22日、スコットランド・プレミアリーグの年間表彰式が現地で行われ、同リーグのセルティックに所属するMF中村俊輔が今季のMVP(最優秀選手)に選出された。欧州主要リーグで日本人がMVPを選ばれたのは初。セルティックは同日のキルマーノック戦で中村の後半ロスタイムの勝ち越しFK弾を含む1アシスト1ゴールの活躍で勝ち、2季連続44度目の優勝に輝いていた。

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 ここぞという場面で魔法の左足は輝きを放った。キルマーノック戦では前半23分、左CKをニアサイドに走りこんだFWフェネホール・オフ・ヘッセルリンクの頭に合わせて先制点を演出。1−1の同点で迎えた後半ロスタイムでは、やや右からのFKを壁の左側を巻く形でゴール左下隅に決めた。勝たなくては優勝が持ち越しとなる重要なゲームで勝負強さを発揮した。

 今季のリーグ戦では、これまでの34試合全てに先発して9ゴール。大車輪の活躍でチームを牽引してきた。世界最高峰の欧州チャンピオンズリーグの舞台でも、グループリーグ第5節のマンチェスター・ユナイテッド戦(06年11月21日)で直接FKで決勝ゴールを挙げて、チームの史上初の決勝トーナメント進出に貢献。国内外で決定的な仕事をこなしたことが評価され、今回のMVP受賞につながった。

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 おそらくあの一蹴りで、中村俊輔(セルティック)は世界のスターの仲間入りを果たしたのではないか。

 さる11月21日にグラスゴーで行われた欧州チャンピオンズリーグ・グループリーグのマンチェスター・ユナイテッド戦の後半36分、俊輔は約30メートルのフリーキックを決め、イングランドの強豪を1対0で下した。

 ゴールほぼ正面ながら、直接放り込むのに30メートルという距離は長すぎる。しかもゴール前で待ち受けるのは197センチの長身でオランダ代表の名GKエドウィン・ファンデルサール。フリーキックの名手デビッド・ベッカム(レアル・マドリッド)でも10回蹴って1回入れればいい方だろう。

 呼吸を整え、俊輔の左足から放たれたボールは5枚の壁を越え、速度を落とすことなくスライダー気味に沈んだ。その瞬間、ボールは必死に伸ばしたファンデルサールの左手をあざ笑うかのようにゴール右上隅へ突き刺さった。

 結局、この1点が決勝点となり、セルティックはクラブ史上初めて決勝トーナメントに駒を進めた。中村俊輔の名はセルティック・サポーターの間で永遠に語り継がれることになるだろう。

 私も昨年暮れ、グラスゴーに飛んだが、緯度の高いこの町は午後にはもう日が落ちている。人々の最大の楽しみは土曜日の夜に行われるフットボール・マッチ。本拠地のグラスゴー・パークは6万人近くのサポーターに埋め尽くされる。先のマンチェスター・ユナイテッド戦の熱狂は想像して余りある。なにしろ自国を征服したイングランドのチームを撃破したのだから――。

(この原稿は『Voice』2007年2月号に掲載されたものです)

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