NPBもアイランドリーグも各球団が2月1日に新チームを始動してから、ちょうど半月が経過した。今シーズン、リーグからは過去最多タイの6名が新たにNPBの門をくぐり、計19選手が1軍で活躍するべくキャンプを過ごしている。彼らの動向もリーグの行方ともに、ファンは気になるところだ。NPB入りというひとつの夢を叶えた選手たちは、新たなシーズンにどのように臨もうとしているのか? その今を追いかけた。
 無安打からの再出発――角中勝也

「1軍の結果だけ見れば、最悪の1年ですよね」
 13試合、18打数ノーヒット……。2010年の角中勝也は1軍で快音を響かせることができなかった。クライマックスシリーズ進出争いが白熱する9月に昇格。NPB4年目で出場機会は最も多かった。だが、結果を残せず、リーグ3位から日本一への“下克上”を果たしたチームの波に乗り遅れた。

 昨季はファームでも苦しい1年を過ごした。ルーキーイヤーにはイースタンリーグ2位の打率(.335)をマークした男が、前半戦は2割5分前後のアベレージにあえいだ。
「とにかくどうしたらいいかわからなかったんです」
 以前、角中は「タイミングさえあれば、どんなボールでも対応できる」と語ったことがある。それほど自信のあった打撃で悩みに悩んだ。

 トンネルを抜けたのは打撃コーチの一言だった。
「セカンドを見て打ってみろ!」
 言葉の主は昨季より2軍コーチに就任した長嶋清幸だ。一見、珍指令ともとれるアドバイスだが、これが角中にはしっくりきた。
「結論から言うと打つ時に体が入りすぎて差し込まれていたんですね。無意識のうちに遠くへ飛ばしたいという欲が出ていた。だから、ピッチャーではなくセカンドのほうを向いて、ちょっと体を開き気味にするような感覚で打ってみました。するとタイミングが合うようになったんです」

 バットをスムーズに出そうと苦心するうちに、これまで真っすぐ立てていたヘッドも自然とフラットなかたちになった。新たにつかんだフォームで角中はヒットを量産。それがシーズン終盤の1軍登録につながった。

 だが、それでも1軍でヒットは打てなかった。金子千尋(オリックス)、涌井秀章(埼玉西武)、岩隈久志(東北楽天)……。スタメン起用された試合に各球団のエース級とぶつかったという不運もある。また独特の打撃理論を持つ金森栄治野手チーフ兼打撃コーチの指導を理解し、実践するのにも時間が必要だった。

 昨季のロッテは清田育宏、岡田幸文と外野手がブレイクし、クライマックスシリーズ、日本シリーズで活躍した。さらに今季は大学生ナンバーワン野手、伊志嶺翔大(東海大)が入団した。外野のポジション争いは激しさを増す一方だ。20歳でアイランドリーグからNPBに飛び込んだ角中も、もう5年目を迎える。うかうかしてはいられない。

「僕は特別、足が速いわけではない。守備がうまいわけではない。全体のレベルアップをはかることはもちろんですが、やはり打って結果を残すことが大事だと思っています」
 今年こそ1軍定着。そのためにも、まずは昨年、灯せなかったHのランプを1回でも多くスコアボードに光らせる。