7日に開幕した第92回全国高校野球選手権もいよいよ大詰めを迎えた。明日の決勝戦では春夏連覇を狙う興南(沖縄)と33年ぶりに夏の甲子園に登場した東海大相模(神奈川)が真紅の優勝旗をかけて激突する。勝てば興南は県勢初、東海大相模は1970年以来40年ぶり2度目の全国制覇となる。
 今大会の頂上決戦は、全国屈指の好投手を擁し、前評判が高かった優勝候補同士の対戦となった。今春の選抜大会で同校初、県勢としては2008年の沖縄尚学以来3度目の全国優勝を達成した興南は、投打ともに全国屈指の実力を誇る。沖縄大会で打率3割7分4厘をマークした打線は、甲子園でも好調だ。準決勝まで5試合中4試合で2ケタ安打を放ち、エース島袋洋奨(3年)を援護している。上位から下位まで抜け目がなく、得点力は49代表校の中でも随一といっていいだろう。特に1番・国吉大陸(3年)、2番・慶田城開(3年)、3番・我如古盛次(3年)、4番・真栄平大輝(3年)の上位打線の勝負強さは相手にとっては脅威だ。
 また、一球ごとにサインを変えてくる我喜屋優監督の緻密な采配、それを実行に移すことができる選手たちの打撃センス、そして出塁すれば各選手がケースバイケースで判断し、果敢に次の塁を狙う積極さ……と、どれをとっても一級品だ。

 激戦区の神奈川大会で3割7分1厘の高打率をマークした東海大相模の打線も興南にひけをとらない。なかでも好調なのが4番・大城卓三(3年)だ。初戦こそ打点がなかったものの、3回戦では1打点、準々決勝、準決勝で4打点ずつをあげ、調子は上向きだ。エースの一二三慎太(3年)も非凡なバッティングセンスをもち、3回戦ではホームランを放つなど、攻撃でもチームを引っ張っている。
 そのほかの選手も上位から下位まで振りが鋭く、長打力がある。点差が離れても、決して無理な大振りはしない。選球眼もよく、甘く入ったボールは見逃さないなど、興南打線と共通しているところは多い。実力的にはほぼ互角といっていいだろ。

 では、注目の投手陣はどうか。島袋は初戦から全5試合に先発し、ほぼ一人で投げ抜いてきた。一方の一二三も全4試合に先発し、こちらもほぼ一人で投げ抜いてきた。試合数では島袋の方が1試合多いが、日程的には一二三の方が厳しいのは明らかだ。準々決勝と準決勝の間に1日休養日があった島袋に対し、一二三は19日の準々決勝から休みなしで明日の決勝を迎える。準々決勝、準決勝では150球以上を投げており、加えて準決勝が2試合目だったことも考慮すれば、島袋以上に一二三の疲労は色濃く残ることが予想される。
興南の先発は島袋でほぼ決定だろう。しかし、東海大相模は例年以上の酷暑の中、3日連続はあまりにも過酷。それだけに2006年の決勝、駒大苫小牧がエース田中将大(現・東北楽天)を控えにまわしたような起用法も十分に考えられる。果たして、明日の先発には誰をたてるのか。東海大相模にとっては勝敗を分ける重要なポイントとなりそうだ。

 両校ともに投手陣の層は厚い。興南は春は島袋一人に頼りがちだったが、夏の沖縄大会では左の砂川大樹(3年)、右の川満昴弥(2年)と高良一輝(1年)の3投手が安定したピッチングを見せた。一方、東海大相模は2番手に右横手の技巧派である江川恭介(3年)、3番手には左の中島大輔(2年)が控えている。
 とはいえ、甲子園での実績はほとんどなく、やはりエースのピッチングが勝敗をのカギを握るといっていいだろう。先述したように、両校の打線は強力だ。甘い球を決して見逃さず、隙あらば一気にたたみかける力は群を抜いている。それだけに打撃戦の可能性は高い。いかにピンチの際に集中力を切らさず、最少失点に抑えられるか。栄冠への道は、両エースの腕にかかっている。