2011年はJ1昇格へステップを 〜2010シーズン総括〜
愛媛FCは今シーズンを12勝12分12敗の11位でシーズンを終えた。目標に掲げていたクラブ史上最高の8位以上を達成することはできなかったが、昇格後初めて勝敗を五分で終え、得失点差もプラスマイナスゼロと一定の成果を残した。J参入後、年々下降していた成績を回復させ、いよいよ来シーズンは次なるステップを踏み出す1年になる。クラブにとってターニングポイントとしたい2010シーズンを総括する。(写真:Jリーグアウォーズで今シーズンを振り返るバルバリッチ監督と北島通訳)
「失点数の少なさなど、ポジティブに捉えられる点はたくさんあった」
そうイヴィッツア・バルバリッチ監督が振り返ったように、低迷脱却に大きく貢献したのは堅い守りだ。総失点34はJ1に昇格した柏レイソル(24失点)に次ぎ、リーグ2位タイ。ブロックをしっかりつくって相手の攻撃をくいとめていた望月一仁前監督時代とは異なり、前線の選手から積極的にボールを奪いにいき、そこで空いたスペースを周囲の選手がカバーするスタイルに変更した。各選手の連係とポジション取りがより重要になる戦術だが、シーズン中も繰り返し基本を徹底し、レギュラーはもちろんサブのメンバーにもチームとしての規律を浸透させた。
酷暑の夏こそ9試合連続白星なしと苦しんだものの、トンネルを抜けると今度は7勝3分1敗と過去4シーズンにはなかった好調をキープした。昨季に続きクラブ最多の35試合に出場したMF赤井秀一は「チームがまとまっていい傾向が出始めたので、来季につながると思う」と手ごたえを口にする。
安定した戦いぶりが可能になった背景には、ケガ人が少なくなった点が大きい。ここ数年、故障者が続出し、ベストメンバーで戦えなかった反省を踏まえ、クラブはフラーノ・フルカッチュフィジカルコーチを招聘した。家庭の事情によりシーズン途中でチームを離れることにはなったが、彼が残したフィジカルトレーニングは引き継がれ、常にサブメンバーも含めた18名を試合で準備できた。昨季は交代要員のフィールドプレーヤーが1人しかいないゲームもあったことを考えれば、プロクラブとしてシーズンを乗り切る下地ができたといえるだろう。
また選手補強でも今季からスカウトを設け、愛媛出身の大卒選手を中心に獲得に乗り出す体制が整いつつある。既に来季に向けてFW小笠原侑生(京都産業大)、DF前野貴徳(立命館大)と2名の地元選手の加入が内定。戦力が流動化する期限付き移籍によるチーム強化からの脱却をはかる。また自前での育成も実を結び始めた。2年目を迎えたアマチュアチームの「愛媛FCしまなみ」から昇格したMF渡邊一仁はボランチとして欠かせない戦力になった。
観客動員も四国ダービー(対徳島ヴォルティス)での1万人来場計画(7,613人)や松山広域デー(5月29日、対ヴァンフォーレ甲府、10,630人)の設定で、参入以来最高の1試合平均4,386人を記録。目標に掲げ続けていた5,000人の動員に一歩近づいた。愛媛FCを応援するカエルのキャラクター「一平くん」がネットを中心に人気を集め、11月には川崎フロンターレのホームゲームにも招かれるなど、集客のきっかけづくりは芽生えてきている。
ただ、それでも11位という成績に甘んじたのは昇格当初からの課題である得点力不足だ。シーズン34得点は1試合平均1点にも満たない。個人でも最高はFW福田健二の7ゴールと寂しい結果に終わった。
「来季は攻撃的な中盤の選手がほしい。リアルストライカーがいれば、なおうれしい」
バルバリッチ監督も点取り屋の加入を望んでいる。チャンスはつくるものの最後の部分で精度を欠くシーンが目立つのは、これまでと変わらず宿題が残った。
また夏場に9試合連続白星なしが続いたように、悪い流れに陥るとなかなか抜け出せない点も問題だ。一方で終盤の好調時にはクラブ初の4連勝の機会を2度逃すなど、いい流れを継続させることができない。指揮官は愛媛の全体的な印象を「一生懸命取り組んで、試合でもベストを尽くしているが、勝ちたいという情熱、欲が感じられないことがある」と語っていた。「集中力を欠いたときには、試合に悪影響を及ぼすことが多かった。今までに比べれば集中力は良くなったが、まだ改善の余地がある」。勝てる集団づくりに変身を遂げるには道半ばといったところだろう。
今季は新クラブハウスと隣接する人工芝の練習場が完成し、環境面でもJクラブらしくなってきた。JFL時代に土のグラウンドで練習していたことを思えば雲泥の差だ。ただ、主力選手の年齢が上がり、腰、ひざに不安を抱えていることを考慮すれば、天然芝の専用グラウンドがほしい。またホームのニンジニアスタジアムもJリーグ側から「トイレ、売店の不足」、「バックスタンドからピッチが見づらい」などの不備を指摘され、大東和美チェアマンからも苦言を呈された。スタジアムを管理する愛媛県は2017年の国体に向けて、改修計画を立てているが、一過性のお祭り向けではなく、長く地元に根付くプロクラブにとって必要なスタジアムのあり方を模索すべきだろう。
クラブでは参入当初から「3年をメドにJ1昇格を狙える体制づくりを目指す」としてきたが、5年目を終えた今も時計の針はほとんど動いていない。今回、J1復帰を果たした甲府のホームタウンの人口は19万人。ニンジニアスタジアムがある松山市の半分以下だ。本拠地の小瀬スポーツ陸上競技場も甲府駅から車で20〜30分かかり、アクセス良好とはいえない。それでも今季、J2トップの12,406人の観客を集めた。やり方次第で愛媛も甲府のようなクラブになれるはずだ。
今年度、クラブの経営はホームゲームの減少で収入が落ち込み、前練習場の減価償却費を計上したことで初めて1300万円の赤字に転落する見通し。それでも監督、選手、チームスタッフを含めた人件費は2億1000万円程度で、J2平均(2009年度が約4億2000万円)にも遠く及ばない。来季はガイナーレ鳥取が参入することで、Jリーグからの分配金は減少が予想される。2010年の成果を踏まえて、新たな年をJ1へのステップにつなげるためには、チームはもちろんフロントの強化も急務だ。
(石田洋之)