ボスティングシステムでのメジャーリーグ移籍を目指していた東北楽天の岩隈久志投手と、独占交渉権を獲得していたオークランド・アスレチックスとの交渉が不調に終わったことがオークランドの地元紙の報道などで伝えられた。岩隈の代理人サイドも、報道内容を認めており、このまま交渉が決裂すれば、来季も楽天に残留してプレーすることになる。ポスティングシステムが導入されて以降、移籍が成立しなかったのは初めて。
 かねてからメジャーリーグでのプレーを希望していた岩隈に対し、このオフ、楽天はポスティングによる移籍を容認。手続きがスタートした11月1日には球団が早速、NPBのコミッショナー事務局を通じて申請を行っていた。その結果、アスレチックスが1500万ドル(約12億1500万円)で落札したと報じられていた。

 交渉決裂の要因は条件面での折り合いがつかなかったためだ。地元紙によると、アスレチックス側が提示した年俸は300万(約2億4600万円)〜500万ドル(約4億1000万円)で、現在の岩隈の年俸(推定3億円)と大きく変わらなかったという。過去に日本のエース級がメジャーリーグに移籍した際には、黒田博樹(ドジャース)が約13億5000万円、松坂大輔(レッドソックス)が7億円と日本での年俸を大きく上回る評価を1年目から得ており、岩隈サイドの希望額とは大きな隔たりがあった。

 岩隈自身は来季もプレーすれば、メジャーリーグへの移籍も可能なFA資格を獲得する。今回の決裂で最も痛手を負うのは楽天球団だろう。FAでの移籍となれば球団には移籍金などのメリットが全くない。楽天としては、その前に岩隈を放出することで入札金を補強費として活用する考えだった。移籍が成立しなければ当然、入札の12億円は入らないため、最下位からの巻き返しを狙うチーム戦略にも影響を及ぼしそうだ。