日本相撲協会は30日、番付編成会議と理事会を開き、夏場所で2場所連続優勝を果たした白鵬の横綱昇進を正式に決定した。これを受けて協会の使者が宮城野部屋を訪れ、昇進を伝達。白鵬は「謹んでお受けいたします。横綱の地位を汚さぬよう、精神一到を貫き、相撲道に精進致します」と口上を述べた。
(写真:部屋の力士たちに担がれ、昇進の喜びを表す白鵬)
 大相撲の横綱誕生は、03年初場所後に昇進した朝青龍以来、69人目。外国人横綱は曙、武蔵丸、朝青龍に続き4人目となる。北の湖、大鵬に次いで3番目に若い22歳2カ月の新横綱の登場で、7月の名古屋場所は22場所ぶりに東西の横綱が揃う。

「いい眼をしていたね。今場所はこういう眼をしていた日が多かった。今後もこういう眼で相撲をとってほしい」
 育ての親である熊ヶ谷親方はそう愛弟子の晴れ姿を見つめた。堂々と、かつ落ち着いて前を見据える眼差し。昇進の朗報を受けた白鵬には既に“横綱”としての風格が漂っていた。

「精神一到」
 口上の四文字熟語に横綱としての決意をこめた。「自分の進む道を集中して進んでいけば到達するという意味」と自ら説明。「相撲に集中したからこそ横綱になれたと思う、今後も集中して勉強して夢を叶えようと(この言葉を)選びました」。複数挙がった候補の中から前日に親方、両親と相談して最終決定した。
(写真:口上を述べる白鵬(中央))

 入門時の体格は175センチ、68キロ。どこも受け入れ先がなく、モンゴルに帰国する寸前でようやく角界の門をくぐった。白鵬を紹介した旭鷲山(昨年九州場所限りで引退)の第一印象は「色が白くて小さくて強くなるとは思わなかった」。序の口では負け越しも経験。「シュウ(旭鷲山の愛称)、ケガしたら責任とれるのか? 危ないから床山にしてくれ」と言われるほどだったという。

 それから6年。大関昇進時に口にしたとおり、白鵬は「全身全霊」相撲道に邁進した。そして「精神一到」の気持ちでついに最高位にのぼりつめた。192センチ、154キロの堂々とした体つき、22歳の若さ……早くも周囲からは大横綱への期待が寄せられる。

「大鵬さん、北の湖親方、九重親方(横綱・千代の富士)、貴乃花親方、朝青龍関に1つでも近づけるように頑張りたい」
 白鵬も優勝20回以上を誇る大横綱の名をあげ、目標に掲げた。「今まで以上に精神的に強くなって、大人になる必要がある。もっと稽古もして体を鍛えないと」。熊ヶ谷親方は新横綱に一層の精進を促した。

 白鵬は口上の点数を聞かれると「満点じゃないですか?」と笑顔で答えた。今後は土俵で常に「満点」の相撲を求められる立場になる。モンゴル相撲の大横綱を父にもつサラブレッドは、海を越え親子2代で最強の地位をほしいままにできるのか。先輩横綱の朝青龍との「青白時代」で相撲界は新たな歴史に突入した。

 なお、白鵬の土俵入りは一門の系統を受け継ぎ、両腕を広げてせり上がる「不知火型」に決定。6月1日の明治神宮奉納土俵入りで初披露される。横綱として初の場所となる名古屋場所は7月8日、初日を迎える。

白鵬、喜びの声
 やっと横綱になった実感がわいてきた。口上は1回読んだら覚えたので、そんなに苦労しなかった。できばえは満点じゃないですか。(言葉は)いくつか候補があったが、親方や両親と相談して昨日ひとつに絞った。
 大鵬さん、北の湖親方、九重親方(横綱・千代の富士)、貴乃花親方、朝青龍関に1つでも近づけるように頑張りたい。心技体をそろえて常に自分の相撲をやっていくしかない。