ついこの間まで北日本では季節外れの雪が降っていたと思っていたら、今は春を通り越して、真夏がやってきたような暑さ……。めまぐるしく気候が変わる日々が続いていますが、なんとか体調を崩さないようにしたいものですね。

 さて、3月29日にセ・パ同時に開幕した今季のプロ野球ですが、今月14日からは交流戦がスタートしました。今季は多くの新人選手が活躍しているだけあって、ふだん見れない新人選手同士の対戦もファンにとっては見どころのひとつでしょう。

 そしてその交流戦に入る前に2000本安打を達成したのが、横浜DeNAの中村紀洋選手、そして中日の谷繁元信選手です。

 4月半ば、編集長がインタビューしたのが2000本安打まで14本に迫っていた谷繁選手でした。私もそのインタビューに同行させてもらい、貴重な話を聞くことができました。その内容は、『小説宝石』(6月号)をご覧いただけたらと思います。

 そのインタビュー後、出版社の担当者と共に、編集長に連れて行っていただいたのが、ドームと名古屋駅のちょうど中間にある「ピカイチ」という中華料理のお店でした。中日ファンなら知っている方も多いことでしょう。そこは“大”のつく中日ファンのご家族が経営しているお店。連日、これまた“大”のつくファンが集い、中日談義に花を咲かせているのです。

 ドームからのタクシーの中、その話を聞いた私は気が気ではありませんでした。周知の通り、編集長は広島ファン。中日ファンにも、このことは知られているはずです。しかもその日、中日は広島に1-6と負け、前日に続いて連敗を喫していたのです。

「本当にそんなところに行って、大丈夫だろうか。編集長を見つけた人が広島ファンだということを知っていたら、大乱闘になるんじゃ……」

 10分後、とうとうお店に到着しました。私の心配などよそに、編集長は笑顔で出版社の担当者とお店の中に入っていきました。私はというと、しばらく外で待機することにしました。もし、中から乱闘の声が飛び交うことがあれば、すぐにでもタクシーを拾って、編集長と出版社の担当者を乗せて逃げようと思っていたのです。

 しかし、お店の中からは笑い声しか聞こえません。私も意を決して中に入ると……いました、いました、中日ファンの方たちが。
「“トラ吉”だとバレませんように!」
 そんな要らぬ心配をしながら中に入って行くと、編集長の姿が見当たりません。

「もしかして、裏に連れ込まれた!?」
 私の頭の中は、ヤクザ映画によく出てくる乱闘シーンが浮かんでいました。

 ひとりでアタフタしていると、店員さんが来てくれました。
「二宮さんなら、2階にお通ししましたよ」
「えっ!? 2階にですか? やっぱり人目のないところに……!」

 不思議そうな顔をしている店員さんをそのままにして、私は一目散に2階へと駆け上がりました。
「編集長! だ……いじょうぶ……ですか?」
「S、何やってたんだ。遅いじゃないか。もう始めてるぞ」
 そこには熱烈な中日ファンで知られているおかみさんと談笑しながら、美味しそうにビールを飲んでいる編集長の姿がありました。

 もちろん、おかみさんが編集長が広島ファンであることを知らないはずがありません。それなのに……。改めて編集長の偉大さを感じた瞬間でした。でも、もしかしたら昔から竜と鯉は仲がいいのかもしれません……。

(スタッフS)
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