◇5月8日 平塚競技場 7,159人
 湘南ベルマーレ 1−1 愛媛FC
[湘南] 高山薫(59分)
[愛媛] 齋藤学(87分)
 価値ある勝ち点1だった。
 愛媛は前節のジェフユナイテッド千葉戦でボランチの越智亮介が右足首を負傷、左サイドバックの前野貴徳が退場で今節は出場停止となり、メンバーの入れ替えを余儀なくされた。さらには前日の練習でセンターバックの池田昇平がケガをし、代わりに今季、愛媛に加入した吉弘充志が入った。

 ベストメンバーとは決して言えない状況で、光ったのはU-22の若い選手たちだ。ロンドン五輪出場を目指すU-22日本代表・関塚隆監督の視察に触発されたのか、先発の22歳のMF杉浦恭平、FW内田健太とFW齋藤学の21歳ツートップがピッチ上を躍動した。

 杉浦は立ち上がりから左サイドからワンタッチ、ツータッチでパスを出し、攻撃のリズムをつくった。前半28分にはスペースを見つけて、中央やや右のPA外に顔を出し、シュート。これはわずかに枠の外に外れたが、今年のテーマに掲げていた「前を向いてプレーする」ことが実践できていた。

 今季初出場となる内田も前半33分、MF渡邊一仁の縦パスに素早く反応。裏へ飛び出し、シュートを放つ。これは枠を捉え切れなかったが、後半にはゴールまで30mの距離からのFKで惜しいキックを見せるなど、持ち味は出せていた。

 そして、最後に値千金の仕事をしたのが齋藤だ。「調子は良くなかった」と本人は語ったものの、1点ビハインドの後半30分には、左サイドをするすると抜け出し、チャンスを演出。齋藤からのボールを受けたMF赤井秀一のシュートは相手キーパーのセーブに阻まれたが、そのこぼれ球を拾って好機が続き、これまでの愛媛にはない分厚い攻撃が展開された。

 さらに86分、渡邊からのロングフィードを途中からピッチに入ったFW福田健二が胸で落とすと、そのボールを拾ったのは齋藤だった。「90分の中で一発狙おうと思っていた」という背番号27は、スピードで相手の最終ラインを翻弄。ゴール前の中央左寄りから、右サイドにドリブルで移動して、右足を振り抜いた。鮮やかな同点ゴール。3連敗の危機をまさに一発で救った。

「もっと点が獲れた。悔しい思いのほうが強い」
 敵将の湘南・反町康治監督からも“愛媛のメッシ”と称えられたヒーローだが、試合後は反省の弁が続いた。杉浦や内田も「もっとできるはず」「今日みたいなプレーではダメ」と現状には満足していない。口には出さずとも、五輪代表入りは誰もが目標にしている。それだけに彼らは自らに要求するレベルも高い。こういった若手がいることはクラブにとって大きなプラスだ。

 ゴールデンウィークの3連戦は2敗1分と勝てなかった。しかし、千葉、湘南とJ1を経験したクラブ相手にアウェーで最後までどうなるかわからない試合ができた。「1点獲られても粘れるようになった。頑張れば追いつけるし、逆転できる」と杉浦が語ったように、選手たちは手応えをつかみつつある。

 次節は徳島ヴォルティスとの四国ダービー。ダービー初経験となる齋藤も「激アツな試合になると聞いている」と、その重みを理解している。若い力に引っ張られ、オレンジのユニホームが縦横無尽にピッチを駆け回る。そんな試合をホームのサポーターは待っている。

<両チームメンバー>
愛媛FC
GK  1 川北裕介
DF 13 関根永悟 
    2 吉弘充志
   28 高杉亮太
   14 三上卓哉
MF  6 田森大己
    4 渡邊一仁 
   16 赤井秀一 → 17 大山俊輔(90+2分) 
   10 杉浦恭平 → FW 24 福田健二(78分)  
FW  8 内田健太 → 9 ジョジマール(58分)
   27 齋藤学

湘南ベルマーレ
GK 21 西部洋平
DF  5 臼井幸平
    3 大井健太郎
   26 遠藤航
    7 石神直哉
MF 10 アジエル → 14 菊池大介(72分)
   15 ハン・クギョン
    6 永木亮太 
    8 坂本紘司
FW 11 巻佑樹 → 30 ルーカス(88分)
   17 佐々木竜太 → 23 高山薫(HT)