◇8月23日 味の素スタジアム 6,843人
 東京ヴェルディ 0−1 愛媛FC
[愛媛] 西田剛(53分)
 J10年目のクラブに新たな記録を打ち立てた。今年4月に達成した4連勝を塗り替える5連勝。昇格プレーオフ進出圏内の6位をキープした。

 対する東京ヴェルディはリーグ3位と好調。「我慢しなきゃいけないことは予想していた」と木山隆之監督が語った通り、前半は相手にボールをキープされる展開が続く。

 だが、センターバックのDF西岡大輝が「前がかりに来ると思っていた。ブロックをつくりながら、縦パスを受けさせないようにした」と、守備陣がきっちり対処して失点を許さない。セットプレーやショートパス、サイド攻撃と東京Vは何度も愛媛ゴールを脅かしたが、全員で体を張ってしのいだ。

「前半、耐えられたのがすべて」
 西岡が、そう振り返ったように、後半に入ると愛媛の時間帯がやってくる。開始早々にはFW瀬沼優司がドリブル突破でチャンスメイク。全体的にラインを上げたことでボランチが攻撃に絡み、攻撃に厚みが出てくる。

 後半8分には、そのボランチのMF藤田息吹が左サイドの内田へはたく。「時間があったので、中が見れた。いいタイミングで上げられた」。本人が「完璧」と自画自賛するアウトサイドで蹴ったクロスは、ゴール前で相手DFの手前のスペースにいた河原へ。「シュートが少なかったので打てるうちに打っておこうと思った」と背番号20は思い切って頭で合わせた。

 ボールはゴール左のポストを直撃。跳ね返ってきたところにいたのは、「僕のところに来いと思っていた」というFW西田剛だ。「しっかり当てて振り抜いた」。スライディングしながら右足で押しこみ、ゴールネットを揺らす。1−0。待望の先制点が愛媛に入った。

 その後も愛媛は14分にボランチの小島秀仁がミドルシュート。21分には小島とDF浦田延尚のパス交換でシュートまで持ち込むなど相手にゴールに迫る。終盤は攻撃の選手を投入したヴェルディの波状攻撃を受けるも、粘り強く守り抜いた。東京Vの富樫剛一監督が「愛媛の集結した守備は集中が切れなかった。深い位置まで入れなかった」と残念がったように、90分間、相手にビックチャンスを与えなかった。

「今はチャンスが来るまで耐え抜く力がある。その典型的なゲームだった」
 河原が指摘したように、連勝の要因は安定した守備から得点の機会を確実にモノにしているところにある。「守備で頑張って失点を最小限にすれば、チャンスが来る。お互いに相乗効果が生まれている」と河原は手応えを口にする。

 約3か月ぶりのゴールが決勝弾となった西田は「前のクラブで悔しい思いをしている選手が多い。試合に出て結果を残さなくてはいけないという緊張感がある」と昨年までとの変化を語る。小島、内田と途中加入の選手が活躍し、チーム内競争は激化。愛媛では2年半ぶりのプレーとなる内田は「メンバーに入らなかった選手も激しくやっているからこそ、スタメンに出る選手が頑張れている」と証言する。

「トレーニングを毎日ひたむきに必死にやっている。ちょっとずつ力を伸ばして勝てている。努力が実っているのは監督としてうれしい」
 指揮官もチームの成長に目を細める。決して選手層は厚くなく、ケガ人も出ている中で並べた5つの白星。「この勝ち点は我々にとって大きい」(木山監督)。例年は失速する夏場に順位を上げ、プレーオフ進出争いは初めての経験だ。自信が芽生えつつある選手たちの勢いが本物になってきた。

(石田洋之)