16日、パ・リーグに続いてセ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージが開幕する。ペナントレース終盤で中日に首位の座を明け渡し、激しい2位争いを展開した阪神と巨人。最後の最後にファーストステージホーム開催の権利を勝ち取ったのは阪神だった。しかし、対戦成績は12勝12敗と全くの五分だけに、CSでも激しい攻防戦が繰り広げられそうだ。
 阪神は大事な初戦、“Gキラー”の異名をもつ左腕・能見篤史の先発が濃厚だ。巨人戦は目下7連勝中。今季も3勝0敗と負け知らずだ。今季チーム最多の14勝を挙げた久保康友との2枚看板で一気に勝負を決めたいところだ。しかし、12日のシート打撃で久保が新井貴浩の打球を左足に当て、未だ痛みがとれていない。第2戦での登板が予定されているが、本来の力を発揮することができるかどうかは微妙なところだ。ルーキー秋山拓巳が救世主としての重荷を再び背負わされる可能性も出てきそうだ。

 一方の巨人は内海哲也、東野峻と先発投手は決して本調子ではなく、安定感に欠ける。CS対策として内海はフォーク、東野はチェンジアップを取り入れているが、実戦でどこまで通用するかは未知数だ。後ろのクルーンも制球難は相変わらずで、守護神になりきれていない。しかも阪神は今季78勝のうち41勝は逆転での勝利。巨人戦でも9度も劣勢を引っくり返しており、抑えでの失敗は痛恨となる。それだけに接戦では中継ぎの越智大祐、山口鉄也にロングリリーフ、抑えの役が回ってくる可能性もある。さらに46年ぶりとなるチーム100失策を記録した守備も頭の痛いところ。特に短期決戦では一つのミスが勝敗を分けることも少なくないだけに、バックが投手陣の足を引っ張らないようにしたいものだ。

 不安要素を抱える投手陣だけに、両者ともに打線がカバーしたい。阪神は鳥谷敬、マートン、新井、金本知憲、ブラゼル、城島健司と上位から下位まで長打力のある強打者がそろっている。なかでも2人の助っ人がポイントとなりそうだ。イチローを超え、日本新記録のシーズン214安打をマークしたマートンは、甲子園では打率4割4厘と特に力を発揮している。CSでも得点源としてチームを牽引したい。

 もう一人の助っ人、ブラゼルは自己最多の47本塁打、117打点をマークしながら、シーズン終盤には不調で先発を外れるなど失速した。今季の巨人との対戦成績は打率2割2分8厘、5本塁打。他の5球団との対戦成績と比べても最も悪い数字だ。それでも第1戦で先発が予想される東野とは8打数4安打と相性がいいだけに、初戦で勢いをつけたいところだ。

 今季226本塁打をマークした巨人打線だが、64試合で124本塁打(1試合平均1.94本)の東京ドームとは異なり、甲子園では12試合で8本塁打(同0.67本)だけに、一発攻勢に頼ることはできない。しかも坂本勇人、小笠原道大が調子を落とし、オーダーが確立されていないのもマイナス材料だ。特に坂本は今季、甲子園では打率2割5分5厘、0本塁打、2打点と結果を残していない。そこで、奮起を期待したいのがこの3人。まずは“Gキラー”の能見に相性のいい高橋由伸、亀井義行。高橋は5打数3安打、亀井は2打数2安打をマークしている。そして阪神戦で打率4割2分3厘と結果を残しているルーキー長野久義だ。彼らのうち、短期決戦でつきものの“ラッキーボーイ”的存在が出てくれば、地力で勝る巨人に勢いがつきそうだ。

 また、巨人は指揮官の経験値でも分がある。CSはもちろん、日本シリーズ、そしてWBCと結果を残している原辰徳監督は短期決戦の吸いも甘いも知り尽くしている。CS初采配となる真弓明信監督との経験の差を見せつけたいところだ。  

 CSでは初となる伝統のカードはどんな戦いが繰り広げられるのか。両者ともに投手陣に不安が残るだけに打撃戦となる可能性も高く、終盤での逆転も十分に考えられる。それだけに見応え十分の試合を見せてくれそうだ。