金沢で講演をした際、主催者からお土産にきんつばをもらった。「きんつばと言えば中田屋、中田屋と言えばきんつば」と呼ばれる銘品である。

 一口食べてびっくりした。おさえ気味の甘さが、何とも言えず上品なのだ。ふっくらとした小豆は口に入れただけでとろけそうだ。

 そこでスタッフにお裾分けをした。全員が「おいしい!」と感嘆の声を上げるなか、ひとり天邪鬼の?だけが手を付けようとしない。

「どうした?、おいしいぞ!」

「いやぁ、僕はきんつば、苦手なんですよ。だって砂糖のかたまりを食べているみたいじゃないですか」

「そうかなぁ。これは別だと思うよ。まぁ、騙されたつもりで、ひとつ食べてみろよ」

 いやいやながら、きんつばに手を付ける?。隣にお茶を置いているのは、こっそり胃袋に流し込む算段か。

 と、次の瞬間である。「お、おいしい。これって、本当にきんつばですか?」。子供のようにはしゃぐ?。パクパク、パクパク。あっという間に3つもたいらげてしまった。

「おい?、今までどんなきんつばを食べていたんだ?」

 バツが悪そうに頭をかく?。
 しっかりと手には4つ目のきんつばが握られていた。

(編集長N)
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