現地時間3日、ラグビーW杯イングランド大会12日目が行われ、予選プールBの日本代表(世界ランキング12位)は、サモア代表(同11位)と対戦した。ともに1勝1敗で迎えた一戦は、日本がFB五郎丸歩(ヤマハ発動機)のキックで先制。2トライを挙げるなど20-0で試合を折り返した。後半は日本が2本のPG加え、さらにリードを広げた。日本はサモアに1トライを返されたものの、26-5で勝利。日本の通算成績は2勝1敗で勝ち点8となり暫定2位に浮上した。予選プール最終節は10月11日に米国代表(世界ランキング16位)と対戦する。

“勇敢な桜の戦士たち”が、またひとつ歴史を塗り替えた。日本のW杯1大会で2勝目は初。サモアに快勝し、目標に掲げるベスト8への可能性を残した。

「この4年間でもっとも重要な試合となる」と、日本のエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)が位置付けた一戦。日本とサモアはともに勝ち点4で、1位・スコットランドの10、2位・南アフリカの7を追うには、もう負けられない。決勝トーナメント進出をかけたサバイバルマッチとなった。

 序盤から日本はミスが少なく、ボールをキープした。守っても低いタックルで突破力のあるサモアの攻撃を凌いだ。この4年間で鍛えたスクラムやモールでも優位に試合を進める。一方のサモアは、日本のプレッシャーに焦りを感じたのが反則が目立つ。

 8分に日本が五郎丸(ヤマハ発動機)のペナルティーゴール(PG)で先制に成功した。その後も日本は敵陣でプレーが続く。ボールを保持し、じわりじわりとインゴールへと近付くと、サモアが危険なプレーを連発。16分と19分にシンビン(10分間の一時退場)を受け、2人がピッチから去った。

 日本は数的優位の状況でさらに攻勢を仕掛けた。24分、ゴールまで目前と迫ったところで、依然としてサモアが反則を連発。ここでレフェリーは認定トライの判定を下す。5点が追加されると、正面で得た五郎丸がコンバージョンも決め、10-0とリードを奪った。

 日本は34分にも五郎丸のPGで3点を加えると、前半終了間際には右サイド深くまで攻め込んだ。SH田中史朗(パナソニック)、PR畠山健介(サントリー)とつなぐと、WTB山田章仁(パナソニック)がボールを掴んだ。山田は相手からタックルを受けながら、回転してかわすと、インゴールへと飛び込んだ。角度のない位置からのコンバージョンも五郎丸が決め、20-0と差を広げる。今大会初めて前半をリードして終えた。

 ほぼ完璧だった前半とは違い日本も後半は苦しんだ。8分に五郎丸のPGで、23-0とさらにリードを広げた。しかしハンドリングエラーも目立つようになり、徐々にサモアの反撃を受ける。司令塔のSOトゥシ・ピシ(サントリー)、7人制代表でもあるFBナナイ・ウィリアムズ(リコー)らバックス陣のランを許し、何度もラインを破られる。それでも日本も山田、五郎丸が身を挺して、インゴールへはボールを運ばせない。

 日本は19分にもPGを加え、26点差をつける。勝利の可能性をググッと手繰り寄せた。24分に左サイドをサモアに突破され、1トライを許したが反撃もここまでだった。26-5で勝ち点4を積み上げた。W杯1大会2勝は過去7大会に出場した日本にとって初めてだ。キャプテンのFLリーチ・マイケル(東芝)も「練習通りできた」と準備の賜物だった。サモアに快勝し、決勝トーナメント進出へと望みをつないだ。

 ただ欲を言えば、あと2トライを加えてボーナスポイント(計4トライで1点)を獲りたかった。日本の勝ち点8は暫定2位だが、同1位のスコットランドに2点のビハインドがある。同3位の南アフリカ代表とは1点差しかなく、自力だけではベスト8入りは難しい状況だ。人事を尽くして天命を待つしかない。予選プールB最終節は日本対米国戦。8日後の一戦に全てをかける。

(文/杉浦泰介)