横綱・朝青龍、2場所出場停止

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 日本相撲協会は1日、緊急理事会を開催し、夏巡業をケガで休場しながら母国でサッカーに興じていた横綱・朝青龍に対し、4ヵ月間の30%減給と秋場所(9月)、九州場所(11月)の出場停止、九州場所千秋楽までの謹慎処分を下した。また師匠の高砂親方(元大関・朝潮)には、同じく4ヵ月間の30%減給処分を決定した。横綱が出場停止の処分を受けるのは史上初めて。
(写真:処分を発表する伊勢ノ海(右)、武蔵川両理事)
 21回の優勝を誇る横綱の2場所出場停止――。トラブルを繰り返した角界の第一人者に重い処分が下された。九州場所の千秋楽まで本場所の土俵はおろか、原則として部屋、自宅、病院以外の場所に出入りすることすら禁じられたのだ。

「巡業を休むという診断書を出しながら、軽率な行動をとった。模範となるべき横綱がそういう行動をとるということは処分に値する」
 発表を行った伊勢ノ海親方(元関脇・藤ノ川)は処分の理由を説明した。

 力士が出場停止処分を受けるのは、4月に自動車で人身事故を起こし、1場所の出場停止処分を受けた幕内・旭天鵬以来のこと。昨年10月、「解雇」「番付降下」に次ぐ罰則規定として「出場停止」が加えられたが、1年もたたないうちに2名が処分される事態となった。

 予想以上に重い処分が下ったのは、朝青龍の過去のトラブルメーカーぶりが影響していることは否定できない。これまでも稽古の無断欠席や土俵内外でのふるまいについて、横綱審議委員会や理事長からたびたび注意を受けてきた。
「心情的にはそういうのも加わっているのかもしれない」
 処分はあくまでも今回の一件に対してとしながら、その点は伊勢ノ海理事も認めざるを得なかった。

 また、横綱がサッカーをしていたことから、全治6ヵ月とのケガの診断そのものにも疑いがもたれていたが、伊勢ノ海親方は「診断書についてはまさに正当なものであると思います」と“仮病説”は否定した。

「横綱・朝青龍関の今回の行為は軽率で遺憾であります。このため委員長の立場から日本相撲協会に対して適正な処分を要望しました」(横審・海老沢勝二委員長)
 今回、横審やファンからは朝青龍に対して多くの批判の声が寄せられた。処分を下したことで、協会としては襟を正したつもりかもしれない。しかし、前代未聞の横綱の処分という事態にもかかわらず、発表の場に北の湖理事長は現れなかった。相撲協会がこの一件に対して、どれだけ危機感を持っているのか首をかしげたくなる対応だった。

「(今回の処分については)師匠がしっかりと本人に説明をしてくれると思います」(伊勢ノ海親方)
 協会側は直接、横綱を指導する考えも現時点ではないようだ。もちろん朝青龍の行為自体は個人の責任であり、擁護できない。ただ、高砂親方に対しては「監督責任」を理由に、朝青龍と同じ減給処分が下された。ならば協会トップの「監督責任」はなかったと言えるのか。“土俵の充実”を唱える理事長が“土俵の主役”を2場所排除するに至った事情を自ら説明すること。そして、再発防止策を親方任せにせず、協会側が打ち出すこと。これらを行うことが、トップとしての「責務」である。
(写真:処分を協議中、部屋の外で待つ高砂親方)

(石田洋之)
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