。
松本: それはもう全くわかりませんでしたね。今でも他のピッチャーがどうしているのかを見ながら勉強中です。香川のチームメイトはもちろん、北米遠征やフューチャーズ(イースタンリーグ混成チーム)戦で一緒になった他球団のピッチャーには、ほぼ全員、話を聞きました。(元NPBで)実績のある正田(樹)さん、小林(憲幸)さんにはピッチングでどんなところを意識しているのか、しっかり得て学びたいと思っていました。

――具体的に勉強になったことはありますか。
松本: バッターをよく観察することですね。たとえば、1打席目の何球目で、こういうスイングをしたというのを見て、次はどんな球を投げるかを考える。まだまだ実行するのは難しいですが、とりあえず、バッターの反応をよく見ることは意識しています。

――6月にはリーグ選抜の一員として北米遠征に参加しました。慣れない環境に苦しむ選手もいる中、2セーブをあげ、防御率は0.00と好成績を収めました。
松本: 僕は日本のボールにも慣れていない状態なので(笑)、かえって米国のボールに違和感がありませんでした。それが良かったのかもしれません。たぶん、他のピッチャーは中学、高校とずっとピッチャーをやっていて日本のボールに慣れていると思うんです。だから、「スライダーがかかりにくい」とか「スプリットは落ちやすい」といった違いを話していました。でも、僕は全然、その差がわからない。ただ、がむしゃらに真っすぐでどこまで押せるか試していました。

――後期の課題は?
松本: 今、取り組んでいるのは落ちる球です。速い真っすぐを生かすためにも、落ちる変化球をきっちり覚えたいです。

――速球がセールスポイントですが、球速へのこだわりはありますか。
松本: 150キロ以上のボールを投げたいですね。ここ一番できっちり150キロ以上を出せるピッチャーになりたい。

――ピッチャー像で理想にしているのは?
松本: 今回、高知に入団した藤川球児さんです。僕は野手でしたけど、小学校の頃から、あのピッチングには憧れていました。ピッチャーになってからは、藤川さんのようなストレートと落ちる球を投げたいと動画を見て参考にさせてもらっていたんです。わかっていても打てないストレートを投げられたら最高ですね。

――ピッチャーになって人生が変わった感覚でしょうか。
松本: 全然違いますね。去年まではNPBのユニホームを着ているバッターと対戦したり、北米に行ったりすることは全く考えられませんでした。今はピッチャーをやることが楽しいです。

――NPB行きの可能性も出てきました。又吉投手と同じ舞台で投げ合えるといいですね。
松本: 今は、それを第一に考えています。NPBに行ったら、「又吉に追いつけ」と言われると思うので、ぜひ相手チームで勝負したい。まだ具体的なイメージはわきませんが、現実になるように頑張ります。

(聞き手:石田洋之)

8月21日(金)

◇後期
 宏誓、2打席連続長打で4打点(愛媛3勝1敗1分、宇和島、548人)
香川オリーブガイナーズ  1 = 010000000
愛媛マンダリンパイレーツ 8 = 02330000×
勝利投手 伴(4勝1敗)
敗戦投手 原田(2勝2敗)

 藤川、6回1失点も逆転負け(徳島4勝2敗、高知、1,321人)
徳島インディゴソックス   5 = 000100202
高知ファイティングドッグス 4 = 100003000
勝利投手 橋本隼(1勝2敗2S)
敗戦投手 ジェイソン(1勝4敗3S)

<順位表> 勝  負  分  勝率   差
1.愛媛   9  4  1  .692
2.徳島   9  5  0  .643  0.5
3.香川   6  6  2  .500  2.0
4.高知   4 10  0  .286  3.0

【BCリーグ】

◇後期
 シール、7回途中無失点の好投(石川1勝、熊谷、553人)
石川ミリオンスターズ     5 = 020111000
武蔵ヒートベアーズ      0 = 000000000
勝利投手 シール(6勝7敗)
敗戦投手 中村(7勝6敗)

 代打・永井、勝ち越しタイムリー(群馬3勝2敗、城南、245人)
新潟アルビレックスBC    4 = 100300000
群馬ダイヤモンドペガサス  6 = 10010400×
勝利投手 伊藤(6勝5敗)
敗戦投手 塚田(2勝3敗)
本塁打  (新)足立1号ソロ

 雨天中止
富山−信濃(高岡西部)

<順位表>
FUTURE-East
        勝  負  分  勝率   差
1.新潟  13 10  0  .565  
2.群馬  12 10  1  .545  0.5
3.福島  11 13  1  .458  2.0
4.武蔵   8 11  4  .421  0.5

ADVANCE-West
        勝  負  分  勝率   差
1.福井  12  7  3  .632
2.富山  11  8  5  .579  1.0
3.石川  10 14  0  .417  3.5
4.信濃   7 10  3  .412  -0.5