当HP編集長の二宮清純がインタビュアーを務めるBS朝日の番組『勝負の瞬間(とき)』が3月26日(土)、20:00より放送されます。この番組では毎回、各競技から一流たちをお招きし、トップを極めた技術と、その思考法に迫ります。これまでのスポーツ番組とは一味違ったインタビュードキュメントです。今回は昨季限りで埼玉西武を戦力外になりながらも現役続行を表明した47歳左腕・工藤公康投手をお招きします。
(写真:収録予定を1時間以上も超えたロングインタビュー、お見逃しなく!)
 当サイトでは番組に先駆けて、工藤投手とのインタビューの一部を紹介します。

二宮: 今年からプロ野球は低反発のボールに変わるんですよね。表皮がすべると言われているんですが、このボールを持った感触はいかがですか?
工藤: 縫い目の高さはそんなに変わらないと思うんですが、多少縫い目が広く感じるのは確かですね。縫い目が広くなってくると、空気の抵抗で変化がしやすくなるところがある。

二宮: 現場で話を聞くと、スライダーとかシュートとか、横にスライドする系統のボールは曲がり幅が大きいと。逆に縦に落ちるフォークなどはあまり変わらないと聞きました。昨シーズンまでと比べると野球が少し変わるんじゃないでしょうか。
工藤: そうですね。うまく使えれば武器になると思んですけど、異様に曲がりすぎてしまうとバッターから見逃されてしまう……。そうなるとピッチャーが苦しくなる。まぁ、そのあたりも慣れれば問題ないんじゃないかと思いますけど。

二宮: ぜひ工藤さんに、このボールを持ってマウンドに立ってもらいたいですね。
工藤: ボールも飛ばなくなりましたからね。投げたいです(笑)。

二宮: 自身の中では故障がなかったら、まだまだ普通に投げられるという自信があると?
工藤: 去年も(スピードが)143、4キロは出ていたので、そう考えれば、40歳になったから限界ではない。衰えないようにしっかりトレーニングさえ続ければ長く続けられるという証明は、ある意味できたと思うんです。
 だから僕はほかの選手によく言っているんですよ。「1年でも1日でも長く野球をやりなさい」と。たとえ結果的に野球をやめてしまうことになったとしても、そこまでに自分が少しでも頑張ろうとしていれば、次の仕事に関しても、しっかりと情熱をもってできるんじゃないかと。僕がそう言っているのに、クビになったから「はい、辞めました」とは言えない。

二宮: もう、これでお腹いっぱいとは思えないほど、野球は面白いスポーツだと?
工藤: だと思います。年齢を追えば追うほど面白みが自分の中で増えていくのがわかるんですね。若い時とは違って速いボールは投げれないので、多少力は落ちてくる。でも、その中でもバッターの目線を変えたり、緩急を使った駆け引きが身についてくるんです。そこまでくると、野球に対する探究心とか研究心が増してくるから、どんどん楽しくなる。だけど、そこまで達しないうちに若くして辞めてしまうと、野球に対して苦しいイメージしか残らない。「野球やっていて苦しかったよ。ああいう練習させられて、こういう練習させられて、結局ケガして辞めちゃった」とか。そこでもうひと踏ん張りして、壁を乗り越えられれば、すごく変わるんですよね。
>>この続きは番組をお楽しみ下さい。

 プロ30年目となるはずだった今シーズン、工藤投手は所属球団がないまま、ジャージ姿で2月1日のキャンプイン当日を迎えました。「2月1日になると勝手に気持ちが高ぶってくる」という長年のリズムを変えるのは時間がかかったと明かします。そして、5月に48歳となるベテランはケガのため、今季を浪人生活にあてることを決意しました。右ふくらはぎ、左ヒジ、左肩と故障がありながら、それでも、なお現役にこだわる理由はどこにあるのか。インタビューではまず、この部分を本人からたっぷりと聞き出します。

 リーグ優勝18回、日本一11回……。工藤投手の歩んできた道のりは、そのまま現代プロ野球の歴史といっても過言ではありません。東尾修、門田博光といったそうそうたる先輩たちを相手にした新人時代のエピソードから、年齢を重ね、城島健司ら後輩を育成する立場になった時の話まで、貴重な証言が満載です。

 工藤投手がここまで長く現役を続けてこられた理由――それはさまざまなアドバイスやヒントを元に、自身の肉体やピッチングについて、しっかりとした考えを構築してきたから他なりません。番組では、そんな理論の一端にも迫ります。球界のエースと呼ばれるダルビッシュ有投手、そして注目のゴールデンルーキー斎藤佑樹投手に対する分析は興味をそそられることでしょう。
(写真:コントロールがよくなった練習法も明らかに)

「後悔がないっていう人を理解できない。僕は後悔だらけなんです」
 積み重ねた勝ち星は歴代13位の224個。奪った三振は歴代7位の2859個。プロ野球選手としては数え切れない栄光を手にしながら、工藤投手はインタビュー中、そんな発言をしています。過去の後悔を未来へ進むエネルギーに変え、47歳は果たしてこの先、どこまで投げ続けるのか。まさに「永遠の野球小僧」という表現がピッタリな、その姿から誰もが学ぶところがあるはずです。

 この『勝負の瞬間』は月1回ペースでお届けしています。今後も一流のアスリートたちが続々と登場予定です。どうぞお楽しみに!

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